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「コンテンツはたくさんつくったほうがいい」の落とし穴

Young happy couple romantic date at restaurant

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photo:Thinkstock / Getty Images

 

こんにちは。コンテンツ開発ユニットの成田です。

スティーブ・ジョブズが残した名言のひとつにこんな言葉があります。

美しい女性を口説こうと思ったとき、
ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、
キミは15本贈るだろうか?
そう思った時点でキミの負けだ。
ライバルが何をするかは関係ない。
その女性が本当に何を望んでいるのかを、
見極めることが重要なのだ。

 

コンテンツマーケティングに関する記事を漁っていると、「コンテンツはできるだけ多くつくったほうがいい」という記事をよく見かけます。これは多くの検索キーワードを盛り込むことでSEOに効果的という狙いがあり、そういう意味では間違ってはいないのですが、そこに質が伴わないと、どんなに数を増やしてもまったく無意味になるということを見逃しがちです。つまり誰も読まないような埋め合わせの記事を100本作るより、多くの人が求めている1本の記事にこだわるべきなのです。

「数打ちゃ当たるだろ」という考えで数に頼った勝負をしてしまうと、ジョブズの言うとおり、その時点で負けです。あなたが届けたいコンテンツの類似品が世の中にどんなに溢れようと、関係ないのです。あなたが振り向いてほしいオーディエンスに向けて、彼らが求めるコンテンツを適切に届ければいいのです。

 

パレートの法則に甘んじてはならない

世の中はすべての事象が8:2で構成されているというパレートの法則というものがあります。「売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している」「全所得の8割は、人口の2割の富裕層が持つ」といった例を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ウィキペディアによると「仕事や経済でよく使われていて、経済学者のパレートが発見した経験に基づいた法則」だそうです。元「WIRED」編集長のクリス・アンダーソンが提唱するロングテールにも同じことがいえますし、オウンドメディアにおけるコンテンツについても例外ではなさそうです。

たとえばオウンドメディアでいえば「アクセス数の8割は、全コンテンツの2割が担っている」となります。問題は、このパレートの法則に甘んじてはいけないということです。なぜならこの法則に従えば、全コンテンツの8割はムダなコンテンツになってしまうからです。コンテンツをつくるとき、数にこだわるあまりに全体の質が落ちて、ムダなコンテンツの8割の比率を増やしてしまうと、アクセス数の8割を占めている良質なコンテンツの2割の比率がどんどん下がっていくわけです。

つまり、もしあなたの会社で5人のスタッフが毎週交代で記事を書いているとします。もし、5人中の1人の記事が8割のアクセスを占めているとすれば、その8割のアクセスを占めている1人の記事の割合を増やすべきなのです。アクセスがなかなか伸びないからといって、5人のスタッフを10人に増やして配信本数を2倍にすることにさほど意味はありません。コンテンツをやみくもに大量生産するのは、コストも時間もかかります。コンテンツの10割が10割のオーディエンスに読まれる、というのは現実的ではないかもしれません。ただし、おざなりの100本のコンテンツを量産するよりは、良質なわずかなコンテンツに注力した方が、実際には利益を生むことは間違いありません。20本の良質な記事と80本のおざなりの記事(2:8)を作るよりは、40本の良質な記事だけを目指すべきでしょう。

 

二兎を追うものは一兎をも得ず

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このパレートの法則を打ち破る画期的な製品づくりで成功を収めているのが、まさにアップル社です。2013年の売上げ比をみると、iPhoneとiPadとiTunesで81.5%、MacとiPodと付属品で残りの18.5%を占めます。つまり6割の商品が売上げの8割を占める、というパレートの法則を打ち破った効率の良さを象徴しています(ムダな商品がほとんどない)。

薄利多売、大量生産を軸としてきた大企業の多くが、競合他社と差別化ができずに窮地に陥っている状況を見てもわかるとおり、市場はみんなに相手にされない「八方美人」市場と一人勝ちの「オンリーワン」市場に二極化しつつあります。それはコンテンツマーケティングにおいても同様です。「八方美人」となって不特定多数をターゲットにして多くのパイを狙うのではなく、「オンリーワン」のペルソナを設定しなければなりません。

「八方美人」と言われる人は、みんなにいい顔をしようとするあまり、実はあまり人から愛されないことを、みなさんも体験的にご存知かと思います。ペルソナとは、顔の見える「ひとり」にフォーカスするための手法です。「二兎を追うものは一兎をも得ず」ということわざがあるように、二兎どころか不特定多数に呼びかけていては、伝えたいメッセージは誰にも届きません。個人の顔が具体的に浮かぶような「オンリーワン」の人格やライフスタイルを設定することが必要不可欠なのです。

 

コンテンツを届けるために絶対的に必要なのは、あなた自身が大切にしたいと考えるオーディエンスが求め、喜び、心を動かされるコンテンツ、知識や経験に裏打ちされた役に立つコンテンツをつくることなのです。

成田幸久

フェロー。AMEX会員誌、『ワイアード』日本版、JAL機内誌などで副編集長を務めた後、2004年インフォバーン入社。ニフティのブログサービス『ココログ』の立ち上げ時に、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほかにPC・モバイルと連動した通販誌『カタロガー』編集長、セブン-イレブンとヤフーの共同事業メディア『4B』の編集長を務めるなど、数多くのWebメディアの企画・運用を手がける。