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【海外事例】プラスチックごみ問題に向き合うコミュニケーション事例3つ

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石油由来素材が及ぼす気候温暖化、海洋汚染問題などに象徴されるように、プラスチックごみ問題は私たちの日常生活と深く関連があり、消費者の関心も高い分野です。CSR・CSVやサステナビリティ推進活動としてもカーボンニュートラルと同じく多く取り組まれているトピックでしょう。海外での取り組みを見ると、ビジネスモデルや技術・サプライチェーン等から綿密に組み上げられ、商品やアクションと一体になったコミュニケーション事例が多く生まれています。今回は注目を集める3つの事例をご紹介します。

革新的活動を多角的にコンテンツ化|The Coca-Cola Company

YouTube:https://youtu.be/aEVVJxqWaZ8

世界的に有名な「The Coca-Cola Company」の多様なサステナビリティ活動のなかでも、パッケージングは大きな柱となっています。彼らが目指すのは「廃棄物のない世界」。そのため、すべてのボトルを回収してリサイクルし、パッケージを 100% リサイクル可能にすることを目指しています。

具体的には、2025年までに石油を資源としたプラスチックの使用を 300万トン削減し、2030年までに二酸化炭素排出量を25% 削減することが目標です。また、軽量化などのパッケージングの改善、詰め替え式、ディスペンス式、ファウンテンシステムなどの代替ビジネスモデルや新しい再生可能素材の開発とリサイクル技術への投資により、これらの目標を達成する計画を発表しています。これらの計画やその目標達成までの道筋は、冒頭の動画に加え、

とさまざまな形で表現されており、SNSでの拡散や外部メディアに取り上げられるための工夫もしています。

ただしThe Coca-Cola Companyのパッケージングにおけるサステナビリティ推進は、自社の宣伝やコミュニケーション活動だけに注力しているのではありません。

2021年、 The Coca-Cola Companyは100% 植物由来のプラスチックで作られた史上初の飲料ボトルPlantBottleを発表しました。そしてこのPlantBottleの技術は、ケチャップで知られるH. J. Heinz Companyや、Ford Motor Companyなどの他企業の製品に使用できるように提供もされました。これは技術を競合他社にも広く開放することで、需要を拡大して価格を引き下げるという狙いがあり、非常に画期的なことでした。

社会を変えるため、自社だけの活動にとどまらないビジネスモデルとして展開したこのような事例はあまり多くはありませんが、これらの流れはより加速していくことでしょう。

人の顔が見える製品開発ストーリーを展開|finisterre

イギリスで2003年に誕生したサーフ系ファッションブランドである「finisterre」は財団を設立して積極的な海洋保護活動を実践しています。マーケティング戦略だけではなくブランドアイデンティティの本質的な部分で、海洋プラスチックの大きな問題に焦点を当てているブランドです。

finisterreは、「Leave No Trace(痕跡を残さない)」という方針で製品の設計と製造からパッケージに至るまで、環境への影響を最小限に抑制。また、製品の寿命を延ばすための修理サービスやアップサイクルを行って活用することも実行しています。

特に商品のパッケージは特徴的で。同じくイギリスの化学メーカーAquapakが開発した水溶性ポリマーを原材料に独自の配送用パッケージを開発。これらは紙などの原材料を極力削減してリサイクルや分解も可能、そして丈夫で軽いと非の打ち所がない性能です。このパッケージで生産と輸送の両方において、使用される資源を減らしています。

さらにこれらの情報は、動画を交えたスペシャルページにて詳しく解説しています。

  • finisterreの製品開発の責任者による、企業の理念やサステナビリティ活動の説明
  • 製品開発の責任者とAquapakの担当者と共に語る対談

そこでは、この素材を作ることになった理由、目的、製造工程について、技術的な話などを交えながら詳しく説明しており、この動画を見ればかなり詳細まで分かるようになっています。単に文章で説明するだけではなく、実際の責任者が顔を出して、しかも20分に渡って詳しく説明するというところに、企業の本気が現れていて、信頼性も感じられます。

finisterreはこの他にも、Webサイトで記事やポッドキャストなどの多様なコンテンツを、またSNSにも環境ニュースなどを投稿することでメッセージ発信を積極的に行っています。

商品の利用を減らすことすら呼びかける徹底ぶり|Smol

イギリスのブランド「Smol」は、通販専用の家庭用洗剤を販売することで環境を保全することに貢献しています。

その製品設計は徹底的で

  • タブレット化などで容量を小さくし配送におけるCo2を削減
  • 詰め替え可能なスプレーボトルでプラスチックを削減
  • 植物由来の成分を中心にした洗剤で環境負荷を低減

である一方、無駄使いを減らせるような1回分の商品サイズやサブスクリプション購入、プロモーションキャンペーンの適用で「お得」であることも特徴となっており、Webサイトでは商品購入数に応じて、環境へ良い影響が及ぼされたことをリアルタイムで表現するようなインフォグラフィックも展開されています。

さらには商品の使い方も含めた啓蒙キャンペーン#washwellも行なっています。

YouTube:https://youtu.be/l1G3h4Tat_8

この動画では、なんとsmol自ら洗濯や食洗機使用の回数を減らすことを推奨ししているのです。洗剤ブランドが自社製品の機会損失に繋がるようなことを促すというのもおかしな話ですが、真摯に環境に向き合っている姿勢を表現したキャンペーンでしょう。これらのような真の意味で環境問題について向き合う姿が、多くの消費者に支持されているようです。

コミュニケーションが「ウォッシュ」と呼ばれないためには

サステナビリティ推進活動のうち、プラスチック素材の使用量や削減量などは比較的エビデンスを可視化しやすいという特徴があるため、このテーマでユーザーに向けたコミュニケーションを展開している企業は多く存在します。ただし今回ご紹介したブランドに象徴されるように、コミュニケーションだけにとどまらず、商品開発やサプライチェーンといった段階からプラスチック問題に取り組んでおり、世界的に取組みは高度化しているようです。

これらのコミュニケーションにこれから取り組んでいくには、いわゆる「ウォッシュ」にならないようなエビデンスの整理から必要になることでしょう。インフォバーンでは、社内に眠る情報を引き出すインタビューや他部署をまたがる資料の情報整理、ヒアリングやワークショップでの関係者の意見の可視化などからプロジェクトをスタートすることもお引き受けいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

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