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【海外事例】企業によるサーキュラーエコノミー実践とそのコミュニケーション手法

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近年、非常に注目のテーマとなっている資源循環やサーキュラーエコノミー。これらを通して、ビジネスの仕組みを根幹からシフトさせつつ、その伝え方も工夫しているブランドやプロジェクトについて見ていきましょう。企業が社会課題に取り組もうとするとき、ユーザー目線でわかりやすく情報発信を行えば、その活動に共感したファンが生まれていくことでしょう。本記事では3つの事例をご紹介します。

永続的にリサイクルできるランニングシューズと、製品を支えるコミュニティ:adidas

Twittert:https://twitter.com/adidasrunning/status/1314958951100878855

ランナーにとってシューズは、使い込んで機能が果たされなくなってしまえば買い替えるしかないもの、いわば「使い捨て」になってしまう道具です。そこに着目したのがこのプロジェクトです。

「ULTRABOOST DNA LOOP」は、スポーツ用品メーカー「adidas」が発表した、リサイクルを前提として作られたシューズです。

2019年4月に行われた第一世代シューズの「Gen 1 Ultra Boost DNA Loop」の試験提供ではクリエーター200人に対して製品が配布され、着用後、製品設計などに活用するために商品とフィードバックコメントの両方が回収されました。二回目の試験提供は、2019年11月に実施。回収された第一世代シューズから生成された再生TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)を使って、第二世代の試用品が開発されました。

そして、2020年にはアディダスの会員向けオンラインイベント「クリエーターズ・クラブ・ウィーク(Creators Club Week)」にて、本格的な製品として「Ultra BOOST DNA LOOP」が発表され、1,500 人のメンバーには無料でシューズが提供されました。このクリエーターズクラブはサステナビリティをテーマにしたマイクロコミュニティ。つまり真のオープンソース方式でブランドと共同制作を行なったという事例なのです。

これらはadidasの「Made to be Remade」プロジェクトの一環であり、プラスチック廃棄物の問題に対して、リサイクルされた材料を使用して、原材料を何度も再利用できる「クローズド ループ」または循環型の製造モデルを作成することを目的としています。

製造工程では、単一原料および接着剤のみを使うことで原材料の再利用を促しています。つまり、シューズのすべての構成部位の原料に100%再利用可能なTPUを糸やニット生地として使うほか、アディダス独自のミッドソール「ブースト(Boost)」部分の製造にもTPUを溶解・成型して使用しています。また、不要になった靴はadidasで回収され新しい製品の原料として再利用されます。

このプロジェクトの特筆すべき点は、単なるリサイクル可能な製品開発を行ったことではありません。共創できるコミュニティを作ったことにあるといえるでしょう。開発の過程を公表することで、adidasの透明性を伝えることができ、ユーザーを巻き込むイノベーションを行っているブランドであるということをアピールできました。また、クラブメンバーに無料で提供するという話題性や希少性も、adidasのブランド価値を高めました。製品開発から流通、価格、プロモーションといった、いわゆる「マーケティングの4P」を的確に抑えて中長期的に取り組んでおり、容易に真似できない事例と言えるでしょう。

ゴミとなったシートを使ってパートナーを巻き込み、社会課題を解決していく:Southwest Airlines

YouTube:https://youtu.be/WGevNl9txp4

アメリカの航空会社「Southwest Airlines」は、サーキュラーエコノミーを実践しブランドの評判を高めた事例を持っています。この動画ではSouthwest Airlinesがさまざまなパートナーと協力して、古くなった革製の航空機シート カバーとクッションなどを再利用した様子を描いています。

例えば航空機シートはアクセサリーや鞄などにアップサイクリングしています。修理中に取り外した 80,000 個の航空機シートを処分するのではなく、素材としてさまざまな団体に寄付し、高付加価値なファッショナブルアイテムに変えているのです。

これらは、2013年に始まった「Repurpose with Purpose」プログラムの一環で、2017年には約675,000 ポンドのシートカバーやその他の廃棄物が再利用されました。このプログラムには多くの社会的効能があり、ゴミを減らすだけではなく、革製品を作る際の水資源の無駄な使用を減らしたり、メキシコの女性、退役軍人、障害者、高齢者、人身売買の被害者、 など社会的弱者と呼ばれる人に対してビジネスや雇用を生むことにもなりました。

この事例は航空業界の専門メディアだけでなくイギリスの大手新聞メディアにも取り上げられ、かなりのPR効果が見込まれたとされています。

衝撃のフレーズ「おしっこから作られたビール」でシンガポール中の話題に:Brewerkz

Instagram:https://www.instagram.com/p/Cde5coGscVl/

シンガポールでは、国家水道局(PUB)と地元のクラフトビール醸造所「Brewerkz」が協力して、環境に優しい飲み物「NEWBrew」を開発しました。

このビールは、下水道の再生水を使って醸造されています。NEWBrewの発売キャンペーンでは、「下水を再生した水から作られたビールである」とアピールされていたのですが、それをいくつかのメディアが「おしっこから作られたビール」という見出しで取り上げたことで、Twitterを中心に拡散したのです。

シンガポールでは、元々水が不足しており、雨水を再利用しても使用分の50パーセントにしか満たないとのこと。その他の不足分はマレーシアなどから購入しており、下水を使った再生水の利用については、国家の一大プロジェクトとなっていました。PUBとしては、シンガポールの人に再生水に対する関心を利用し、その質の高さや水不足の問題解決についてアピールするためにこのキャンペーンを行っています。NEWBrewの発売、その一連のメディアの反応やソーシャル拡散はその目的を十分に果たしたといえるでしょう。

その注目度の高さから、2022年4月の発売以降、NEWBrewの最初の生産分はすでに完売しました。NEWBrewは、再生水95%、ホップ、麦芽、酵母5%で構成されており、製品の透明性も、SNSを使ってアピールされています。インパクトのある製品をつくるという一点で成功したわけではなく、外部メディアが取り上げたくなる「巻き込み方」を心得たプロモーションです。

サーキュラーエコノミーの実践には、情報発信が重要になっていく

サーキュラーエコノミーについての取り組みは、ビジネスの本質やその改革に踏み込む事柄であり、数年ないしは数十年単位といった長期期間で計画することが必要です。ただしその長期的な活動を支えるのは、企業の根気だけでなく、賛同者や共感を集められるような情報発信にあるのではないでしょうか。インフォバーンでは、プロジェクトの初期から参画することで、企業の想いや熱意を的確にとらえ、人々を巻き込むストーリーとして情報発信することを得意としています。ぜひお気軽にご相談ください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

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