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社員が熱意を活かし、自律性を発揮して働く職場環境にするには?【冨田憲二×井登友一「Designing for Orgculture」イベント・レポート】Q&A編

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インフォバーンが2024年10月23日に開催したトークイベント『自律的に社員が働く「組織文化」をデザインするには?』。株式会社ラントリップ・取締役の冨田憲二さんをお招きし、インフォバーン副社長・井登友一と対談した同イベントでは、最後に参加者とのQ&Aタイムを設けました。

「社員の熱意を結集するには?」「採用基準として重要視することは?」「社員の自律性を高めるには?」など、そこで寄せられたご質問に対し、回答した内容をお伝えします。(トークセッションをまとめた前編記事はこちら後編記事はこちら)。

Q1:個々人でベクトルの異なる熱意を結集するには?

――新しいことを推進していくためには、実現に向けた熱意が重要だと思いますが、個々人で熱意の特性が異なるなかで、組織という集合体として熱意を結集するには、どうすればよいでしょうか。

冨田:確かに100人いたら100人それぞれで熱意のベクトルは違いますが、個人や自チーム内の成長に情熱を注ぐタイプがいる一方で、会社に対する愛情や危機感を自分のエネルギーにしている人も必ず一人はいます。まずは、そうした方を探して巻き込んでいくのがよいのではないでしょうか。

だいたい「御社の中でカルチャーを体現している人をたった一人選ぶとしたら、誰でしょうか?」と尋ねると、何人か特定の人物に集中するんですよ。会社に対して愛を持っていて、その姿勢が周りに信頼感として貯まっている人がいる。基本的に組織を変える、カルチャーをデザインするには、バイネームで人を巻き込まないといけないです。泥臭い話ですが、まず最初に重要なのはそこだと思います。

井登:Uniposの田中弦さんと対談した際(こちらの記事を参照)、会社を良い状態にするためには「いかに社員をしらけさせないか」が重要だとおっしゃっていました。いくら立派なことを言っても、社員がしらけてしまっては意味がない。だからこそトップが責任を持って、上辺ではなく本気でコミュニケーションを図るべきだと。熱意のある方に仲間になってもらって、しらける危険性を減らしていくのも重要なポイントかもしれないですね。

冨田:組織の面白さは、ほとんどの社員がグレーゾーンにいることなんですよ。両極端な主張や意見の間に、実はほとんどの社員がいる。「やばい、みんながしらけているかも?」と思うと焦りますが、実はしらけているのは一部の人だけだったりします。

そこを勘違いして状況が悪化しそうな場面で、1人でも「うちの会社が大好きだ」という人が出てくるだけで、一気に好転することもあります。それが組織の実態だと思いますが、オンラインだとそれが見えづらいので、コロナ禍の間は各社が悲鳴を上げていましたよね。

井登:コミュニケーションからオンラインを排除することは、もはや無理ですよね。そんな中でも、どう関係性をつくり、継続的に動いていくものにしていくかのアイデアは、常に考えることが欠かせないものになるでしょうね。

冨田:そうですね。巻き込むべき人を巻き込んでいって、一人よがりにならないようにバランスを取りながら、試していくしか道はないかなと感じます。

Q2:社歴の浅い社員にカルチャーを伝えるには?

――入社して間もない社員に対してカルチャーを伝えるうえで、どんな機会を提供すべきでしょうか?

井登:入社年次が浅い人は、当然ながら企業文化の中に身を置いた期間も短いですよね。在籍期間が長い/短いだけで決まるわけではありませんが、言葉で伝えても腑に落ちる度合いはやっぱり違います。在籍期間が短い方ほど、理解できるコンテクストの範囲は狭くなる。そのときに、下手に言葉で伝えようとすると、本来は言語化されていないコンテクストを削ぎ落として、表面的な理解を求めてしまう懸念もあります。「言わずともわかるだろう」では伝わらない一方で、言葉にできないコンテクストの共有も重要です。その折り合いをどううまくつけていくか。

冨田:私がSmartNewsに入る前にいた2社は、どちらもカルチャーとしてリクルートのDNAがある会社で、人的資本に投資することへの徹底ぶりは圧倒的でした。採用にも非常に長い期間をかけていて、そのプロセスの中で会社を代表するような幹部候補生やイケてる社員にたくさん会ってもらうんです。そうして「自社に合う人だ」「自分に合う会社だ」と互いに納得感を持ってから、採用/入社にいたる。

そのカルチャーの良し悪しはおいて、オンボーディングもそうですが、結局はどこまでコミュニケーションの量を取れるかだと思います。社長や経営層を含め、会ってもらうべき人とコミュニケーションを取れる機会を愚直につくり続ける以外に、特効薬はないんじゃないかと思います。

Q3:採用の際に重要視する基準は?

――採用の際に最も重視することを一つだけ教えてください。また、そのように採用した人材が万が一想定外だった場合の対処方法を教えてください。

冨田:カルチャーによって誰を評価するかは変わるので、会社によって違うことは前提として、私が個人的に重視しているのは「人格」「徳」ですね。サイバーエージェントさんが新卒採用で「素直でいいやつ」を選んでいるという話は有名ですが、それと近しい粒度の評価の仕方かもしれません。

当然、いろいろな考え方があるので、ジョブディスクリプションを明確にしたうえで、ケイパビリティだけを基準にし、人柄やポテンシャルは1ミリも考えない、という考え方もありだと思います。人格には疑問符がつく人が事業のブレークスルーを起こして、業績が一気に伸びる例も実際に見聞きしてきました。

だから、あくまでも個人的な価値観の話になりますが、私の場合は、限られた人生の中で楽しく仕事をしたいので、ラントリップでも人格的に気持ちが良いメンバーと切磋琢磨しながら、できる範囲で最大限に会社を伸ばす方法を取りたいと考えています。

井登:採用する際の条件、クリアすべき要件に、当然ケイパビリティは入りますよね。ただ、それとは別に、良し悪しで測れないような判断基準も持つべきかもしれませんね。もし入社後にうまくいかなくても、仕方がないと腹を括れるような揺るがない基準です。採用するかどうか、相手とも無限に話す機会はつくれないので、それがないと悩んでしまいます。

冨田:パフォーマンスが出なかった場合の対処方法については、逆に私も聞きたいくらいですが、一つ重要なのはきちんフィードバックしていくことじゃないでしょうか。ラントリップでは、メンバーにダメなところはダメだと伝えつつ、逆にこちら側がダメなところも言ってほしいと伝えています。というのも、経営陣が自らのダメな部分をさらけ出し、下からのダメ出しを受け止めることで、逆に下に指摘もしやすくなるんですよ。必ず下にネガティブなフィードバックをしないといけない場面は出ますので、いかに躊躇いなくフィードバックできる組織にしておくかは重要だと思います

井登:お話をうかがっていて、メタファーとして「スパーリング」が思い浮かびました。ボクシングのスパーリングは、互いに容赦なく殴り合いますが、相手を打ち負かしてしまっては意味がない。スポーツマンシップとしての面もありますが、そもそも相手を強くするためにやっているからです。良いスパーリング・パートナーは、相当高額なギャラをもらえると聞きます。格闘技の世界では、強く育てるコーチングのようなものとして、スパーリングはあるんですね。

フィードバックも同じように、本気で本音で行う必要があると同時に、目的は負かすことではなく育てることにあります。褒めるばかりではなく、腹の痛いところも提示していかないといけない。そのスパーリング相手としての振る舞いを覚えていくうちに、自分のレベルが上がるし、相手はより成長するはずなので、その意識を持てるといいですよね。

Q4:企業カルチャーに対する内省を深めるには?

――冨田さんのお話の中に、「内省」という言葉が出てきましたが、日々変化し続ける企業文化をとらえるうえで、個人として、組織として、どう内省をするべきでしょうか?

冨田:前提として、社員全員に内省してもらうのは難しいですね。組織に対する意識の濃淡は必ずあるので、私はあまり「みんな、ちゃんと自社のカルチャーについて内省してね」とは強要しないです。

一方で、組織全体としては内省する機会を取るべきだと思います。そもそもカルチャーは、どう頑張っても100%は言語化できない抽象的なものなので、事業をしていくなかで「うちのカルチャーとして、これはどう対処すべきだっけ?」と話題になるタイミングは必ず訪れるんです。

たとえば、ラントリップでは動画コンテンツを公開しているのですが、先日メンバーの「私はこういうふうに練習しました」という発言に対して、「そんなことでうまくいくなんて、ちょっとおかしくない?」というアンチコメントがついたんです。まさにそこで、「我々はランニングのダイバーシティを許容したいというビジョンを持っているけど、こうしたアンチコメントに対してはどう対処すべきか?」という話し合いが自然発生しました。

そうしたカルチャーが揺らぐ萌芽を見つけた瞬間に、話題にして対話できる場を用意する。そのイベントを逃さないことが重要だと思います。放っておくと流されて、曖昧なまま過ぎていってしまう。特にオーナーシップを持っている人が逃さずに拾い上げ、しっかり対話して深めていくことで、組織としての内省も日々深まっていくと思います。

Q5:社員の自律性を高めるには?

――マネジメントの立場から、自分の部下の自律性に悩んでいます。そもそも自律性に対するお考えと、社員の自律性を高めるための取り組みをお聞きしたいです。

冨田:私がよく使うキーワードとして、「オーナーシップ」があります。どんなに小さなことでもよいので、社員に期限付きでタスクを任せてオーナーシップを取らせる。これはただ指示を出せばよいわけではなく、オーナーシップに対するオーソリティーが社内で認識されていることが重要です。

だから、僕自身も意図的に、「このプロジェクトは俺がオーナーになる」と決めたら、ものすごく頑張ります。そうすることで、オーナーシップを持つことに対するヒリヒリ感が出て、他の社員もオーナーシップを取る際に、自律的にやらざるをえなくなる。期限の中で、責任をもって自分が動かない限り進まない、という状態を経験させておくことは重要だと思います。

前編記事はこちら
後編記事はこちら

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ENVISION編集部

変化の兆しをとらえ可視化することをテーマに、インフォバーンの過去から現在までの道のり、そして展望についてメンバーの動向を交えてお伝えしていくブログ「ENVISION」。みなさまにソーシャル・イノベーションへの足がかりとなる新たな視点をお届けしてまいります。