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【海外事例】セクシャル・マイノリティ(LGBT)へのサポートで表現する、企業の多様性と信頼性

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セクシャル・マイノリティへの理解を増進し、差別を解消することを目的とした「LGBT理解増進法案(LGBT法案)」が、2023年6月16日、国会で可決されました。今までも、いわゆる「プライド・パレード」に支援を表明する企業は多くありましたが、今後は実際に有益なプロジェクトを立ち上げたり、社会貢献に直接繋がる行動を起こすことだったり、一歩進んだ支援が求められるでしょう。先んじてそれらに取り組んだ海外事例を3つご紹介します。

店舗でトランスジェンダーの名前変更手続きをサポート |STARBUCKS

YouTube:https://youtu.be/aTH_UlQbuvE?si=5a0LVHbBkDh609pi

ブラジルのSTARBUCKSが行った「I am」(ポルトガル語では「Eu Sou」)というキャンペーンを見てみましょう。トランスジェンダーにとって、「STARBUCKSで注文したコーヒーに名前を書いてもらえるように、自分で決めた、自分らしい名前で生きたい」という願いは切実なものです。しかし、ブラジルでは、名前の変更は高価で煩雑な手続きが多く、さらには偏見も強いため、名前変更は困難でした。

そこで、STARBUCKSは、その手続きを後押しすることにしたのです。1月のNational Trans Visibility Dayに店内を名前変更の登録所にして、手続きを無償でサポートすることを毎年続けています。2023年1月29日には4回目の「I am」キャンペーンが行われました。

手続きが完了すると、公式な変更を認める証書とともに新たな名前の書かれたカップをプレゼント。結果として、サンパウロ市では1日あたりの法律上の名前変更が7倍に増えました。

X:https://twitter.com/StarbucksBrasil/status/1222580202976501761

2022 年の「I Am」では「I Am Working」という拡張プロジェクトも実行されてました。スターバックス店舗を雇用ハブに変え、就職面接を行ったり、トランスジェンダーのメンバー向けに職業トレーニングプログラムに参加する場を提供したとのこと。実の伴った支援の好例と言えるでしょう。

すべての人に安全なトイレを提供するための手引書を発表|Galop

X:https://twitter.com/_goodnightout/status/1374651486597169155

日本でもセクシャル・マイノリティーによる職場のトイレ利用が裁判になっていたり、新宿のとあるビルのジェンダーレストイレについて話題になっていましたが、トイレに関する社会問題は、イギリスでも議論されています。

イギリスのLGBTQ+に対する暴力反対団体「Galop」は、2021年にセクシャル・マイノリティにとって使いやすいトイレを、企業が支援する時の参考となるガイドを発表しました。実に22ページにもなる充実した内容で、セクシャルハラスメントと暴力をより理解し、対応し、防止するために、従来の「Good Night Out Campaign」(安全なナイトライフを支援するキャンペーン)と連携して開発されました。

この「An all gender access toolkit」では、セクシャル・マイノリティーの人々のトイレの使用に関して、誤った情報または誤解を招く情報について説明しています。またこれには公共の男女別トイレを使用したことで暴力や差別に遭った人々からの証言が含まれています。 3分の2近くが嫌がらせ、脅迫、暴力を恐れて公衆トイレを使用するのは危険だと感じていて、さらに、4人に1人が身体的暴行の脅迫を受け、5人に1人が性的暴行または性暴力の脅迫を受けたとされています。

35歳のトランスジェンダーの女性からのコメントでは、女性トイレに入ると高い確率で嫌がらせをされ、行列ができている場合には攻撃的な質問やコメントもされるとのこと。

また、24歳のトランスジェンダーの男性は、パブのトイレで男性たちのグループに笑いながら撮影されたときのことや、自分に居場所がないことを感じていたり、常に外出に不安があると述べています。

このtoolkitの中には、レストランやバーからナイトクラブに至るまで、セクシャル・マイノリティの人々が安全な空間を確保するために、企業が講じることのできる措置についての参照例を挙げていたり、ポスターの配布も行っていると記されています。

もともと男女共用のトイレが多かったイギリスでは、女性らの反発を受け政府が2022年に男女別にトイレをわけることを義務化した経緯もあり、議論はさらに白熱、そのなかでこのキャンペーンが行われたこともあり注目を浴びました。

自由な名前で作れる世界初のクレジットカード|Mastercard

セクシャルマイノリティの中でも特にトランスジェンダーの人たちは、クレジットカードに記載されている名前の確認時、容姿と一致しない名前のせいでトラブルになることが多々あります。店側に支払いを拒否されたり、嫌がらせを受けたりすることもあるそうです。

そんな状況を解決しようと、Mastercardは「True Name」というプロジェクトを立ち上げました。きっかけは、社内のクリエイティブチームで働くトランスジェンダーのメンバーが、立ち寄ったお店で戸籍上の女性名で呼ばれた時の苦痛について語ったことでした。

そこで、顧客が自ら選んだ名前、「True Name(本当の名前)」でクレジットカードを発行できるようにしました。通常は、銀行が認めない限り、本名以外をカードに記載することはできません。当初、銀行は難色を示したため、MastercardはTrue Nameでの決済については、支払いまでを担当することとしサービスを開始しました。

このプロジェクトは、最初の3週間でソーシャルメディアやマスメディアなどの媒体で30億回表示され、Mastercardに対するポジティブな感情は30倍に跳ね上がったそうです。当初導入について反対をしていた銀行にもそうした反響が広まって、シティバンクなど決済を引き受ける銀行も現れ、このサービスが軌道に乗ることとなりました。

Mastercardはライバルである他のクレジットカード会社も同様のサービスに取り組んでくれることを期待しています。いち企業のいちキャンペーンという概念に囚われず、業界全体の変化、真の社会貢献を行う姿勢が高く評価されています。

理想論だけではない、効果や実行力を伴う支援に進化

セクシャル・マイノリティという問題に共通する考え方は、個人を尊重するという姿勢です。それはさまざまな事情を抱えた人がいるこの社会において、多くの人の心に響くでしょう。このように個人を尊重する、個人の事情に寄り添う姿勢とそれに対する行動力を見せることで、企業に対する信頼感は高まっていくのです。

企業としてこのような社会への実行力を伴う支援を行う場合には、まず情報発信を成功させ、多くの人の認知を獲得したり興味喚起を行うことが必要です。インフォバーンでは、どんなテーマにもオンラインやオフラインを問わず、広く拡散できる手法で戦略を設計し実行いたします。お気軽にご相談ください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

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