閉じる

2018.9.28

ユーザー視点+未来の視点からイノベーションを生むデザイン(後編)

8月29日に行われたセミナー「強度の高い仮説による『この世にまだない価値』のデザイン」。前編では、現在求められる製品・サービス開発におけるエクスペリエンスデザインや、仮説を検証する視点をお届けしました。後編では、その実践の様子とクロストークの模様をお届けします。

「IDL Future SEEking Program」、2日間での挑戦

2名のプレゼンテーション(前編参照)に続いて「IDL Future SEEking Program」を展開するSEEDATA岸田卓真さんとIDL辻村和正が、SEEDATA×IDLチームでサービス立案までおよそ2日弱でプロトタイプ作成まで行った結果を共有しました。

IDL Future SEEking Programのプログラム

 

プログラムは全部で6ステップ。通常は4~6週間程度で仮説検討からプロトタイプ作成まで一気に実施し、市場評価を行います。

(STEP1)デスクトップリサーチなどを実施し、テーマの現状を確認
(STEP2)生まれた仮説をもとにトライブレポートをピックアップし、未来の視点(トライブ)から仮説を検討
(STEP3)それまで見えてきたユーザーのニーズを埋める形でサービスのコンセプトを検討
(STEP4)そこで生まれたサービスの種を、サービスブループリント(*1)などを利用し強化
(STEP5)プロトタイプを作成
(STEP6)仮説検証を行う

今回は、テーマを「食事体験、飲食」として業種や事業のステータスなどの条件を仮設定。設定した仮説を成長させていく形でプロジェクトを進めていきました。

株式会社SEEDATA マネージングディレクター 岸田卓真さん(写真左)
INFOBAHN DESIGN LAB. デザインディレクター 辻村和正(写真右)

 

STEP1 デスクトップリサーチで見えてきた、新しい食事の仮説は「食が効率化の方向に向かっている?」というもの。それをもとにSTEP2でピックアップしたのは、SEEDATAの60以上あるトライブリサーチから「フューチャーショッパー」と「ドクターシューマー」というトライブです。

そして、この2つのトライブのコメントを観察してみると、2つの仮説が見えてきました。

ピックアップした「フューチャーショッパー」「ドクターシューマー」

 

1つ目は「意思決定の外部化」という仮説。たとえば「フューチャーショッパー」のレポートの中で、あるユーザーは「買うものを選ぶことすら面倒」という理由から、Amazon DASHボタンを利用しています。

2つ目は「義務食(必要な栄養を取らなければいけない食事)と余暇食(楽しむ食事)に分かれてきている」。「ドクターシューマー」のレポートの中で、あるユーザーは「完全栄養食『COMP』を朝・夜食し、昼はとんこつラーメンを食べる」と発言。これは、最低限の栄養は手間をかけずに摂取し、好きなものは選んで食事をする表れではないかと推察されると言います。

この2つの仮説をもとに、その仮説が求められるタイミングについてアイデアラッシュを行った上で、ユーザーのJOB(本質的にやりたいこと)とペルソナを作成しました。

今回のサービスにおけるペルソナとJOB

 

STEP4のサービスの企画段階では、このペルソナがJOBを完遂するシーンはどこであるかを、カスタマージャーニーを描きながら検討し、そこで重要となる瞬間(キーモーメント)を設定。そのシーンで生まれるユーザーの行動や思考を考慮しながら、サービスの利用シーンやコンセプトを作り上げました。

MVSで設定した2つのストーリー

 

そうして生まれた「モグメント(MOGMENT)」というサービス。ユーザーの空きスケジュールに合わせて、適切なタイミングで適切な食事を取ることのできるスマートフォンアプリです。

プロトタイプを作成するにあたっては、ユーザーがモグメントを求めるタイミングのシナリオを2種類用意し、それをもとにMVS(Minimum Viable Service)としてアプリを作成。仮説評価可能なアプリとしてイベントの場でお披露目しました。

STORY2のシナリオをもとにMVSで作成したアプリの画面と利用シーン。ランチ時間が30分しかないときに近くの最適なお店の提案から戻りの時間まで教えてくれる

 

(*1:サービスユーザー以外のステークホルダーにとっても価値が最適化され、エコシステムが成立している状態を検討する可視化のためのツール)

 

現場では、未来のきざしをどう見つける?

最後は富士通デザインのデザインディレクター 坂口和敏さんを交え、3つの問いでクロストークを展開しました。

富士通デザイン デザインディレクター坂口和敏さん(写真右)

 

最初の問いは「まだないものを考える上で、最初に考えること、やることは何?」。

坂口さんは「ステークホルダーとのイメージ共有」と答えます。富士通デザインでは、このステップを、富士通独自のツールである「エモグラフィ(感情表現記法) 」を活用し、持っているイメージを最大限に外化することに務めるそうです。

ファシリテーターの井登も「人に依存しすぎないことは非常に重要」と指摘。「天才デザイナーは、抽象度が高いテーマを高いままアウトプットできる。しかし、現実はチームでやる必要がある。抽象度の高い物を具象化、それをまた抽象度を高くする デザインを民主化していく行程。あえて集めなかった情報を集めていく」

2つ目の問いは「やる意味があるか否かの根拠を示せ!という経営層に対して何というか」。

「“確信”と“確証”で対応する」と宮井さん。確信は自分の中でこれがいいと思う「内的な確信(confidence)」、確証は周囲からこれがいいと言われる「外的な確信(confidence)」を指します。あくまでも順番は確信→確証の流れと言い、「逆だとべき論になってしまう。本人がいいと思っているかがあくまでも大事」。

一方で定量的なアプローチとのバランスも大事だと、坂口さんは話します。ご自身の経験談では、「UXと定量的なボリュームゾーンを説明することで納得してもらうことが多い」と言います。

クロストークから参加者との質疑応答へ

 

最後、3つ目の問いは「過去の延長線上で未来を考えるのと、過去とは違った文脈で考える境目はどう察知する?」。

坂口さんは線引きが難しいとしつつも「過去の延長線上で未来を考えることは人間中心設計を利用して、過去とは違った文脈で考えて、意表を突くきざしを発見するのはトライブを利用するイメージ」と答えました。

宮井さんは、神戸大の栗木契教授が提唱する“局所的秩序”を引き合いに出し「局所的秩序、つまりPDCAが見えない場合は過去から洞察できない。なので、アーティスティックな考え方や秩序を作っていかないといけない。企業の場合だとルーチンがあるかどうか。ルーチンで対応できるのでは」と答えました。

◇◇◇

2時間強にわたる思考のドライブ。強い仮説を導くための背景、そしてチェックポイント、事例や実践者たちの経験則など、さまざまな領域にわたって思いを巡らせる時間となりました。

井登は最後の締めの言葉として、「イノベーション」をはじめて提唱したヨーゼフ・シュンペーターの言葉を用い、イノベーションの重要性を説きました。いわく「Disruptionは破壊ではなく『攪乱』。市場を攪乱するものが、いずれ意味を持つことになる」。

今の延長線上ではなく、まったく新しい価値からイノベーションを起こすためのプログラム「IDL Future SEEking Program」。ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

 

CHANNEL IB TOP