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【海外事例】良い顧客体験とは何か? 3つのブランドの挑戦と成功事例

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近年ブランドは、テクノロジーや顧客の生活スタイル・環境といったさまざまな変化により顧客体験の改革を迫られ、時代に適応して生き抜くために計画を見直し続けてきました。ですが実際には、顧客を見極め体験を再設計したうえで実行し効果を出すことは容易ではなく、既存のシステムの見直しといった問題から組織の再編に至るまで多くの障害があるとされています。本記事では多くのブランドのそんな試行錯誤のなかから、海外の成功事例をいくつかご紹介します。

リピーターが生まれにくい商品だからこそ真っ先に取り組んだ顧客体験の数値化と改善 : Taylor & Hart

「Taylor & Hart」のキャプチャ
screenshot: https://taylorandhart.com/

店舗とオンライン相談の両方のチャネルを持ち、オーダーメイドで婚約指輪を製作するビジネスを展開している「Taylor & Hart」は顧客体験を計測し改善した成功例として注目されている企業です。

いうまでもなく、婚約指輪という商材は人生で何度も購入するものではありませんし、オンラインで購入することには抵抗がありそうな商品です。しかし同社はその壁を打ち破るために、「既存顧客の満足度を高め、クチコミで別の顧客を紹介してもらう」ことを方針としたのです。

そのためにはまず、既存の顧客満足度を最大限に高める必要があると考えました。そこで注目したのは顧客のフィードバック。具体的には、売上を上げるためにネットプロモータースコア(NPS)を毎日報告する指標に定めて取り組みました。取り組みをスタートさせたときには、多くのユーザーがTaylor & Hartで指輪を購入することを躊躇しているということが判明したそうです。その後、NPSのチェックポイントとして、商品の注文時と商品の配送時の値を重要視した運用と改善活動を開始。オフィスにはNPSの値や売上・収益がダッシュボードで表示されるようになっており、その活動の成果はなんと年間収益の2倍となる450万ユーロになったと公表されています。

また、既存顧客からの口コミを増やすタッチポイントとしての広告においては、2020年の秋にイギリスで行われた「LoveisNow」キャンペーンが話題になりました。

Instagram: https://www.instagram.com/p/CHfukDKld4A/

カメラマンが遠隔地からFacetimeを使って顧客のカップルを撮影し、その印象的なシーンをキャンペーンビジュアルに登用したのです。SNSから屋外広告まで展開されたその幸せな姿には多くの人が魅了されました。そしてキャンペーンに登場したカップル(もちろん同性カップルも当然のように登用されています)のストーリーは彼らの周囲にクチコまれたことはもちろん、サイトやSNSでもコメントやシェアが多くされることになりました。

顧客体験の基軸を店舗から対話型コマースに転換し活路を見出した : Credo

vimeo: https://vimeo.com/405156965

今注目の「クリーンビューティ」の権威を標榜している米国の美容ブランド「Credo」は、他のブランドと同じく新型コロナウィルス感染症の拡大により、実店舗が閉鎖を余儀なくされたところから顧客体験の見直しが進みました。

その中心を担ったのは、当時機能としては既に存在していた「Credo Live」でした。この機能を使えば、顧客は販売員とオンラインのビデオ通話で相談を行い、個別のアドバイスを得ることができます。従来のオンラインショッピングにパーソナルな要素を加えて、似合う色や商品に関する質問など、ひとりひとりにマッチさせた体験ができるようにすることを狙いました。

この「Credo Live」は以前店舗でカウンセリングをしていた美容部員や人気の美容部員を選ぶことができることも特徴で、社会課題に対応しているブランドの先進的なイメージも相まって、その理念を十分に理解している美容部員と顧客が共感や感情でつながることができている好例と言えるでしょう。現在、CredoのInstagramは20万人以上のフォロワーがおり、フォローワー数だけでなく業績においてもこのパンデミック下で成長を続けられている企業として注目されています。

たったひとりの顧客体験が波紋を呼び、ブランド認知度を増幅させた:Tommee Tippee

twitter: https://twitter.com/tommee_tippeeFR/status/799269943795585024

幼児とその家庭にフォーカスしたブランド「Tommee Tippee」は挑戦的な取り組みを行いました。彼らは多種多様なデザインのベビーマグやベビー関連商品を展開しているブランドですが、たったひとりのために商品開発を行った伝説的な事例は2016年に起こりました。

はじまりはひとりの父親によるTwitterでの投稿でした。

そこには彼の子供のBenが、特定のTommee Tippeeのベビーマグでしか飲み物を飲まないため代わりの品物を探していること、そのベビーマグが何年も前に製造中止になっていること、そのベビーマグでないからと脱水症状で入院したことすらあること、そしてBenが自閉症であることが書かれていました。

これを知ったTommee Tippeeのスタッフたちは、ソーシャルチームでの追跡を行ったりユーザーからの報告に対応したりするだけでなく、世界中の店舗や在庫から同じ形やカラーのものがないか捜索をはじめました。その活動には「#cupsforben」というタグがつけられSNS上でユーザーを巻き込んで話題になりました。さらにその捜索過程において、工場では元のカップを作るための道具がまだ保管されていることも判明したのです。

Benのために、世界中からそのタイプのベビーマグがたくさん集まったと同時に、数量限定で生産されることも決定しクリスマスプレゼントになるというハッピーエンドを迎えることができました。

この「#cupsforben」というタグには何千ものいいね、2万回近くのリツイートやバイラルが生まれ、ついにはニュースとしても取り上げられました。それによってTommee Tippeeのブランド認知度は上がり、意図せずとも大きな宣伝効果が生まれたのです。それも元はと言えばTommee Tippeeがソーシャルチャネルに注意を払い、顧客のフィードバックを真摯に聞いたことがはじまりでした。

このように、たったひとりの顧客のためだけに生産ラインを動かすことはかなり珍しいことですが、そのアクションも含めてブランドイメージを強固にするための強力なストーリーになったことは言うまでもないでしょう。

良い顧客体験を生み出すためには、ブランドと顧客の対話が重要に

「顧客体験はどうあるべきか?」というテーマは、近年常にビジネスやコミュニケーションにおいてなかなか答えの出ない難問として取り上げられます。というのも、今回の事例に見るようにブランドごとに置かれている状況はさまざまですし、計画的に行われた例もあれば偶発的な例もあり、ビジネスを強くする顧客体験を設計することはかなりの時間と労力を割くことになるでしょう。

ただし今回の事例

  • 顧客体験の測定と改善
  • 環境の変化による顧客体験の再設計
  • 顧客体験のストーリー化

における共通点はブランド側が理念やパーパスを強く持っていたことです。その結果生み出された顧客体験はとても自然で受け入れやすいものでした。そしてだからこそまだ顧客でない人々の心すらも動かすほどの影響力を持てたのではないかと考察します。このように「ブランドと顧客の対話」が生まれることが、良い顧客体験の目指すものになるのではないでしょうか。インフォバーンでは、そんな対話が生まれるような顧客体験の設計を目指しています。ぜひご相談くださいませ。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

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