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2015.2.17

【書評】原始時代2・0のビジネスとは? 『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』

book

 

1月24日に晶文社から出版された新刊『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』のご紹介です。

インフォバーンCEO・小林と日経ビジネスのチーフ企画プロデューサー・柳瀬博一氏の対談形式で書かれている本書。メディア、マーケティング、デザインはたまた企業について、過去・現在・未来の切り口で語られています。

インターネットが普及して世界がつながったら、場所も時間も飛び越えられるはず。でも実際にフラットなコミュニティーを得た私たちはいつしかその中で小さなコミュニティーをつくり、ついにはインターネットから飛び出して実際に会ったり呑んだり仕事をしたり、いたって原始的な道を選び始めた──本書はテクノロジーを操る原始人「原始人2.0」になったという仮説のもと展開されます。

 

近年のWeb潮流は「村のウワサ」第一主義

原始時代に立ち返った私たちは、顔の見えない誰かが発する情報よりも、身近なコミュニティー内の情報を優先的に信用するようになります。実際に『ウェブはグループで進化する』(日経BP社 ポール・アダムス著)ではインターネット上でのサービスの判断基準について、「8割方の人々が『5人から10人の自分の親しい友達のコミュニケーション』で得た情報を信用している」というデータも発表されています。

SNSとスマホの普及により、人々のコミュニケーションがそのままメディアのコンテンツとして流れるようになっただけでなく、旧来的なメディアよりも「村のウワサ」を信じる人が多くなったのです。

 

アート&サイエンスが価値をつくる

誰でもメディアになれて、誰でも拡声器を持っている時代では、やみくもに大きな声で発信しても大きな波は生まれません。そこでは常に「編集力」が求められています。そんななか、昨今はキュレーションメディアが氾濫し始めました。コンテンツは自前ではつくらず他所のものを、と「売れる仕組みをつくる」=サイエンス側へ舵をきった企業が多くあるようです。

では「優れたコンテンツをつくる」=アートを担ってきたメディア企業はどうしているのでしょう? メディア企業こそ、「良いものをつくれば売れる」という幻想から脱し、サイエンスを取り入れた体制に進化がすることが必要になる、と柳瀬氏は言います。

私自身、一言にアートと言っても、そこには微妙なニュアンスが内包されており、情報に文脈をつけて発信するという旧来のいわゆる「編集」とは違う「編集力」が求められているように実感しています。テキストの値打ちが変わったのか、受け手側の感触なのか、そこには2010年代のインターネットの作法が現れているように思えるのです。

ソーシャルシェアやネイティブアドといった情報を届ける形に加え、みんなが拡声器を持ちはじめたことで、コンテンツの編集を生業にしているプロと一般の人との垣根が徐々になくなり、いまやニュースを扱うこと自体が大衆化しています。そのなかで、属人的な構築力でもってコンテンツを昇華することが求められているのでしょう。

 

ロジックを紡ぐデザイン

また、特に目を引いたのがデザイン経営の話です。成果を挙げている企業や組織はデザインと物語のマッチングができていて、ブランドや企業のコンテクストが一目で分かる形になっています。デザインはブランドの物語を可視化するものであり、マーケティングとは密接に作用しあっているのです。デザインコンシャスな企業としてはアップルやスターバックス、ユニクロが例に挙げられています。

「デザインは表層的な意匠ではなく、ユーザーが製品を発見して購入、そしてその後までをも考えること。つまり、ライフサイクルの一環」だと小林は言い、これはマーケティング論を唱えるアメリカの経営学者フィリップ・コトラー氏の言葉「すべての製造業はサービス業である」とつながっています。つまり、商品がユーザーに対してサービスを行う=経験を商品にしている、ということなのです。

 

 

ものすごい速さで消費され磨耗して変化していく社会の環境変化の中では、「インターネット的」な考え方が重要視されています。アジャイルでオープンであるとか、パターン認識で動けること、企画しなくても進行できてしまうフットワークの軽さなど、PDCAにおけるCとAの応酬に耐えうる、柔軟かつ強靭な体制を必要とする流れができつつあります。

私たちはどこまで行っても進化のスピードから逃れることはできないし、原始人=ギャートルズのようにたくましい好奇心と想像力を持って邁進するほかないのかもしれません。

あとがきで小林が述べているように、本書は「編集者入門」ですがメディア業界以外の方にもお楽しみいただける1冊ではないでしょうか。

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