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オウンドメディアのためのインフラ選定、6つのポイント【前編】

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こんにちは。インフォバーンの執行役員でProduction & Operating 部門長の磯和です。Webディレクションユニットと、Webデザイン&デベロップメントユニットを統括しています。

今回は、企業がオウンドメディアを運営していくうえで必要となる、サーバーを始めとしたインフラを導入する際のポイントについてお伝えしたいと思います。長くなりますので、前編・後編に分け、2週にわたってお届けします。

読者としては社内の情報システム部門やIT部門からの支援が十分得られない状況で、Webサイトを運用するためのサーバーを自分で、主体的に検討する必要がある方などに丁度よい内容ではないかと考えています。

まず、インフラ選定のポイントを先に並べてしまうと、以下の6つになります。

  1. 長く付き合えるサーバー・インフラを選択するには
  2. クラウド系サーバーの分類について
  3. クラウドが台頭する理由とオウンドメディア運用に向く理由
  4. クラウド利用における注意点
  5. クラウドに関する注意点を克服するには
  6. 長期的な運用のために

この6つのポイントは、同時にこの記事全体の構成です。今回は1〜3までをご紹介します。

 

 

1.長く付き合えるサーバー・インフラを選択するには ~「VPS」から「クラウドへ」

皆さんは何らかのサービスやサイトをWebで運営する際、どういった基準でサーバーやネットワークを選択されるでしょうか。

安定性、拡張性、パフォーマンスなどいろいろな選択肢があるかと思いますが、ことオウンドメディアを始めるといった場合には、「会社の利益にどれだけ貢献するかすぐにわからないものに多額のコストはかけられない」という話をよく聞きます。そのような前提が想定されるなか、 最近よく選択肢にあがるものとして「クラウド」があります。

以下、これまでに選択されてきた「レンタルサーバー」「VPS」といった選択肢と何が違うのかにも触れつつ、クラウドの採り入れ方について紹介できればと思います。

まず弊社の話をさせていただくと、弊社でも以前は自社Webサイトの運営をVPSで行っていました。

VPSはVirtual Private Serverの略で、物理的なサーバーの中に仮想的なサーバーをいくつも構築し、その一つひとつが物理的なサーバーを専有しているかのごとく扱えるサーバーです。さくらインターネットの提供する「さくらのVPS」を始めとして、安価なサーバーとして現在でも非常に普及しているスタイルかと思います。しかし、あるタイミングでアクセス増に伴う負荷オーバーによるサーバーダウンを経験し、昨年AmazonのAWSに移行を行いました。

AWSへ移行を行った理由は以下の通りです。

  • サーバーのスペックアップがしやすい
  • 監視やバックアップを含めたトータルの運用コストが相対的に安くなるという試算ができた
  • 世のトレンドとしてAWSが普及しつつあった

 

VPSは一般的に手軽に専有的なサーバー環境を手に入れられますが、メモリやCPUを増強することは難しいため、アクセス数が上昇傾向にあるサイトを運用していくのに適しているとは言いがたい環境です。

たとえお金を支払ってでも、もっとランクの高いサーバーに移行したいと思っても、契約の新規追加となり、サーバーの建て直しから各種アプリケーションの導入、そしてデータのインポートまでやり直しが必要となるケースが大半です。

一方クラウドでは、上で述べたようにサーバーの増設やスペックアップは簡単に可能です。また、構成の仕方次第ではサイトの停止をせずにスペックアップを行うこともできます。

オウンドメディアでは、自然増ではない形、たとえばプレスリリースがニュースポータルに掲載される、ソーシャルで記事が拡散される、といった理由で短いスパンでアクセスが増加するケースも多々あります。

こういった流動的な状況に対応するのに、極端な話ですが1時間だけサーバーを増強してまた元に戻す、といった芸当が可能なクラウドの環境は、ネットの使われ方のトレンドにうまくマッチしているのではないかと考えます。
※具体的な違いの詳細は「レンタルサーバーとVPSそしてクラウド」(SlideShare)といった資料がわかりやすかったので紹介しておきます。

しかし、どんな場合もサーバーはクラウドにすればよいのかというと、そうではありません。次に、クラウドで提供されるサーバー環境にどんなものがあるか、という点と、クラウドを利用する際の注意点について触れたいと思います。

 

2.クラウド系サーバーの分類について

クラウドと一言で言っても、インフラレイヤーだけを提供するIaaSから特定のアプリケーションを利用することに特化したSaaSまで各社幅広くラインナップが存在します。

IaaSの代表格としては先に触れたAmazonのAWS 、PaaSの例としてはMicrosoftのWindows Azureで提供される「Webサイト」機能、SaaSとしてはsix apart社の提供するMovable Type EZなどがあげられるでしょう。

もっとライトな選択肢としてはTumblrに独自ドメインを設定して運用するといったケースもSaaSの一種と考えられますが、今回は検討外とします。
※IaaS、PaaS、SaaSの違いについては「結局SaaS、PaaS、HaaSって何さ?」(ITmedia)などをご覧ください。

これらの中で、いわゆるLAMP環境に慣れたエンジニアや管理者が社内におり、自社のカスタマイズ基準や管理基準があるような会社であれば、AWS のようなIaaSがリーズナブルな選択となるでしょう。

逆に、とりあえずサーバーのことはあまり気にせずコンテンツを投入したいなら、six apartのようなサービスを使ってもよいでしょう。社内でWindowsベースのサーバーが稼働しており、Windowsとの親和性が高い環境であれば、Windows AzureでWordPressを運用するといった選択も可能です。

上記のそれぞれのサービスで何がどう異なるかについての詳細は省きますが、傾向としてはIaaSは、自由度が高い反面、セキュリティなど自己責任で対応するべき範囲も増え、PaaS、SaaSとレイヤーが上がるにつれて手軽にサービスを利用できる分、制約も増えてくる、ということは言えるでしょう。

逆に言うと、提供したいコンテンツやそのための仕組みが制約条件と被らなければ、SaaSの方がより手軽に導入できる選択肢となり得ると言えます。

 

3.クラウドが台頭する理由とオウンドメディア運用に向く理由

ここまで見てわかるとおり、数年前までWebサイトのスモールスタートで定番とされていた、レンタルサーバー、ホスティングサーバーと呼ばれている環境は、今や時代遅れとも言えるような扱いを受けています。

もちろん後述するようにクラウドも万能ではありませんが、少なくとも以下のようなメリットがあるのは確かですので、時代のメインストリームがクラウドに移行しても致し方ないかなというところです。

柔軟
AWSに代表される例ですが、サーバーやネットワークに求められるメジャーな要素や検討課題の多くに対応できるメニューがあったりします。

またSaaSの場合はサービス単体では一定の制約があったとしても、IaaSやPaaSとレイヤーをまたがった選択肢が存在している状況のため、それも含めて「柔軟」ということが言えるのではないでしょうか。

素早く対応できる
ネットで申し込みできるような仕組みは、10年前から存在しているかと思いますが、先に述べたサーバーの性能アップや追加などの手軽さも含めて考えると、運用上の都合で何かしたい、と思った際にすぐ対応できるのもクラウドの良さだと思います。

安い(ことが多い)
上記の柔軟さやスピード感を考慮した場合に、総合的に見てコストが安いのもクラウドの特徴です。

過去の安価なASP系サービスやインフラベンダーの場合、低価格=安かろう悪かろう、という側面が目立つのが一般的でしたが、現在のクラウドでは格安なプランから始めて、ユーザーが集まったら段階的に(あるいは無段階的に)サイトを拡張することが可能で、安いプランはリソースが限定されているだけで機能面に大きな違いがない、という点が評価されていると私は考えます。

なお、以上の要素は、オウンドメディアの運営を考えていくうえでも非常に相性の良い特性と言えます。

短い期間でのPDCAで施策を柔軟に変更し、展開規模が大きくなればそれに合わせてインフラを拡張していく、というオウンドメディアの成長サイクルは、クラウドのようなインフラ環境があってこそのものと言っても過言ではないでしょう。

では、オウンドメディアにおけるインフラは、クラウドにすればOKなのか? 実はそう単純な話ではありません。クラウドの注意点、そしてそれをクリアする方法などを、次週ご紹介します。

太郎磯和

執行役員/プロダクション部門 部門長。日本情報通信にてSEとして大規模イントラネット構築、システム導入コンサルなどを担当後、ITベンチャーであるイエルネットに参加、ジェネラルマネージャーを務めモバイルを中心としたWebソリューションを多数手がける。音楽業界での経験やフリーでのWebディレクターとしての活動などを経て、2012年インフォバーン入社。テクニカルディレクターとして独自サービスの展開や企業のメディア化を技術面から支える。