デザイン現場における制作インフラの整備が日々進み、ユーザーは一定クオリティの表層イメージを楽しめるようになってきました。が、同時に表現の平準化も進行し、その表現(というよりはその構造自体)に停滞感を感じることも多いのではないでしょうか。
こうした状況の中で我々デザイナーは、一体どのようにして自らの足場を築いたらいいのか−−−
今回は、こんな問いに対する回答の手がかりになりそうなアーティストの活動を、先週足を運んだ二つの展示から紹介したいと思います。
まずは、「『エレメント』構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」から。
スリランカ出身の構造デザイナー、セシル・バルモンドは、最新テクノロジーを駆使し、コールハースやカプーアなどの有機的で躍動的な構造物の実現を可能にしてきたことで知られていますが、彼はその構造を生み出すために、自然の仕組みに着目します。
「よく観察する。そして創り出す。そのとき、その成り立ちまで考える。外見と内側にあるものの間には劇的な往還が生まれ、想像力を呼び起こす。“リアル”なものとは、閉じて固定されたものではなく、浸透性があって、いくつかの要素によるマトリクスがつくる全体系の中に存在する」
「観察を続けると、(中略)なにか別のものが頭をもたげ、私たちの感情や記憶を刺激する。説明的な言葉や線が止まったとき、その姿の内側には直感的なものが形を結ぶのだ」
バルモンドのこんな言葉が掲げられた会場を進んでいくと、独創的で新しい構造の秩序を生み出すために、彼がダイナミックに視点を変位させながら自然を観察していくプロセスがよくわかります。
そしてもう一人、現在TSCAにて個展が行われているラファエル・ローゼンダール。
ミニマルなFLASHアニメーションで知られる作家ですが、彼が面白いのは、ひとつひとつの作品にそれぞれ違うドメインを与え、作品の購入者にはドメインの所有権が与えられること。購入された作品も公開され、ここでは所有と共有のひとつの形が提示されています。
先日、ギャラリストの染谷卓郎氏に話を聞く機会があったのですが、興味深いのは、ローゼンダールが論理的な思考の末このようなスタイルをとっているのではなく、すべてを直観的に行っているということ。
時代性/永続性、所有/共有がバランスする位置を瞬時に嗅ぎとった結果、といえるでしょうか。
“直観”。
モチベーションもアプローチも異なる二人の創作活動から偶然出てきたキーワードですが、
(バルモンドのいう“直感”は、“直観(観察や経験の積み重ねによる、本質を捉える力)”の方がその意を正しく言い当ててるでしょう)
この言葉をして、冒頭の問いに対する回答としてしまっては、身も蓋もありません。
が、しかし。
はたして“直観”が生まれ出る領域を自分の中にどれだけもっているか?
二人の作家から、こんなことを問われたような気がします。


