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「消費者」に代わる、新しいキーワードを考えよう

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こんにちは。インフォバーン取締役の増田です。消費税は予定通り、来年4月に引き上げられそうですね。8%になると、計算や小銭の準備がまた大変なことになりそうです。

さて、今回のテーマは「消費者」です。より正確には「消費者」という言葉について。いろんな場面で、当たり前に使われている言葉ですが、個人的には、ずっと違和感を感じています。

まずは質問です。あなたは「消費者」ですか?

答えは、全員「Yes」ですね。このコラムを読んでいる人のほとんどは、生産者であり、同時に「消費者」です。もちろん私も「消費者」の一人。ちなみに「消費者」を辞書で調べると、

1 商品・サービスを消費する人。

とあります。さらに「消費」を調べると、

1 使ってなくすこと。金銭・物質・エネルギー・時間などについていう。
2 人が欲望を満たすために、財貨・サービスを使うこと。

となっています。まとめると消費者とは、「自分の欲望を満たすために、金銭・物質・エネルギー・時間などを、使ってなくす人」です。なんだか、イヤな感じの説明ですよね。「欲望を満たすために」「使ってなくす人」って…。皆さんは、そういう人ですか?

 

「モノ」は買っていないけど、お金は使っている

最近、消費者について、とても興味深い記事が2つありました。1つは、日経ビジネスオンラインに掲載された記事。

リアル「日本人消費者」は、15年でこんなに変わった 生活者1万人調査で見える「誰が、なぜ、何にカネを使っているか」

野村総合研究所が、1997年から3年ごとに実施している消費動向調査の最新の調査結果を紹介した記事です。詳しくは、元の記事を読んでいただくとして、興味深いフレーズをいくつか紹介すると、

デフレの20年間で日本人は消費をしなくなった、とよく言われますけど、実際にはしっかりとお金は使っているんですね。
「モノ」はあまり買ってはいないかもしれないけれど、日常生活にはお金をかけているし、むしろ人づき合いとか体験、思い出などへの投資額は、若い人中心に増えています。
自分の気に入ったものには惜しまずお金を使うというスタイル、「プレミアム消費」と呼んでいますが、これが97年から現在まで一貫して比率が増えてきているんですね。

もう1つは、日経BizGateに掲載された

だから、そのプロモーションは失敗する

こちらは、企業のマーケティング担当者が抱きがちな勘違いを指摘し、新商品や新サービスのプロモーションを企画する際には、「1人の消費者としての消費者感覚」を持つことの大切さを述べています。

記事の内容に100%同意したうえで、さらに私が思うことは、「もう消費者という言葉そのものを使うべきではないのでは?」ということです。

前述した日経ビジネスオンラインの記事でも「プレミアム消費」という言葉や、あるいは、モノを買うのではなく、旅行や人付き合いにお金を使い、自分の人間力を高めていく行為を「コト消費」と呼んでいます。

しかし、こうした行為はそもそも「消費」ですか? 自分の人間力を高めていく行為は、消費ではなく、投資と言えます。ならば、「コト消費」をする人のことは「消費者」でなく、「投資者」と呼んだ方がより素直ではないですか。

なんだか、細かい言葉じりを捉えて、屁理屈を言っているような気がしてきましたし、「物事の本質を捉えていれば、言葉なんてどうでもいい」という意見も聞こえてきそうですが、私たちは言葉を使って物事を考えます。前回のコラムでは、京都支社長の井登が、

ユーザーにとっての“理想の世界”を可視化し、チームで共有しよう!~「デザインクライテリア」を用いた共通言語のつくり方【後編】~

と題して、デザインクライテリアを用いて、プロジェクトの「共通言語」をつくることの大切さをお伝えしましたが、新製品や新サービスの開発をスタートさせる際に、普段、何気なく使っている用語やキーワードなどを見直してみてはいかがでしょうか。

 

「消費者」に変わる、素敵なキーワードを

そこで、今回はひとつ提案です! 「消費者」に変わる、素敵なキーワードを考えませんか。

「消費者の行動や意識が変わってきている」と認識しているのであれば、もう彼ら・彼女らを「消費者」と呼ぶこと自体を止めて、新しいキーワードで呼びませんか。少し、大袈裟に表現するならば、言葉を変えることをキッカケにして、考え方や発想の「OS」を時代にあったものにバージョンアップしよう、というわけです。

『じゃあ、お前は「消費者」に変えて、どんな言葉を使うのか?』。早速、そんな質問が聞こえてきそうですが…難しいですね(笑)。新しいOSを作ろうというわけですから、そう簡単ではありません。

でも、1つ思い切って発表すると、たとえば「フィニッシャー」という言葉はどうでしょうか?

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フィニッシャーというと、オフィスのプリンターのオプションみたいですが、私が「フィニッシャー」という言葉を選んだのは、製品やサービスを考える時に思い浮かべる相手のことを、製品やサービスを「使ってなくす人」ではなく、製品やサービスを「仕上げる人・完成させる人」として考えよう、という意味を込めてです。

さらに言えば、新しい製品やサービスができあがる工程を考えると、企画→設計→製造→流通→販売となります。そして、販売からのフィードバックが、また企画に生かされ、このサイクルが続いていくわけですが、製品やサービスを「消費者」に提供して、「使ってなくしてもらう」のではなく、このサイクルの中に旧来の消費者を、『自社の製品やサービスを仕上げる人・完成させる人』として取り込んで考えようという意味もあります。製品やサービスって、誰かに使ってもらってはじめて、その目的が達せられるわけですから。

我々が考えるべきは、消費者ではなく、我々の製品やサービスを「仕上げてくれる人」「完成させてくれる人」のこと。どうでしょうか?

ほかには、製品やサービスを最後に託される人なので、「アンカー」とか。「アンカーにしっかりバトンを渡して、ゴールをめざしてもらおう」と考えると、製品開発やサービス開発のシーンも、ちょっと違ったものになりそうな感じがしませんか。

「フィニッシャー」「アンカー」…。素敵なキーワードとは言えないのがマイナスポイントなので、ぜひ、皆さんにも考えていただければと思います。

というわけで、今回のコラムは、フィニッシュ! ありがとうございました。

masuda_ib

1964年生まれ。1986年3月、同志社大学法学部卒業。同年4月、広告制作会社に入社。コピーライター・ディレクターとして広報誌、SPツールなどの企画・制作に携わる。2004年1月、株式会社インフォバーン入社。2005年、ソリューションビジネスカンパニー長に就任。2006年、メディアソリューション部門長に就任。2008年、制作部長に就任、現在に至る。