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【Session】Webパブリッシャーに求められるブランディング戦略――読者増の明確化、関係性の強化|DIGIDAY LAUNCH PARTY

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2015年9月1日、インフォバーンは『DIGIDAY[日本版]』をローンチしました。それを記念して、同日リッツカールトン東京で開催された「DIGIDAY LAUNCH PARTY」。ブランド企業様やパブリッシャー様、アドテク企業様など、デジタルマーケティング業界のキーパーソンの皆様にご来場いただきました。

「DIGIDAY LAUNCH PARTY」のメインプログラムは、「デジタルシフト」をテーマとした2つのパネルディスカッション。それぞれのセッションで、パブリッシャーとブランド企業のキーパーソンの方々にご登壇いただき、それぞれの視点でデジタルシフトの課題と解決策、そしてデジタルマーケティングの今後の展望などを語っていただきました。

今回は第2部の模様をお届けします。「ブランド企業におけるデジタルシフトの課題と解決策 ~パブリッシャーに期待したいこと~」と題して、ブランド企業の方々にお話しいただきました。

>>第1部「パブリッシャーの未来~デジタルシフト/グローバル展開の必然性~」はこちら


【Panelist】(本文 敬称略)

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(写真左から)
全日本空輸株式会社(以下、ANA)
マーケティング室
マーケットコミュニケーション部 リーダー
冨満康之 様

日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)
マーケティング&コミュニケーション
コミュニケーション&ブランドエクスペリエンス 部長
山口有希子 様

株式会社コーセー(以下、コーセー)
宣伝部 宣伝企画・PR課
小林祐樹 様

【Moderator】
インフォバーン
DIGIDAY[日本版]プロデューサー
谷古宇浩司


組織全体でデジタルシフトに取り組む体制が求められている

谷古宇 まずは「ブランド企業のデジタルシフトの課題とその解決策」というテーマで、皆様からお話を伺っていきたいと思います。それぞれのお立場で、ブランド企業がデジタルシフトをしていくうえで、課題と感じることは何でしょうか。

小林 会社全体で取り組むための体制づくりでしょうか。コーセーではプロモーションをブランドごとに実施しており、デジタルマーケティングも同様です。よって、個別施策はROIを見ながらスピード感もって進められています。ただ、これだと、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)やMA(マーケティングオートメーション)といった、ブランドを横断し、会社全体で取り組むべき施策を進めづらいんです。

谷古宇 たとえば、ブランドとは別に、共通の基盤などを構築するための予算は確保されているのでしょうか?

小林 特別に設けてはいないですね。各ブランドの担当に、共通施策のための予算調整を事前に要請し、基盤づくりを少しずつ進めている状況です。

谷古宇 日本IBMでは、デジタルマーケティングの専門チームがいるとお聞きしました。

山口 部門毎にデジタル担当者がいますが、部門横断のバーチャルチームを設けています。いろいろな組織や部門の人が集まり、プロジェクトチームのような形態で構成されていて、そのなかでディスカッションを繰り返しています。

谷古宇 そうした部門横断的な取り組みは、デジタルシフトにおける課題解決に重要だと思います。

山口 IBMは、事業のひとつとして、「マーケティングソリューション」を掲げています。そのため、我々自身がデジタルマーケティングを実践し、サンプルケースになっていくべきと考えているんです。

いま、IBMでは、世界規模でマーケティング組織の大改革を実施しています。そのテーマとして掲げているのが「Data Driven Marketing(データ・ドリブン・マーケティング)」です。蓄積された膨大なデータを使って、個々のユーザーに対するマーケティングやマーケティングツールの活用などを実践していくことが狙いです。

ただ、従来取り組んできた方法と大きなギャップが生じており、それを埋めていかなければなりません。その解決策のひとつとして、私が重要視しているのは「パートナーシップ」ですね。

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谷古宇 それは外部のパートナーでしょうか?

山口 そうです。たとえば、専門家とのコラボレーションやメディアとのコミュニケーション、ある分野で非常にとがっている企業様との一緒の取り組みなど。そうした活動を通じてさまざまな知見を獲得することで、我々自身も変わっていけるのです。

谷古宇 デジタルシフトという課題を前に、ブランド単体ではなく、組織全体で取り組むことが今後より求められているんですね。

ブランドが持つ「データ」をいかに活用していくか

谷古宇 ANAでも最近、デジタルマーケティングに特化したチームが立ち上がったそうですね。

冨満 2012年に「マーケティングコミュニケーション部」が設立され、2015年4月には、組織内に「デジタルマーケティングチーム」が立ち上がり、デジタル領域すべてを担っています。

それに合わせた環境や体制、プロセスもつくりましたが、もちろんそれ自体が目的ではありません。目的は「ANAのマーケティング力を高めていくこと」。そのために、デジタルのテクノロジーを使ってマーケティングのプロセスを回し、実践を積み上げていこうと。

谷古宇 ANAではWebサイトやサービスを含めて、非常に多くのユーザーとそれに紐づくデータを持っているかと思います。それを活用していくうえで、戦略上、重視しているものは何でしょうか。

冨満 コアとなるのは、Webサイトのユーザーの行動データと、約2,000万人を超えるマイレージ会員様。そして、それらを掛け合わせ、ターゲッティングしていくと、顧客軸でのコミュニケーション戦略の重要性が見えてきます。

たとえば、Webサイトのユーザーのなかには、ANAと関係値が深い方と、そうでない方がいらっしゃる。海外に目を向ければ、そもそもANAの存在すら知らない人は何十億人といるはず。会員様のなかには、ロイヤリティーの高い方もいらっしゃいますし、そうではない方ももちろんいらっしゃいます。

このように、それぞれのお客様とのコミュニケーションは、「それぞれ」に必要だと思うんです。つまり、顧客軸でとらえていかないといけない。それをいかに実践する。それが、我々のデジタルマーケティングの考え方ですね。

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谷古宇 ブランド企業がデジタルシフトしていくなかでのキーワードとして、「顧客データをいかに使うのか」というのが大きなテーマのひとつです。お話を聞いていて、顧客データをデジタルマーケティングに活用するうえで、システムはもちろん、組織やマーケッター、社員全員の意識変革が必要だと感じました。

メディアとユーザーの結びつきの強さが、戦略の要となる

谷古宇 本日は多くのパブリッシャーの方がいらっしゃっています。ブランド企業としてパブリッシャーに期待することとして、率直な意見をお聞かせいただけますでしょうか。

小林 ブランドビジネスをしていると、ターゲットの年齢層や行動などに合わせて広告を出稿する媒体を検討します。雑誌・新聞などはメディア自体がきちんとブランディングされているので、こちらも選びやすいです。たとえば「この行動をしているターゲットは、このモデルを好きな人が多い。だから、このモデルが専属のこの雑誌は間違いなく出稿しよう」といったように。

一方で、Webメディアについていえば、新しいものが多く登場しています。もちろん、それぞれのコンセプトは理解できます。ただ、自分たちのメディアに、どんなユーザーが、どのような情報を求めて集まってくるのかを、もっと外に対して打ち出してほしいですね。そうすれば、私たちも選びやすくなります。

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山口 メディアがたくさん出てきているということは、ユーザー側の思考も多様化してきているということだと思います。私としても、メディアには、自らがターゲットとするユーザーと強いエンゲージを築いていってほしいと思いますね。

冨満 メディアはどのようなユーザーにターゲッティングしてコンテンツを提供しているのか。そして、ブランド企業側では、そのメディアに来訪したユーザーとどんなコミュニケーションをとるか。メディアとブランド企業の戦略を掛け合わせていくことが必要だと思います。ユーザーのプロフィールやWeb上での行動が多様化しているからこそ、ユーザー軸で戦略を考えることが重要なのです。

ネイティブアドはユーザーの気持ちをかき立て、興味や検索意欲を高めるのに有効な手法だと思います。そんな連携がこれからもっとできるでしょうね。それを活かせるデータを、ブランド企業は持っていますから。

谷古宇 ブランド企業の皆様も、企業ごとの戦略によって状況は異なりながらも、デジタルシフトという課題に直面しています。そうした状況をけん引していくキーパーソンにとって、DIGIDAY[日本版]は有用なメディアでありたいと思います。ありがとうございました。
>>第1部「パブリッシャーの未来~デジタルシフト/グローバル展開の必然性~」はこちら

大川省太

広報媒体の制作会社で営業、ライターを経験した後、コーチングファームに勤務。2015年よりインフォバーンに入社し、コンテンツディレクターとしてソリューション案件を手がけ、現在は広報を担当。好きな食べ物は、鶏の唐揚げとトマトカレー。