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【海外事例】自立という社会課題をコミュニケーションで支える施策3選

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企業がどのように社会貢献を行なっているのかについて、今ほど人々が厳しく見ている時代はありません。特にZ世代は、企業が社会貢献とうたっているものが、寄付だけなどの表面的なものなのか、本当に社会の役に立つサスティナブルな仕組みなのかについて鋭い眼差しを向けています。本気で社会貢献に取り組んでいる企業に対しては、人々は尊敬と高い好感度を持ちます。それが継続性のあるブランド・ロイヤルティ(ブランドへの忠誠度)につながるのです。実のともなった仕組みづくりからコミュニケーションまでを成功させた海外事例を3つご紹介します。

ホームレス社会復帰の第一ハードル「住所問題」を支援 | HSBC銀行

YouTube:https://youtu.be/ry76ciIB1ws?si=VwU9tpkRx-4LVUMX&t=3

一度ホームレスという状況に陥った人が社会復帰を目指そうとしたとき、住所がないと銀行口座が開設できない。銀行口座がないことで仕事が見つからなかったり、社会保障が受けられなかったり、住居を見つけたりできず、悪循環に陥ってしまうという社会問題があります。
そこで、英国・ロンドンを拠点とする「HSBC銀行」では、ホームレスの社会復帰の支援のために「Addressing the No Fixed Address problem」(住所がない問題に対する取り組み)というキャンペーンを立ち上げました。

まずはサービスとして、HSBC銀行が英国のホームレスおよび居住支援団体であるシェルターと提携し、ホームレスの人々がシェルターの事務所の住所を使用して銀行口座を開設できるようにしました。このサービスに対応している支店を探すには、Webサイト「No Fixed Address service」から確認することができます。

そしてこのサービスをプロモーションするためのキャンペーンとして、屋外広告が設置されました。ホームレス率の高い5つの地区で、バス停などホームレスがよく一時的な避難所として利用する場所が選ばれたのです。実はホームレスと一言でいっても、友人の家に“カウチサーファー”として渡り歩く人もおり、外からは可視化されにくいこのようなタイプには支援が行き渡っていませんでした。
さらにこのキャンペーンを見た「ホームレスを支援したい人」もシェルターに寄付ができるよう、屋外広告にQRコードも掲載しています。

2週間のキャンペーン中、住所不定銀行口座の利用率は52%増加し、QRコードから得られた寄付金によりシェルターは100人以上の人々に住居を提供することができました。また、QRコードにアクセスした人の5人に1人が定期的な寄付を行なっているとのこと。

この施策の成功のポイントは、居住支援団体であるシェルターと提携したことで、ホームレス率の高い地域や、ホームレスの人の目に届きやすい場所など、シェルターが持っていた情報を活用して、効果的な広告を展開したということ。もちろん、プロジェクト自体もシェルターの協力なしでは行うことができませんでした。

このキャンペーンは、HSBC銀行自身が持たれていたマイナスイメージ「お金持ちの外国人のための銀行」を払拭することにも効果的だったと言われています。人々はHSBC銀行に対して「グローバルで・巨大で・冷酷な組織」というブランド認識を持っていましたが、このキャンペーンを行ったところ、英国社会に対する貢献を行う温かい企業というイメージを持つ人が増え、ブランドに対する好感度も10%アップしたとのことです。

親の行動を変え、子の人生を変えたキャンペーン | Telenor Pakistan

YouTube:https://youtu.be/svrB_8YR420?si=pWU0wMQwj1rmHZr0

ノルウェーの通信事業者である「Telenor Nordics」を要する「Telenor Group」は、事業を展開しているパキスタンに1600万人の出生届の出されていない子どもたちがいるということを深刻な事態ととらえ、出生届のデジタル化とそれを普及させるキャンペーンに取り組みました。

出生届が未提出であるという問題は、公的な医療や教育、社会保障を受けられず、児童労働や児童婚といった問題にも繋がります。そもそも、出産届が提出されない理由は、行政システムが地方の村には行き届いておらず、親が遠く離れた役場へ届けを出さなければならなくなっていることに由来します。

その問題を解決するために「Telenor Pakistan」は、携帯電話から出生届が出せるアプリ「Digital Birth Registration」を開発しました。このアプリを経由して、医療機関や地域の首長らが出生数や両親の住所、電話番号などのデータを提供します。そして、行政機関はその情報をもとに出生登録を行います。このアプリは、Telenor Pakistanとユニセフ、政府での協業で制作され、2015年に3つの自治体で試験的に実施されました。試験段階だけでも、パキスタンの出生登録数はわずか6か月で 30%から90%に増加しました。登録された子どものほぼ50%が女の子でした。この後全国に広がり、426の村から120万人もの出生登録が行われました。

Telenor Groupのウェブサイトでは、Digital Birth Registrationについて、具体的な例を挙げてその利点について説明しています。その中でも最もわかりやすいのが、5歳の男の子Jeetのストーリーです。実はJeetは、はじめてDigital Birth Registrationで登録された子どもだったのです。実際の人にインタビューしてそれを映像化することで、具体的にどのように出生登録を行うのか、なぜ出生登録をデジタル化することが子どもの人生にとって大きな意味を持つのかが見えてきます。

Telenor Groupでは他にも「An Unregistered Life(登録されてない子どもの人生)」についてや

登録がどのように行われるかを完結に示した「5 Steps to an identity」などを作成しています。

政府・行政といった当事者や、ユニセフ、医療従事者など多くの協力者を得たTelenor Groupは、このプロジェクトでパキスタンで出生登録者が120万人に増えて一定の効果が出たため、Naming the invisible by digital birth registrationとしてまとめ、世界中にPRしました。この後ミャンマーでもユニセフと共同で試験運用が行われているということです。

若者の就職活動を支援する | H&M

YouTube:https://youtu.be/RC4MsADlncE?si=5rXroD86LQIYh9l_

スウェーデンのアパレルメーカー「H&M」は就職活動中の人をサポートするため、面接用スーツの無料貸し出しサービスと連動するキャンペーン「ONE/SECOND/SUIT」を行いました。

学生のような金銭的余裕が無い若い人たちにとって、面接用にスーツを用意するのは簡単なことではありません。実はこのプロジェクトは、求職者の能力は雇用主に会ってから1秒以内に、主に外見や自己アピールによって判断されることを明らかにしたという研究結果をもとに発案されました。面接時の服装によって求職者の印象に影響があるとすれば、スーツを用意できるかどうかは、人生にも関わるような軽視できない大きな事柄です。

「ONE/SECOND/SUIT」では、男性の求職者が自分を最大限にアピールできるよう、面接に最適な紺色のスーツ上下セット、それに合わせたワイシャツとネクタイ、そしてポケットチーフの5点セットを24時間無料で借りることができます。

このプロジェクトはイギリスとアメリカのH&Mで3ヶ月間に渡って実施され、英国と米国の両方で開始後24時間以内にすべてのスーツがウェブサイト上で予約されました。レンタルスーツは50%が再利用可能な素材で作られているとのことでサスティナビリティも配慮したサービスでした。

このキャンペーンのために、冒頭の30秒のプロモーション動画が作られました。そこでは、面接を控えて緊張する若者が、母親の応援のボイスメッセージを聞き、スーツを着ることで自信を持とうとしている様子が描かれています。面接当日の若者の不安を描きつつも、最後に若者の自信に溢れた笑顔で締めくくる感動的なブランデッド・コンテンツに仕上がっています。これらは、2010年の映画『私を離さないで』などを手掛けたMark Romanek監督が制作しました。

この取り組みはテレビ、ラジオ、オンライン、ソーシャル、新聞記事など、世界中の主要メディアでも取り上げられ、2,600万人以上に届いたとされています。

自立支援には、企業の中心的な関与が期待されている

これらの事例から、個々の自立を促したり行動を起こさせるには、中央集権的なコミュニケーションだけでなく、実際に丁寧にサポートを行える仕組みが必要ではないかと思われます。例えば地域に根ざした社会福祉の専門家やNGO、政府・行政などと提携したり、または各支店や店舗などといった組織が代表的なものです。細やかに個人の状況に寄り添ったサポートがあって初めて規模を拡大することができ、そして結果的に大きなインパクトにつながるのではないでしょうか。

そのようなサポーターたちを巻き込む役割こそが、今、企業が期待されていることです。企業の都合だけでなく社会や個人にとっての必然性と必要性を合致させた良いストーリーは必ず大きな求心力になることでしょう。インフォバーンでは専門家を巻きみ、プロジェクトチームの立ち上げや求心力のあるストーリー作りをお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

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