ホーム ブログ 【海外事例】フェアな情報開示は...

【海外事例】フェアな情報開示は、従業員や取引先、求職者との良い関係を構築する

記事「【海外事例】フェアな情報開示は、従業員や取引先、求職者との良い関係を構築する」のメインアイキャッチ画像

従業員やビジネスパートナーと平等で誠実な関係を築くことは、良い社会を作る上で非常に重要なことです。一方が搾取するようなアンフェアさは企業やブランドのイメージを非常にネガティブなものにしてしまいます。逆に言うとそこにフェアな活動があると、その企業の印象も良くなるということではないでしょうか。そのためには、まず企業が行う従業員に対する取り組みや、パートナー企業との関係性について丁寧に説明することが必要です。本記事では、従業員やビジネスパートナーと良い関係性を構築できている海外事例をご紹介いたします。

サプライヤーにも積極的に関与するサステナブルレポート:Levi Strauss & Co.

ジーンズで有名なアパレル企業「Levi Strauss & Co.」では、サスティナブルレポートのWebサイトを立ち上げています。サスティナブルなものづくりの方法を開示していることに加え、これまで業界でタブーとされていた提携工場の情報を公開するという、かなり革新的なものです。

例えば日本の東京・三鷹市にある工場のデータを見ると、住所や生産している商品のタイプに加え、労働者の総人数と女性の割合(約80%)、外国人労働者の割合(約4%)などを公開しています。

この活動は2013年の「ラナプラザの悲劇(バングラデシュ・ラナプラザの縫製工場が崩壊し1,000人以上の従業員が死亡した事件。若い女性たちが危険かつ不平等な労働を強いられていたことが発覚し、これを機にファッションアパレル業界での労働の実態が問題視された)」に端を発するようです。
(注:Levi Strauss & Co.は、倒壊した工場に発注はしていない)

この事件の後、バングラデシュでは「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定」が定められました。欧州のアパレルメーカー222社のうちの一企業として、Levi Strauss & Co.もこの協定に署名。その後自主的に労働者の安全を守る活動の一環として、長期に渡り自社の工場の情報をWebサイトに掲載しています。これにより、不公平で不健全な取引状況が存在すれば社会的な監視の目に晒されることとなり、アンフェアな労働環境を防ぐと考えられています。

また、Levi Strauss & Co.は「Worker Well-being initiative(労働者の幸福イニシアチブ)」というプログラムを取り入れ、自社の従業員だけでなくサプライヤーとなる取引先の工場で働く人々からも意見を取り入れる活動をしています。

2016年の時点で報道された内容によると、2011年にバングラデシュ、カンボジア、エジプト、ハイチ、パキスタンで最初にこのプログラムを試験的に実施した後、29,500人から合計97,500人の従業員に対して12か国でプログラムを実施したということです。

この活動の目標は、2020年までにリーバイス製品の80%がプログラムを実施している工場で生産され、2025年までに30万人の労働者がその恩恵を享受することと定義され、2020年には約20万人の下請け会社や工場の労働者がWorker Well-being initiativeに参加しています。

このほか、2020年のサスティナブルレポートのWebサイトでは、気候、消費、コミュニティーの3つのテーマを軸に、「Key Goal(鍵となる目標)」として何をいつまでにどのぐらい達成するのか、「Progress(これまでの成果)」として目標に対して過去どのぐらい達成できたのか、をそれぞれ具体的な数字をあげて報告しています。

情報の透明性をベンダーへと拡大して、味方につける:Zappos.com

「Zappos.com」は米・ラスベガスに本社を構える靴の通販会社で、この会社を有名にしたのが、ホラクラシーという組織管理システムです。これは、従業員に対しての公正性や自主性を重んじるため、上司や部下という階層構造を無くした制度です。この制度には社内でも反発があり、18%の人が辞めたという時期もありました。そのような動きも含めて働き方や雇用に対し一石を投じ、革新的な会社であるというイメージを持たせることに成功しました。

このホラクラシー組織システムのほかにも、Zappos.comは従業員に多くの情報を開示する動きと合わせ、ベンダーが同社の情報にアクセスできる「the extranet」を導入しました。同社のコアバリューのひとつは、「オープンコミュニケーションによる正直な関係の構築」です。そういった理念から、ベンダーにも同社のビジネスを可視化するためにこのthe extranetは構築されました。

小売業では通常、バイヤーは価格設定や売上高などの情報を秘密にし、交渉を行っています。これによりベンダーから商品を可能な限り安く購入でき、バイヤーは多くの利益を得ることができます。

Zappos.comはこのような利益を諦めて、在庫レベル、売上、収益性を含めた情報をすべてベンダーに開示することをthe extranetで実現しました。ベンダーがZappos.comのビジネスについて知ることで、より多くの信頼や健全な関係が築かれ、最終的にはより高い利益を生み出すと考えたからです。

結果、公正な価格でZappos.comに製品を販売できると考えるベンダーとの取引量が増え、Zappos.comは他社よりも優れた商品のラインナップを提供することが可能となったのです。

女性の活躍に徹底的にフォーカスして情報発信する:Capgemini

フランス・パリに本拠を置き、世界50か国以上で事業を展開する欧州最大の技術系コンサルティング企業「Capgemini」は、多様性にアピールし優秀な人材を雇用するために、女性社員やその活動に関する情報発信を積極的に行っています。

女性の活躍を支援する外部サイト「Where Women Work」では、企業ページを開設し積極的に女性についてのニュースや活動報告を行っています。

自社の女性社員の活躍や女性に関する支援事業のニュースはもちろん、若い発明家の少女にSTEM教育に関してインタビューを行うなど、話題は多岐にわたります。そのほか女性役員の紹介ページなどもあり求人への積極的な導線を作り応募も促しています。

このようにCapgeminiは女性に関する話題作りが得意な企業と言えるでしょう。Capgeminiのサイトでは、女性に関するニュースは豊富に存在します。

2021年には、コロナ禍においても、インドの農村に暮らす女性のITスキルを開発しキャリアを構築する長期的な支援を行っていることを公開。

2022年にはタイムズ紙の女性雇用主上位50社に選ばれました。その記事のなかではいくつも取り組みが紹介されていますが

  • ジェンダーバランスを考慮してリーダーの後継者計画を立てる
  • 160人の女性に外部トレーニングを投資を行ない、取締役会で発揮できるリーダーシップ スキルを開発
  • 医療サポートを提供するアプリを立ち上げ、医師などの専門家によるサポートを受けられるようにする

など、ポジションからビジネススキル、生活まで多様なサポートを用意していることが注目されています。

このように積極的に活動を行ないつつ、女性にフォーカスした徹底的な情報発信をする姿勢は、タイムズ紙だけでなくさまざまなメディアや団体から評価されることにつながっているようです。

従業員も取引先も求職者も。人と関係性を築く秘訣は変わらない

雇用や取引に関してフェアであることは、企業のイメージアップに繋げられることは想像に難くないですが、やはりそこに一貫性や徹底ぶりがないと注目されにくいかもしれません。ただし、そのエビデンスがあれば、さまざまな仕組みやデジタルならではのタッチポイントや表現方法でじわじわと浸透・拡散させることは可能です。情報を丁寧に伝えていくことで、企業やブランドに対する信頼を着実に積み上げていくことが関係性を築く秘訣ではないでしょうか。一貫したストーリーをもとにデジタルでの多様な情報発信に私たちは長けています。そんな企業のストーリーづくりやコミュニケーションでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

IBXの最新情報や、マーケティングトレンド、コンテンツに関する話題をお届けします。