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【海外事例】広告に欠かせない視点「女性のエンパワーメント」事例3つ

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女性のエンパワーメントは、世界的な社会課題です。長年、経済的・政治的・文化的に弱い立場に置かれてきたという常識や通念を覆すことを目指したムーブメントが各所で同時多発的に起きており、近年の広告やそのクリエイティブはそのトレンドを反映したものになっています。特に女性をメインのターゲットユーザーとしているブランドにとって、女性の悩みを適切に汲み取り、そしてエモーショナルにエンパワーメントすることはブランドの必須条件となっているのではないでしょうか。今回はその女性のエンパワーメントという難題をクリアし、女性に支持された海外事例をご紹介します。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を表層化し、意識変革を促す| P&G

Twitter:https://twitter.com/Always/status/1146086220268744707

世界最大の一般消費財メーカーである「The Procter & Gamble Company(P&G)」の「Always」というブランドは、若年女性のための生理用品を展開しています。2010年代前半、Alwaysは20代前半の若い女性に対する感情的なエンゲージメントが足りないという課題を感じていたそうです。商品の品質には自信があっても、機能面だけの訴求ではターゲットユーザーには届いていないという分析から、「Like A Girl」キャンペーンを開始しました。

最初の#LikeAGirlキャンペーンは 2014 年に初公開。ドキュメンタリー映像作家のLauren Greenfieldが最初の動画を手掛けました。

カメラを前に「女の子みたいに(Like A Girl)走ってみて」という監督の言葉に、コミカルな動きをしてしまう出演者たち。男の子も、当事者である女の子でさえもそんな行動をしてしまいます。ですが、その意味を問われると皆が同様にハッとするのです。「女の子みたいに」という言葉に侮蔑の意味合いが入ってしまうことを変え、若い女性が自己肯定感を強めるにはどうしたらいいのか。出演者たちが意識を変え、自分たちの言葉で女性へのエンパワーメントを語る様を収めたこの映像は、たった1分間ですが世の中にかなりのインパクトを与えました。

このキャンペーンはスタート3か月以内に、 Facebook、YouTube、Twitter などのプラットフォームで 44 億回以上のメディアインプレッションを記録し、それ以来 2 億 9000 万回以上のソーシャル インプレッションを引き起こしたと言われています。

また、 2014年12月に行われた調査によると、女性の約70%、男性の60% が、このキャンペーンによって「女の子みたいに」というフレーズに対する認識が変わったと述べました。

このような世の中へのインパクトから、この動画およびキャンペーンは2015年のカンヌライオンズPR部門グランプリという世界的な広告賞を受賞。人々にアンコンシャス・バイアスの存在を認識させ、世論を動かすという今につながる社会的な広告という新しいトレンドを決定づけたのです。

Alwaysの調査によると、女の子の56%が思春期に自信を失います。女性のエンパワーメントのためには、若い女の子にインスピレーションを与え、自信を持たせるという基本的な物語が大事であるというメッセージを見事にクリエイティブ表現に落とし込んだと言えるでしょう。

現代女性の幸せを再解釈して提案する|Sanctuary Spa

YouTube:https://youtu.be/cVf2cG292SQ

「Sanctuary Spa」は、シャンプーなどのヘアケア製品や、ボディクリームなどの化粧品を展開しているイギリスのブランドです。

2015年にリリースされた「#LetGo」キャンペーンでは、年配の女性が語る「社会のプレッシャーの大きさのせいで自分のことを大事にしてこなかった」という後悔について語られている動画が公開されました。

多くの女性は実際、仕事、育児、妻としての役割などさまざまなことをこなさなければなりません。ある調査では、10人中7人の女性が「完璧な女性」にならなければならないというプレッシャーを感じており、そのプレッシャーによるバーンアウトの可能性を抱えています。

動画では、このすべてのプレッシャーを時々「Let Go(手放す)」する必要があるのではないかというメッセージを訴えました。たとえば、長風呂でも5分間の一杯でも、リラックスして呼吸して、自分だけの時間を持つ。そんな時間を作り出すことの重要性を説いています。

化粧品やトイレタリー商品のマーケティングでは、いかに美しくなれるかや効果があるかなど機能的な部分に焦点が当たることが多いのですが、このキャンペーンは、「完璧な女性」になることのプレッシャーから離れて、自分の時間を作ろうという、自分らしい生き方や考え方、意識の提案を行っているのが新しい点です。その解釈そのものが、女性視点のエンパワーメントであり、現代らしい女性の幸せの提案であるといえるでしょう。

Sanctuary Spaは中小規模のコスメティックブランドで、あまり知られていませんでしたが、これを機に一気に知名度が上がりました。このキャペーンは、『WWD』などのファッション専門誌をはじめ、あらゆるメディアに取り上げられ、広告費をかけずに幅広い拡散効果を得ることができました。

女性のタブーに挑み、話題を作る|Libresse

YouTube:https://youtu.be/JZoFqIxlbk0

グローバルな女性用生理用品ブランド「Libresse (北欧では Essity FemCare ブランド、英国では Bodyform として知られる) 」は、#bloodnormal 運動を通して、生理を話題にすることを一般化しようという型破りな試みを行いました。

これまで、生理用品のCMでは、月経を血液で表現することはありませんでした(日本でも液体が青色であることが通常)。生理は自然現象であるのに、なぜかタブー視されてきたのです。そこで血があるのは自然なことではないのだろうか、という問いから、2020年に行われたLibresse(Bodyform)の「Womb Stories(子宮の物語)」キャンペーンが生まれました。

キャンペーン動画では、広く女性の健康問題を取り扱うことを目的にしています。子宮内膜症、不妊症、初潮、更年期のほてりなどの女性の身体的な体験と、これらが精神的な健康に与える影響に焦点をを当て、6人の女性の子宮内で起こっていることを描写する一連の実写とアニメーションで映像化。作品中では血液はそのままの色で表現されています。

このキャンペーンはSNSで大きな反響を呼び、TwitterやInstagram、Facebook等でトレンドNo.1を獲得したと言われています。

それ以外にも、2018 年にスウェーデンとデンマークで最初に開始された「Viva la vulva」キャンペーンでは、独自調査を元に女性自身の性器に関して恥じる、または無関心でいる文化をテーマにしてクリエイティブを展開しました。女性の外陰部に似た挑発的な画像のモンタージュを用い、外陰部の素晴らしさを讃える動画となっています。

YouTube:https://youtu.be/0k-_4WloY6Y

Libresse は、このキャンペーンを通じて、女性が自分の身体を誇りに思うようなオープンな文化に貢献したいと考えていました。このキャンペーンは、2019年のカンヌライオンズの ゴールド賞を始めとする広告賞を総嘗めにしました。

どれもインパクトのある映像を軸にしたキャンペーンですが、タブーに迫る事で、非常にショッキングで忘れられない内容になっています。このように賛否両論あるテーマを取り上げて社会に投げかけることで、広く女性のエンパワーメントを行う企業の姿勢が支持され続けていると言えるでしょう。

ブランドが今後最も注力すべき「感情でつながること」

女性のエンパワーメントは、1960年代後半から1970年代前半にかけて、ヨーロッパやアメリカ、日本などの国々において起こった女性解放運動「ウーマン・リブ」の潮流に連なる活動です。50年以上たった今でも解決に至らない社会問題であると考える人もいますが、この活動は「DEI(Diversity, Equity & Inclusion)」に包括されたことにより、企業にとっては当たり前で、これからも伝えるべき重要なメッセージのひとつになっていると言えるでしょう。

今回ご紹介したブランドは、その流れを適切に踏まえたうえでユーザーのインサイトをとらえ、ストーリー化するということに挑戦しました。この結果、感情で強くつながるという何ものにも代えがたい成果を出せたのではないでしょうか。ブランドはこれを好機ととらえ、より一層オリジナリティのあるストーリーづくりに注力する必要がありそうです。インフォバーンでは、オンラインやオフラインを問わず、ユーザーを動かすストーリーづくりに取り組んでいます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

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