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ヒーローはキスの夢を見るか? ~コンテンツマーケティングにおけるストーリーのからくり~

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こんにちは。Production & Operating 部門長の成田です。

恋をしてますか?

いくつになっても、恋のなれそめはドキドキしますよね。
あなたはどんなときに恋の成就を実感しますか?
告白して受け入れられたときでしょうか?
それとも手をつないだときでしょうか?
あるいはエッチをしたときでしょうか?
わたしの場合は、やっぱりキス♥かな……なんて戯言はさておき。

今回はキスを例にヒーローが恋を成就させるまでの「旅の行程」についてお話をしたいと思います。

 

ヒーローホイールの12段階

前回の「ストーリーはだれのもの?」ではコンテンツマーケティングにおけるストーリーの重要性と三幕構成についてお話しましたが、今回はその三幕構成をさらに細分化した「ヒーローの旅」についてご紹介したいと思います。

「ヒーローの旅」とは、ジョセフ・キャンベルの著書『千の顔をもつ英雄』(人文書院)をベースに、脚本家のクリストファー・ボグラーが自著『神話の法則ーーライターズ・ジャーニー』(ストーリーアーツ&サイエンス研究所)でストーリー構成を12段階に簡素化してまとめたものです。「ヒーローの旅」はもともと作家や脚本家のためにまとめられたものですが、コンテンツマーケティングにおいてもオーディエンスとコミュニケーションを図るための重要な手法として採り入れられています。

下図はその「ヒーローの旅」【※】を円グラフにまとめた「ヒーローホイール」と呼ばれるもので、頂点の①から時計回りに⑫まで進む「旅の行程」を表しています。

【※】弊社CEO小林弘人監修の『オウンドメディアで成功するための戦略的コンテンツマーケティング(翔泳社)』より抜粋。

 

 

「ヒーローホイール」の内円は、ヒーロー(主人公)が第一幕(日常世界)→第二幕(非日常世界)→第三幕(日常世界)に至る①~⑫の各ステージを表しています。外円は各ステージおけるヒーロー(主人公)の態度変容を表しています。

第一幕(日常世界)
① 日常世界(問題意識の欠如)
② 行動喚起(意識の芽生え)
③ 喚起に対する拒絶(変化に躊躇する気持ち)
④ メンターとの出逢い(躊躇する気持ちの克服)

第二幕(非日常世界)
⑤ 未知の領域へ踏み込む(変化を誓う)
⑥ 試練・仲間・敵(第一の変化を経験)
⑦ 未知の世界へ接近(大きな変化に備える)
⑧ 最大の試練(大きな変化への試み)
⑨ 報酬(試みの結果)

第三幕(日常世界)
⑩ 帰路(変化に再び挑む)
⑪ 復活(大きな変化への最後の試み)
⑫ 帰還(問題の克服)

試しにあなたのお気に入りの映画や小説、マンガなどをあてはめてみてください。多少の順序の入れ替えや重複はあるかもしれませんが、どんなストーリーもほぼこの12段階で構成されていることがわかることでしょう。

 

ヒーローを旅に誘うメンターの役割

では、今度はあなたの商品やサービスを「ヒーローの旅」にあてはめ、オーディエンスのストーリーと同期させてみましょう。

たとえば、あなたはバラの香りのする口臭消しサプリ「ROSE♥KISS」を売りたいと考えているとします。ペルソナは17歳の多感な男子から、これまでまともな恋愛をしてこなかった35歳までの独身男性としましょう。ここでオーディエンス(ヒーロー)のストーリーを考えてみます。外円の赤字がオーディエンス(ヒーロー)の態度変容となります。

 

 

第一幕(日常世界)
① 日常世界(問題意識の欠如)
口臭は仕方がない、自覚がない
② 行動喚起(意識の芽生え)
恋人ができない、モテない
③ 喚起に対する拒絶(変化に躊躇する気持ち)
そんなの関係ない!口臭のせいじゃない!
④ メンターとの出逢い(躊躇する気持ちの克服)
百年の恋も冷めるよ、口臭が好きな人はいないよ

第二幕(非日常世界)
⑤ 未知の領域へ踏み込む(変化を誓う)
口臭を消そう!バラの香りの口臭消しサプリ
⑥ 試練・仲間・敵(第一の変化を経験)
友だちが増えた?距離感が近くなった?
⑦ 未知の世界へ接近(大きな変化に備える)
自信がわく、好きな女の子にアプローチ
⑧ 最大の試練(大きな変化への試み)
ファーストキスへの挑戦
⑨ 報酬(試みの結果)
バラの香りに彼女もうっとり♥

第三幕(日常世界)
⑩ 帰路(変化に再び挑む)
自信も生まれるが移り気が災いして彼女とこじれる
⑪ 復活(大きな変化への最後の試み
本当に好きなのはキミだけだよ!と再認識
⑫ 帰還(問題の克服)
ハッピーエンド

ここで重要なのが、オーディエンスを旅に誘う④メンター(あなた)の役割です。あなたはオーディエンスに旅立ってもらい、あなたの商品「ROSE♥KISS」を購入したくなるよう、態度変容を促す必要があります。ただし、あくまでもオーディエンスが自分ゴト化できるコンテンツを発信しなければなりません。あなたは、「ROSE♥KISS」を使ってオーディエンスを旅に誘いますが、ここでことさら商品訴求をする必要はありません。この時点で「ROSE♥KISS」がどんなバラのエッセンスを使っているか、どこで生産されているか、どんな効用があるかなどは二次的情報で、オーディエンスの感心事はあくまでも「好きな女の子とのファーストキス」なのです。

口臭を気にしている人には「口臭で損をしていますよ」「口臭は女の子に嫌われますよ」とメッセージを送り、口臭を気にしていない人には「キスをするとき口臭を気にしたことがある?」「自分は口臭と関係ないと思ってませんか?」「キスほどステキなものはない」と意識を芽生えさせ、キスにおける口臭の悪影響、不利益、さらには恋愛におけるキスの魅力、キスの重要性、キスの心理的効果を説くことで態度変容を促します。

 

 

たとえばキスが恋愛だけでなく、人生においてもいかに役立ち、多大な幸せをもたらすものであることを、「キスの効用」と題してさまざまなデータをストーリーにして伝えていくのもいいかもしれません。

「キスの効用」(例)
●キスをするとストレスホルモンが減少する
●男性はなぜディープキスが好きで、女性はなぜリップキスが好きなのか?
●キスをすると男性は愛のホルモンともいわれるオキシトシンが急増する
●キスシーンの映像を見ると生理が安定する
●キスで肌がキレイになる
●キスは寿命を延ばす
●女性の一番好きな花はバラ

このようにストーリー体験を通じて恋愛とキスに興味・関心を抱かせることで、「ROSE♥KISS」という商品(モノ、なくても困らないもの、他人ゴト)を、「この商品があったらステキな世界が広がる」と夢を与え、自分ゴト化してもらいます。オーディエンスに新たな価値体験を与え、オーディエンスの人生を豊かにすること――それが「ヒーローの旅」なのです。

 

 

キスにおいて「口臭」と「バラの香り」の違いが、男女の恋にどれほどの影響を与えるか? あなたは商品「ROSE♥KISS」を通じてストーリーを作り、オーディエンスはそのストーリーに夢を見出し、旅の終わりにハッピーエンドを迎えるのです。

【今回のおさらい】
売るのは「商品」ではなく、オーディエンスが夢を見られる「価値体験」。

成田幸久

フェロー。AMEX会員誌、『ワイアード』日本版、JAL機内誌などで副編集長を務めた後、2004年インフォバーン入社。ニフティのブログサービス『ココログ』の立ち上げ時に、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほかにPC・モバイルと連動した通販誌『カタロガー』編集長、セブン-イレブンとヤフーの共同事業メディア『4B』の編集長を務めるなど、数多くのWebメディアの企画・運用を手がける。