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テクノロジー活用で陥りがちな4つの落とし穴

Businessman Checking Data

こんにちは、インフォバーンの服部です。IoT(モノのインターネット化)領域をはじめ、新しい技術は私たちにさまざまな形で恩恵を与えます。しかし同時に、マーケティングの現場にいる人々にとっては、情報へのキャッチアップはもちろん、新しいテクノロジーを導入しながらも、「思うような結果が出ない」という悩みも増えているのではないでしょうか。今回は私自身の反省も含めて、新しいモノやサービスを取り入れるときに気をつけたい点をピックアップしていこうと思います。

落とし穴① 機能をすべて使いこなせない

たとえばF1はカーレースの最高峰ですが、一般人も同じマシンを使えばレースで上位に入ることができるでしょうか。答えは「No」でしょう。多くの人はハイスペックな機能を使いこなせず、四苦八苦しながら運転することになるはずです。

デジタルマーケティングの世界でも、似たようなことは往々にして起きます。期待の新ツールを喜び勇んで導入したものの、多くの機能は使われないまま。気づけば、以前利用していたツールと同じような機能しか使えないまま、利用料金だけが積み重なるなんてことがありえます。マーケティング担当者にヒアリングすると「新しい機能が次々と出てきて、とてもじゃないけどキャッチアップできない」「必要な機能はないのに、不要な機能はたくさんついているツールもある」と、ため息混じりに説明されることもあります。

多種多様な機能を使い、セグメントを細分化して、顧客に対して最適なコミュニケーションを心がけるのはマーケティングとしての理想です。しかし、かけた時間とコストを考慮に入れたときに、単純にメールマガジンを個別ユーザーの属性を気にせず配信した方が、費用対効果が高いということも現状では多いでしょう。

私たちに必要なのは課題を解決するための「手段」です。そのための「道具」として適切なものを、見極めなければなりません。

落とし穴② 業務を効率化するはずが、負担だけが増えた

新しい技術やツールを導入するには、やらなければいけないことが多くあります。使い方を覚えて、そこから最適な利用方法を見つけ出し、さらに新しく発生するタスクを洗い出す。これまでのやり方・フローを変えなければならないだけに、負担は増えます。

もちろん、使いこなしたときに大きな成果が期待されるからこそ、新しいテクノロジーを取り入れたいと誰もが考えるはず。しかし、導入への負担を考慮に入れていないケースが多いというのも事実です。

SNSを例にしましょう。SNSのような多くのユーザーが利用するプラットフォームで情報を発信していけば、新しいタッチポイントの創出につながります。ただ一方で、コミュニケーションチャネルを増やすと、原稿の作成、画像の手配、担当部署への内容の確認などなど、やらなければいけないタスクも増えてきます。現在、こういった負担を事前に考慮せずに「これからはソーシャルだ!」という号令のもとにアカウントを開設したものの、更新が止まってしまっているものが多数見受けられます。

新しいものへの期待や興奮に隠れて、実施タスクと工数についてはないがしろにされがちです。期待できる効果を踏まえたうえで、導入に対する負担を正当に評価し、実際の導入を検討するべきでしょう。

落とし穴③ 全体の設計ができておらず、パフォーマンスが上がらない

デジタルの普及が進み、各種施策がシームレスにつながるようになりました。オンライン広告でいえば短期的な刈り取りだけでなく、アトリビューション分析で長期的なユーザーの動向も計測可能です。そういった状況が実現する一方で、とるべき施策を組織として実行するのは一筋縄ではいきません。

工業機械を販売するメーカーを例に考えてみます。「自社サイトのコンテンツを充実させ、マーケティングオートメーションを使いこなし、見込み顧客を増やす」というのが、デジタルマーケティングに取り組むチームのミッションとして設定されます。しかし、彼らがどれだけ高いパフォーマンスを上げたとしても、「営業の数が足りない」「製造ラインの稼働が間に合わない」といった状況では、売上にはつながりません。

逆の見方をすれば、CRM(顧客管理システム)上で「イベントへの参加」といったオフラインのデータを統合することによって、デジタル施策の精度を上げていくことも可能です。

少し前までオンライン施策はWeb上で完結し、そこで出てきた数値を効果指標と捉えることがほとんどでした。しかし、今や1つのWeb施策がもたらす波及効果は、実に多種多様です。また、SFA(営業支援システム)に代表されるように、企業のさまざまな活動とデジタルが密接に結びつくようにもなっています。そういった状況を踏まえると、1つのツール、1つの技術を使うにしても、横断的な組織構築や施策フローの設定は必須。しかるべき準備がなければ、どんなに新しく素晴らしい技術を取り入れても、効果を発揮することは難しいでしょう。「組織の構築やスタッフの教育が、デジタルマーケティング施策の大きな鍵を握る」と話すマーケティング担当者は、少なくありません。

新しい技術を導入する際の「負担」については前述しましたが、こういった組織に関わるコストについても、しっかりと見積もることが成功の秘訣となります。

落とし穴④ 継続する際の評価基準がない

最新のテクノロジーといえど、講じた施策の結果がすぐに出てくるとは限りません。そのとき、新しいツールや技術をどのように評価するかは、非常に悩ましい問題です。

先述のように、これまでのやり方を変え、組織体制も変えて取り組む施策は、初期段階ではなかなかうまくいかないものです。しかし、これからの技術革新を見据えれば、ある程度の痛みを伴っても取り組む必要があるかもしれません。目先の利益にとらわれて、将来にもたらされる恩恵を無視するのは早計です。

新しいモノやサービスがパフォーマンスとして低調だった場合、多角的に評価しなければなりません。たとえば、自社スタッフや顧客となるユーザーが単純に新しいやり方に慣れていないからなのか。それとも実際の組織・フローに問題があるのか。それとも新しいテクノロジーそのものに問題があるのか。なかなか精査しにくい問題ではありますが、これまでと違ったモノ・サービスを利用するときにはしっかりと考えなければなりません。安易な評価を下すことで、組織が新しい技術・サービスの導入に対して否定的な風潮を生み出す危険性もあります。さまざまな指標や考え、視点を取り入れて評価していくべきでしょう。

 

私はけしてテクノロジーを否定しているわけではありません。しかし、闇雲に新しい技術を信奉することには疑問があります。ユーザーの視点に立ち、必要なモノ・サービスを提供し、満足・価値を与える。その中でテクノロジーがどういった役割を担うことができるか、そしてベターな手段はないのか、ということを考えて、最適なやり方を選ぶことが必要です。

photo:Thinkstock / Getty Images

服部丈

東京スポーツ新聞社、Web制作会社を経て、2013年9月にインフォバーン入社。プランナーとして、コンテンツ制作、SNS運用など、デジタルマーケティング全般に携わる。