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2016.1.15

IoT時代におけるインフォバーンのUXデザイン視点と取り組み事例

こんにちは。インフォバーンKYOTOの山岸です。

今回は、2016年1月8日に京都工芸繊維大学で行われた「第59回HCD-Net サロン in 京都」に、インフォバーン京都支社長・井登とデザインディレクター・辻村が登壇しましたので、その内容をレポートします。

サロンのテーマは「UXとHCD ~これからのIoTサービスを考慮して~ 」。インフォバーン以外に、株式会社ソフトデバイスによるプロトタイプ手法を用いた実践的なUIデザインプロセス、株式会社コンセントによるアジャイル開発の応用編ともいえるSERVICE DESIGN SPRINT、千葉工業大学の山崎先生からはこれからのUXデザイン思考とその事例について話されました。

インフォバーンからはIoT時代における、自社のUXデザイン視点とその取り組み事例について紹介しました。

これから持つべきUXデザイン視点とは?

テクノロジーの進化によって、私たちを取り巻く環境はよりスピードを増して変化しています。あらゆるプロダクトがデジタルと融合しインテリジェンス化するIoT時代において、どうようなマインドセットでもってUXに取り組めばよいのでしょうか?

経験を捉える視座転換の必要性

HCDやUXというと「ユーザー中心」であることは当然であり、新しいサービスをデザインするにはユーザーと同じ視座に立って、その経験を捉えることが重要です。

たとえば、シカゴに拠点を置く戦略コンサルティングファームのDoblinグループが手がけたアラモレンタカーのイノベーション事例を挙げると、彼らは事業者視点からユーザー視点に視座を転換することで、ビジネスとして大きな成長を遂げました。

レンタカー事業者が‟その事業領域の枠内”でユーザー経験を捉えた場合、自社と顧客のタッチポイントは「レンタカーを貸す」というスコープしか見えてきません。しかしユーザーにとってそんなことは関係なく、「レンタカーストップで子供が遠くに行かないように気を配る」「車をレンタルした後コンビニに立ち寄りスナックを購入する」など、その周辺の経験にこそ価値があるのです。視座を変えると、企業から見える顧客経験の‟外側”にこそ顧客自身のエンドゴールが数多く存在し、ユーザーはそれらを経験していることが見えてきます。

Doblinグループはこのようなニーズを徹底的に洗い出し、ユーザーとのタッチポイントを革新的に変えることで新しい体験を発掘。レンタカーの根幹のスキームは変えずに、ビジネスチャンスを大きく広げることができたのです。つまり顧客自身も意識していなかった経験の‟外側”に意識を向けていくことで、技術的革新や大きなビジネススキームの変革以外にもチャンスがあるといえます。

注意が必要なのは、ユーザーの視座に立つことに慣れてくると、私たちはユーザー経験を勝手に判断しはじめ、広く俯瞰的に見る能力が衰えてくるということ。だからこそ慣れてくればくるほどユーザー視点に立ち戻ることが大切であり、根源的にユーザーが経験している視座に立つ重要性があります。

普遍的な経験価値と変化する経験を理解する

デジタルが進化するとともにIoTが普及し、時代が大きく変化してきていますが、時代が変わっても、「快適に過ごしたい」「情報を得たい」といったユーザーの根源的な欲求は変化しません。

では欲求が変化しないのであれば、すでにユーザーを理解できているとしてユーザー調査の過程をスキップしてもよいのでしょうか?

それは違うといえます。なぜならばユーザーの根源的な欲求は変わらずとも、企業にとっての「重要な顧客がどういう経験を求めるか」というコンテキストと「ユーザーの経験そのもの」が変わるからです。

たとえばテクノロジーの進化により、私たちの情報の主な取得方法が、紙媒体からWebブラウザへと変化しました。そしてスマホなどのデバイスが登場し、デジタルはインターフェースを通じて触れられるものへと進化。このように私たちが経験できる幅が広がると、根源的な欲求は変わらずとも、その背景や経験自体が変化していきます。

したがって、変わりゆく時代だからこそユーザーのコンテキストと価値をあらためて理解し、ペルソナやカスタマージャーニーを通して価値探索をすることは、さらに重要度を帯びてきているといえます。

シームレスにプロダクト同士がつながっていくIoT時代において、価値探索から得られた本質的ニーズの理解、ハードウェアやソフトウェアといった従来の既成概念にとらわれないインターフェースの探索、そして得られたビッグデータの活用がイノベーションを起こすために重要であるとインフォバーンでは考えています。

インフォバーンの事例紹介

「IoT時代におけるインフォバーンのUXデザイン視点」に続いては、弊社で研究開発として行っている事例を2つご紹介いたしました。

音と身体感覚の連動「POLYPHONIC DRAWING」

「POLYPHONIC DRAWING」は、‟ジャスチャー”という身体感覚を通じて音楽を奏でることができるオキュラスリフトを使った3Dドローイングアプリケーションです。

パソコンのキーボードやマウスで情報を操作していた90年代から、画面を直接触って操作することが標準化したモバイル時代を超え、これからはよりリアリティをもって、自然な状態で情報を操作することが可能だと考えています。

その可能性の1つとして、新しい感覚、感触と音楽を掛け合わせて生まれたのが「POLYPHONIC DRAWING」です。手の形やジェスチャーに合わせて音とオブジェクトを出しわけ、コントロールすることができます。インフォバーンでは「POLYPHONIC DRAWING」に限らず、情報と人間の行為、知覚の関わり方を模索しています。

私たちの生活をより豊かに。「CREATION IN THE LIFE」

2つめに紹介したのが「CREATION IN THE LIFE」です。こちらは、インフォバーンの持つクリエイティビティやテクノロジーの力を用いて、私たちの生活をより豊かにすることを目標に掲げたデザイン活動です。

現在は、日々の生活においてクリエイティビティ側面の大きい「料理」をテーマにしています。行動観察から得た価値探索をもとに、ナビゲーション方法から料理体験そのものをデザインし直す試み、名付けて「KITchen」プロジェクト。個人の嗜好性のアセット化、料理中に使用するプロダクトやレシピのインテリジェンス化を通して、料理体験をパーソナライズできる「簡単にいい感じに料理ができちゃうキット(KIT)」を目標にプロトタイピング中です!

サービスデザインカンファレンスレポートでも触れたFjordの提言「Living Services」の通り、IoT時代において情報とユーザーの距離感は変化しています。情報はより身近な存在となり、私たちにとって必要な情報としてパーソナライズされます。このようなことが自然に行われるIoT時代において、情報との接し方、情報とのインターフェースのあり方をテーマに、試行錯誤しながらインフォバーンでは研究を進めています。

まとめ

「UXとHCD ~これからのIoTサービスを考慮して~ 」という壮大なテーマのもと講演が行われましたが、IoT時代において各社とも模索しながらプロトタイプし、日々進化していることが分かり、非常に有意義で刺激を受けたサロンでした。

混沌とした時代において、UXデザイナーに限らず、サービスを生み出そうとするすべての人に創造力と総合力が求められると感じます。ユーザーや社会環境といかに関わり合いながら共創し、ビジネスとして成り立たせるか。既成概念に縛られず、スピードを持って柔軟に変化し続けることがこれからUXを考えていくうえで重要であると感じました。

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