球春到来! プロ野球の季節がやってきました。
開幕直前はどんな弱小球団のファンでも、「今年は優勝できるかも!」と期待することが許される唯一の時期でもあります。野球ファンにとっては、“希望に満ちた未来”に胸を膨らませられる季節なのです。
かくいう私も三度のエッチより野球が大好き!
でも、プレーするのは大嫌い!
子どもの頃からスポーツは大好きだったのに、野球だけはからっきしダメのダメ。フライはおでこで受けるし、ピッチャーの球は股間で受けるし、自打球は目に当てるし、カーブを打とうとするとバットがピッチャーめがけて飛んでいくし……まあ、とにかく野球が大の苦手でした。
だからこそ、あんな難しいスポーツを軽やかにこなしてしまう野球選手は、私にとって特別な存在であり、憧れであり、尊敬すべき人たちなのです。
やっぱり野球と巨乳はプレーするより、眺めているに限ります。
そう。私にとって野球(と巨乳)は、かくも神々しい聖なる憧れのイコンなのです。
そんな憧れの野球選手が自らをしごくキャンプを迎えると、私はいつもしごき漬けだった中学時代を思い出しては、郷愁に浸ります。このしごきに満ちた充実の日々を思えば、私の残りの人生はほとんど堕落と荒廃と背徳にまみれた歳月と言ってもよいでしょう。
「しごく」を辞書で調べると、漢字では「手が及ぶ」と書いて「扱く」。意味は「(1)細長い物を片手で握り、もう一方の手で強く引き抜く。 (2)いためつける。転じて、厳しく訓練する」とあります。
なるほど、痛そうでもあり、気持ちよさそうでもあります。私のしごきに満ちた中学時代は、まさに痛くて気持ちいい3年間だったと言ってよいでしょう。
小学生の時にすでに野球の才能がないと確信した私は、中学に入学すると、姉に「一番モテる」とそそのかされてテニス部に入部しました。まあ、そんな不純な動機で始めたのが運の尽き。テニス部のしごきといったら野球部と双璧をなす過酷なものでした。
1年歳上というだけで全知全能の神として君臨した先輩。そして先輩という神への絶対服従。そんな彼らのもと、カフカもびっくりの不条理かつ理不尽な無限ループのしごきの世界に、私の人生は完全に支配されていました。
炎天下の練習中、水を飲むのが厳禁とされた時代です。飲んだことがバレたら最後。「そんなに水が飲みたければ飲ませてやる」と、バケツいっぱいの泥水を一気飲みです。
飲みきれずに誰かが吐くと、今度は「口だけじゃ足りねえのかぁ? なら、ケツで飲ませてやる」と、全員ワンワンスタイルで座らされて、パンツを下ろしてお尻の穴にホースで放水射撃。

お尻で水が飲めるわけがありません……。
あるいは球拾いでうっかり球を後ろにそらせば、罰としてコートの真ん中に正座をさせられてスマッシュの絨毯爆撃。
あるいは野球部とコラボを組んで校舎の壁に磔付けにされて、トスバッティングの機銃掃射。
あるいは砂浜での片足ケンケンうさぎ跳びマラソン。
それはそれは、創意工夫に満ちた、「痛い、苦しい、辛い」毎日でした。
私がそんな「痛い、苦しい、辛い」過酷な日々に耐えられたのは、ひとえにアニメ「巨人の星」(再放送)のおかげでした。野球を通してひとりの男の生きざまを描いたスポ根の原点となった作品です。戦後の日本でこれほど不運な男は他にいないでしょう。とにかく、どんなにがんばってもがんばっても報われないし、成功したと思ったらまたすぐどん底に突き落とされる日々。無限地獄の如く、挫折と試練を繰り返す人生……。
そんな飛雄馬の生きざまに勇気づけられ、「彼に比べればオレの辛さなんてまだまだ甘いぜ」と自分を励まし、部活が始まる前の早朝も、部活が終わったあとの夕暮れも、休日も本気で大リーグボールに匹敵するような魔球を生み出すために、友人と2人で猛特訓をしていたものです。
しかし、辛い日々を耐えるには、やはり“希望に満ちた未来”が必要です。星飛雄馬だって、“巨人の星”になれる日が来ると信じていたからこそ、どんな試練にも耐えられたのです。
「先輩が引退さえすれば俺たちの天下だ!」を合言葉に2年間耐え忍び、先輩たちのしごきから解放された私たちは、自らのしごきに快感すら覚えました。そして、県下でも指折りの強豪校に成長! そして、最終目標にしていた「テニスをやればモテる」も実現! 私がモテたのは後にも先にも生涯この3年だけ! それが、まさに私にとっての“希望に満ちた未来”でした。
“希望なき”しごきは「フルメタル・ジャケット」の世界であって、行き先はもう地獄しかありません。
仕事でも、徹夜が連日続いたり、理不尽な無理難題を課せられると、時々「苦しい、辛い、辞めたい」という後ろ向きな気分に襲われることがあります。しかし仕事には、必ずやり遂げたときの達成感と評価と報酬という“希望に満ちた未来”があります(なければ、そんな仕事辞めちまえ!)。
自分の意思で試行錯誤しながら自らをしごけば、必ず“希望に満ちた未来”は見つかるーーそれが私が中学の3年間で学んだことでした(だって、私がモテたのは後にも先にも生涯この3年だけ!)。
人にしごかれるより、自分でしごけーーそれが私のソリューション。
なんて、営業トークにもなってないのはどうかと思いますが、人にゴシゴシしごかれるより、自分でシコシコしごいたほうがやっぱり気持ちいいですからね。
今週の推薦曲

「ゆけゆけ飛雄馬」

