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2019.8.8

アクセス数は二の次でいい。オウンドメディアで実現する1 to 1コミュニケーション——ポーラ様『WE/』事例紹介

CHANNEL IBでは、インフォバーンの実績紹介を通し、ブランドの思いや課題解決のヒント、現場の生の声をお届けしていきます。

今回ご登場いただくのは、株式会社ポーラ 宣伝部 コミュニケーション企画チーム コミュニケーションユニットリーダーの吉崎裕介さん。同社では2017年1月、企業文化誌『WE/』を創刊。その姉妹メディアとして2018年6月、デジタル版『WE/』を立ち上げ、さらなるブランディング活動に注力しています。 このプロジェクトでは、人の美しさを追究する活動として「Meet Up」なる企画を展開中。企画発足の道程にはどんな思いがあったのかお伺いするべく、『WE/』編集長の吉崎裕介さん、『WE/Meet Up』プロデューサーの横石崇さん、そして『WE/Meet Up』プロジェクトマネージャーとして参画するインフォバーン・能瀬亮介による鼎談を開催しました。

(左から)『WE/Meet Up』プロジェクトマネージャー・能瀬亮介、『WE/』編集長・吉崎裕介さん、『WE/Meet Up』プロデューサー・横石崇さん

1対1のコミュニケーションを“n回”繰り返す

——デジタル版『WE/』立ち上げの経緯についてお聞かせください。

吉崎 2016年1月、当社は自社ブランドの再構築に取り組みました。具体的には企業ロゴやビジュアルイメージ一新とともに、ブランドメッセージを「Science. Art. Love.」という3つの言葉で再定義し、ポーラが考える“美しさ”とは何か、議論を繰り返しました。そもそも当社は1950年から企業誌を制作しており、これまでにも外見的な美しさにまつわる美容情報の発信は行ってきましたが、これだけ時代が大きく様変わりすると「美」に求められる要素も変わってくる。外見的な美しさだけではなく内面も含めた本当の意味でのトータルビューティーを提供していきたい——そんな思いから、新たなアートコミュニケーションとして2017年1月に冊子版『WE/』を創刊することになりました。

能瀬 ポーラさんが世の中に打ち出す美容理論「美しい肌から、美しい人へ」を大きなテーマに据えながら冊子版『WE/』でテーマに置かれていたのは「異質なものとの交流」。その交流から得られる気づきや発見から「美」が生まれる——デジタル版『WE/』をローンチするにあたり、その思想や世界観をデジタルでも表現し、かつ「デジタルならでは」のものを仕上げるためにはどうすればよいか考えました。それを考えた末に辿り着いたのが「1 to 1のコミュニケーション」という考え方だったんです。

横石 通常のデジタルコンテンツのコミュニケーション戦略は構造的に「1対n」のコミュニケーションが基本です。しかし我々はあえて「1対1」の関係を“n回”繰り返したいと考えています。もちろん当初は通常のデジタルマーケティングと同様、広く情報を頒布し、アクセス数などをKPIにするような手法も提案していましたが、「それはポーラらしくないんじゃないか」という議論を何度も繰り返して今のカタチに落ち着きました。その根底には、ポーラさんの創業当時からのポリシーがありましたよね。

吉崎 はい。2019年9月に創業90周年を迎えるポーラの歴史は、創業者・鈴木忍が奥様の手荒れを見て、独自にハンドクリームを開発したことから始まりました。すなわち「1 to 1」のおもてなしが当社の原点であり、同時に、創業以来90年間守り続けてきたポリシーでもあります。当社には、お客様一人ひとりの美しさを引き出す専属ディレクターとして日本全国に約4万5,000人が点在しますが、冊子版『WE/』はそんなビューティーディレクターのコミュニケーションツールとして手配りしています。だからこそデジタル版でも一連の活動のなかで「1 to 1のコミュニケーション」をかなえられる、そんなコンテンツにしたいと考えたのです。

表現者と読者で織りなすMeet Upによる化学反応

——2018年6月から始まったデジタル版『WE/』において、読者との「1 to 1コミュニケーション」を実現するために発信されているのが『WE/Meet Up』というコンテンツですね。Meet Upだからこその面白さはどのようなところにあるのでしょうか。

能瀬 Meet Upで更新される記事は基本4回で構成されます。#1〜3は“表現者”のインタビュー記事、そして#4は、ご登場いただいた表現者をホスト役として行う、公募で選んだ“読者”との1 to 1企画のレポート記事です。例えばvol.1の表現者は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授の伊藤亜紗さん。伊藤さんは視覚障害や吃音症の研究をされていて、#4では伊藤さんの友人で全盲者の難波創太さんをお招きし、読者と3名で料理をしていただきました。n人の多くの読者を対象にトークイベントを開催するのではなく、読者一人だけを招き、その対話から新たなコンテンツを発信する……。ちょっと特異な試みかもしれませんね。

『新しい世界への「好奇心」が、「恐怖心」を超えていくとき | 伊藤亜紗 #4』

 

横石 そうですね。美しさとは何か考えたとき、それは「新しい一歩を踏み出す」とか「新しいことを発見する」といった“変化の瞬間”にあるのではないかと我々は考えます。そしてその変化の積み重ねが他の人にも伝播していくことにMeet Upの価値がある。正直、制作している自分たちも、当日何が起こるかワクワクしているくらいで、想定外の事態も大歓迎。ゲストの選定にあたっても、本来的にはオウンドメディアですからポーラさんの想定顧客に近い方を選ぶのが通例でしょうが、まったく真逆の発想をしていて、『WE/』がなければ出会うことがないゲストをお招きしています。

能瀬 ゲスト応募のときにはアンケートでポーラ社製品の使用頻度なども聞いていますが、ほとんど参考にはしていないんです。それよりも、書いていただいた内容重視。インタビュー記事の感想やご本人にまつわるエピソードなどを読ませていただいて、より面白い化学反応が起こりそうな方をホスト役の表現者の方と一緒に選定しています。

横石 通常のインタビューコンテンツ制作の場合、取材相手に話を伺って、原稿確認をして記事がアップされれば、そこで関係性が途切れてしまいます。 でも、このプロジェクトでは最初の取材から1 to 1企画のゲスト募集、選定、実施をして、それからレポート記事公開までに半年~10ヶ月くらいの時間がかかります。お互いが当初の取材相手からコラボレーターに変化して、その過程で双方に感情が芽生えてどんどん変化が生まれていきます。一過性ではなく、継続性のあるコンテンツだと思います。

能瀬 先ほど横石さんから“変化の瞬間”というキーワードがありましたが、1 to 1企画の最中だけでなく、その日から約1ヶ月後に読者ゲストの方へメールインタビューしたときにも、それを感じることがたびたびあるんですよ。読んでいて、ちょっと泣きそうになるくらい、とても感動的なコメントを寄せてくださる方もいらっしゃいます。

横石 私もレポート記事を原稿チェックで読み、一人定食屋で涙を流したのを覚えています(笑)。もちろんライターやカメラマンをはじめとするクリエイターの腕によるところも大きいと思いますが、なぜここまで人の心を震わせるコンテンツになるのか、とちょっと手前味噌ながらも考えてしまいます。

吉崎 ある種の魔力ですよね。理由のひとつは、いい意味での摩擦度合いだと思います。今日お話してきたことの繰り返しになりますが、ホストとゲストの両者が異質な関係になるように組み合わせ、あえて摩擦を起こしている。そして摩擦が起これば起こるほど、まったく違う価値観のふたりが家族や恋人にも話さないようなことまで話をする。それって日常生活ではなかなかないものだし、『WE/』だからこそできることです。

能瀬 ゲストの方も、初めての体験になるので最初はもちろん緊張していますが、ある瞬間からその場に“没入”しているなと感じます。とても前向きにその場に入り込み、結果として楽しんだり、感動したり……。単なるイベント参加じゃないし、仕事的にやっているのでもない。うまくいえませんが、それらを超越しているような空間と時間が織りなされています。だからこそ、その場を表現したコンテンツは、読者の心にも刺さるものに仕上がるのではないでしょうか。

『WE/』を「美の文化基地」にまで発展させたい

能瀬 あと私が制作にあたって常々思うことは、こうした効率性が高いとはいえないコンテンツ制作をOKとしているポーラさんもすごいということです。実際、あるゲストの方からは「ポーラさん、かなり無茶なことしていますね」と、ポジティブにお褒めの言葉をいただきました。

吉崎 当社の場合、ビューティーディレクターを筆頭に、仕事を仕事としてやっていない部分があるからかもしれない(笑)。もちろん真面目に日頃の業務に専念はしていますが、人と直に触れあって、その人の可能性を引き出したいという気持ちが根底にあって、おせっかいというか、使命感というか、そんな思いで仕事をしています。

横石 ポーラのあるビューティーディレクターは、担当するお客様から「あなたに死に化粧をお願いしたい」という名誉な依頼をいただいたという逸話を伺いました。そこまでいくと単なるセールスパーソンじゃなく、まさしく人生のパートナーですよね。

吉崎 はい。化粧品が売れることはあくまで「1 to 1のコミュニケーション」の先にある“結果”である、そう考えるビューティーディレクターはとても多いと思います。私が『WE/』で行っていることもまったく同じで、だからこそ私自身、マーケティングやアクセス数も大切ですが、それ以上に大切なことがあると思っています。

——お話をうかがっていると、ドキュメンタリー映画でもつくっているかのような印象があります。その結果に対し、読者の心が動かされ、続々と共感者が増えていく。そんな唯一無二のメディアではないでしょうか。

吉崎 制作チームでも、当社が一企業として大事にしている価値観をうまく共感・理解し合えていると感じています。当社代表取締役社長の横手喜一も「商品・サービスを買ってもらうだけでなく、ポーラの思想や存在理由を社員全員が共有しなければいけない」と常々言っていますし、社員も皆、その思いを共に活動しています。そこに横石さんやインフォバーンさんが加わることで何かしらの相乗効果が生まれる、そんな変化を感じていますね。

横石 1 to 1企画の倍率はとても人気が高く、参加したい方は大勢いらっしゃいます。あと1億回ほど繰り返して日本中のみなさんとミートアップしていけるといいですね(笑)。現実的にそれが可能かどうかはともかく、目の前にいる一人ずつ、一人ずつにこの活動の意味を説き続けていくことが新しい変化を生み出していけると信じています。

能瀬 そのためには、私たち制作メンバーも変化していかなければいけません。コンテンツの企画づくりから新たな仕掛けを講じていきたいですし、発信の仕方についても新たなことにチャレンジしていきたいです。

吉崎 ポーラとしては10年後の2029年に100周年を迎えます。そのときまでに達成したいビジョンは『WE/』を「美の文化基地」にまで発展させること。これまでのMeet Upに参加してくれた方が、その後どんな活動をし、どんなコミュニティをつくっているのか。そうしたこともお伝えしたいですし、Meet Upアフターみたいな企画も考えています。「美の文化基地」を拠点に何十年とお付き合いしていける方々をもっと増やしていきたいですね。

 PROFILE
※2019年7月当時

吉崎裕介さん
株式会社ポーラ 宣伝部 コミュニケーション企画チーム コミュニケーションユニットリーダー
2010年ポーラ入社。宣伝部所属。アート コミュニケーション活動を展開するメディア『WE/』の立ち上げに始まり、プロダクトブランドの戦略・プロモーション設計や、女性応援・スポーツ支援など様々な側面でのブランドコミュニケーション活動全般に携わる。

横石崇さん
&Co.代表取締役
2016年に、&Co., Ltd.を設立。ブランド開発や組織開発をはじめ、テレビ局、新聞社、出版社などとメディアサービスを手がけるプロジェクトプロデューサー。年間100以上の講演やワークショップを行う。主宰する働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」では国内外で、のべ3万人を動員。著書に『これからの僕らの働き方』(早川書房)、『自己紹介2.0』(KADOKAWA)がある。

能瀬亮介
株式会社インフォバーン ソリューション部門 コンテンツストラテジスト
編集プロダクション、フリーランスの編集者/ライターを経て、映像と広告クリエイティブのWebメディアにて編集を担当。2015年、インフォバーンに入社し、現在はBtoBから食メディアまで幅広いプロジェクトに携わっている。休日になるとサプリメントを飲み忘れるのが悩み。

 

ポーラ様 『WE/Meet Up』

担当領域
・コンテンツ戦略/制作
・プロジェクトマネジメント
・メディアプランニング
・ディストリビューション設計/配信

INFOBAHN STAFF
・アカウントプランナー:野坂洋、羽村悠己
・プロジェクトマネージャー/コンテンツプランナー:能瀬亮介
・Webディレクター:渡邊あゆ、大槻崇人
・メディアプランナー:木内愛、服部豊

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