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2014.7.3

インターフェイス過渡期におけるデザインの試み ー「MILANO SALONE 2014」レポート

クリエイティブ・フェローの木継です。

VR(ヴァーチャルリアリティ)を使ったインフォグラフィクスの実験プロジェクトをはじめてもうすぐ1年。先日、ミラノサローネでの新作発表も無事終わりました。

この1年でウェアラブルデバイスやセンシング技術の具体的事例が増え、インターフェイスの成り立つ基盤も変わろうとしています。このような状況を背景に、デザインの領域からどんなアプローチがされているのかーー 。

今回はそんな観点でミラノサローネを振り返ってみたいと思います。

Oculus

 

「フィジカルな体験」でメッセージを伝える

Samsung「Flows: A Journey to the Future」

 

まずはメッセージを“体験”で伝えるサムスンの展示から。暗い展示室に入ると、サムスンの製品群がどんどん解体されていきます。

katzitay1さんがYouTubeにアップした動画
時間を逆行するように製造プロセスをたどっていくと、パーツはやがてデジタルのパーティクルに分解され、最後に人の手の形になります。「テクノロジーが進歩してもものづくりのルーツは人である」といったところでしょうか。

裏側に回ると、今度は逆に手からプロダクトが生まれるプロセスが追え、時間を行き来してサムスンの哲学を伝えるインスタレーションとなっています。

上手いのは、センシングを使ってパーティクルが操作できるようになっている点。独自の世界観をベースに明確なコンテクストをつくり、その中でフィジカルな参加をさせることで、トータルとしてひとつの“体験”を生み出しています。

言葉にするとシラケてしまいがちなメッセージを、言葉ではなく“体験”を通じて上手く感じとってもらうことができるという、いい事例だと思います。

 

「人と環境の相互作用」をデザインする

Team Labo「Connecting! Train Block」

 

体験をつくるうえでインタラクションをどう作用させるか、そのレベルは実に多様です。

たとえばインタラクションを部分的に使っていたサムスンに対し、体験の中心に置いたのがチームラボの「つながる!積木列車」。

周りの人とのコミュニケーションを楽しめる作品です。

テーブルの上に積木を置くと、同じ色同士の積木が道で繋がり、みるみる街ができあがっていく。もちろん他の人の積木とも繋がっていきます。自分の予想を超えて街が変わって行く様子を見ていると、周囲と影響し合いながら状況が変わっていくおもしろさに気づかされます。

ディスプレイではなくテーブルを選んでいる所に、“人とシステム”ではなく“人と環境”との相互作用を設計するという明快な意図が感じられる作品です。

 

物質を「情報化する」

Tangible Media Group「TRANSFORM」

 

同じくテーブルをモチーフにしながら、テーブルそのものの本質にアプローチしたのが石井裕&タンジブル・メディア・グループ。

タンジブルとは、石井裕氏が提唱する、デジタル情報を直に触れて操作する概念です。「TRANSFORM」は、その概念をさらに押し進めた「ラディカル・アトムズ」という、物質そのものを情報化する取り組みのひとつ。

一見フラットに見えるテーブルは無数のパーツでできていて、その表面はプログラミングにより形を変え、人の動きに反応して変化します。

“情報表現”と同時に“入力装置”でもあるこのテーブルは、情報と物質が結合した形。プログラムの対象が“像”から“物質” へと広がっていくこれからの時代における、インターフェイスのひとつの方向性を示していると言えます。

 

変化する「人とモノの関係性」

ECAL「Delirious Home」

 

そのクオリティの高いプレゼンテーションで毎年注目を集めるスイスの美術大学ECALは、人とモノの関係性をテーマに、捻りのある作品を発表しました。

重力に逆らう器、前に立たないと映らない皺だらけの鏡、人のポーズを真似する時計——。

“家”というインターフェイスを使って、文脈がズレたインタラクションをユーモラスに描いてみせます。

人とモノが相互作用する世界において、テクノロジーに“使われない”ようにするにはどうすればいいか。そして、“スマート”を目指すだけの未来が本当に楽しいものなのかどうか。

これからの人とモノの関係性をデザインするうえで考えるべきさまざまなテーマが潜んでいます。

 

「センシングとフィードバック」のスムーズな連携

Noriyuki Kitsugi & Kenji Arakawa「Subjective World」

 

最後に私たちの作品をご紹介します。

moffの荒川健司氏と共同制作した「Subjective World」は体験型のインフォメーショングラフィクス。自分自身の身体感覚をベースに情報を理解するための試みです。

今回発表した作品では、情報空間の中に没入し、ジェスチャーで情報を操作しながら、体感・数値・ビジュアルといったさまざまな面から情報を理解することができます。

サローネ期間中、非常に多くの方に楽しんでもらうことができましたが、今はまだHMD(ヘッドマウントディスプレイ:頭部装着ディスプレイ)というデバイス自体が注目されている段階です。

重要なのは、コンピュータが透明になったときに、どのようにユーザーを理解(センシング)し、適切な情報をフィードバックしていくのかということ。

それらをスムーズに連携させるインターフェイスと情報マネジメントの仕組み、そしてコンテキストと結びついた新しい操作体系をつくっていく必要があります。

今回ご紹介したいくつかの作品からもわかるように、“体験”が“人とモノと環境”の相互作用により生み出されていく状況がいろいろな所で現れはじめています。

私たちはこのような状況を見据え、“環境というインターフェイス”とコンテクストを結びつけながら、ユーザーをアフォードしていくことが求められていると言えます。

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