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情報発信が企業の価値をつくる ー これからの広報が担う「プロセス開示」への道筋ー

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当記事では2022年8月4日に開催されたオンラインイベント「サステナビリティ経営を推進する『企業のメディア化』とは」のSession:4「情報発信が企業の価値をつくる ー これからの広報が担う「プロセス開示」への道筋ー」の内容をお届けいたします。企業は自社の活動をどのように発信していくべきなのかについて、コーポレートコミュニケーションに携わられている味の素株式会社グローバルコミュニケーション部メディアグループ橋本雅棋さん、富士通株式会社グローバルマーケティング本部福村知香さんのおふたりに、株式会社インフォバーン執行役員の羽村悠己が話をうかがってまいります。
※読みやすさを考慮し、動画内の発言の内容を一部修正・補足してお届けいたします 。

ふたつのオウンドメディアがそれぞれに持つ目的と意義

羽村: さっそくセッションをはじめたいと思います。おふたりの自己紹介と、ご担当されているオウンドメディアについて簡単に教えていただけますでしょうか。 まずは、富士通の福村さま、よろしくお願いいたします。

福村: ご紹介くださりありがとうございます。改めまして富士通の福村と申します。 私は入社以降、サーバー、ストレージ、クラウドといったITインフラ商品のプロモーションを担当しておりまして、2019年に今在籍しているグローバルマーケティング本部に異動し、自社メディアの企画運営や、Webキャンペーンなどに従事しております。そして、今回ご紹介させていただくオウンドメディア「フジトラニュース」を昨年に立ち上げました。

続きまして、「フジトラニュース」のご紹介を簡単にさせていただきます。「フジトラニュース」は、社会課題解決に向けた弊社の取り組みをタイムリーに生活者目線でお届けするオウンドメディアでございます。

例えば、経営陣が話すような経営ビジョンのコンテンツですとか、お客さまとの共創事例、DX企業として変革を推進する弊社の社内実践例などをご紹介しております。

また、社会課題解決に向けて取り組む際に、どういう想いで、その取り組みを推進しているのか、何を目指してやっているのかという「人」にフォーカスした記事も数多くご紹介させていただいております。

「フジトラニュース」では、富士通社員の行動規範である「Fujitsu Way」に従って、大切にしている価値観がございます。挑戦・信頼・共感と言っているのですが、私どもが社会課題解決に向けて挑戦する姿を信頼していただいて、それが共感としてどんどん輪が広がっていく。そんな風な流れを「フジトラニュース」では作っていきたいなと思っております。

羽村: ありがとうございます。それでは橋本さまも自己紹介とメディアの紹介をお願いできますでしょうか。

橋本: 味の素の橋本です。よろしくお願いいたします。私は、グローバルと国内のオウンドメディア、ソーシャルメディアを運用するチームを担当しております。 具体的には、英語版のグローバルサイト、国内サイト、note、 SNSとしては、英語でのLinkedIn、日本のTwitter、Facebook、こういったものを運用しています。

以前は国内外の味の素グループのSNS型の社内広報プラットフォームであるWorkplace from Metaというものを立ち上げて、その運用まで行うというチームを担当しておりました。

次にオウンドメディアの「ストーリー」についてご紹介します。グループの今がわかるWebマガジンとして、コンセプトは「アクセスするだけで味の素グループが好きになる」として運用しています。当社のグループの取り組みを生活者に親しみやすく、分かりやすい形で届けて、興味関心を持っていただいて、 コーポレートブランドの価値向上につなげていくということを目指しています。

メインターゲットは食品に関心のある生活者なのですが、若年層、より具体的なイメージとしては中学生でも理解していただけるような分かりやすさ、親しみやすさ、そういったものを目指しています。読後感としては「世の中の見え方が変わる。誰かに教えたくなるようなコンテンツ」そういったものを目指しています。

例えば、「SDGsという言葉を聞いたことがありますか」という導入から始めて、だんだん深掘りしていくというものであったり。「味の素®」の生産におけるサステナビリティの取り組みを分かりやすく図式化したり。また、サステナビリティとは、のようなコンテンツを作成したりしています。

最近取り扱っているテーマとしましては、サステナビリティ以外にも、「『アジパンダ®』ワクワク調査隊」など、日本や世界各国の栄養・環境に対する取り組み。そういったものや社長の一問一答形式での紹介記事、「宇宙でアミノ酸発見!~」とか、Z世代向けのあの新商品の取り組みとか、「教えてアジパンダ®」というのがあるのですけれども、日常生活の素朴な疑問に答えるようなものであったり。「世界のリメイクごはん」、「旬のはなし」などの生活者がより身近に感じるコンテンツも掲載しています。

羽村:ありがとうございます。私は、本セッションのファシリテーターを務めさせていただきます羽村と申します。よろしくお願いいたします。

このセッションでは、(これから企業にとって)情報発信が大事になるといっても「一体何を発信すればいいんだろう」「どのように発信すればいいんだろう」「発信するために、どんなことを解決しなければいけないんだろう」という、より現場目線のお話を深掘っていければみなさんのお役にも立てるかな、と考えております。ぜひよろしくお願いいたします。

トークテーマを出していきますので、それに沿ってお話できればなと思います。ひとつめは「オウンドメディアの目的について」です。

先ほどおふたりにオウンドメディアをご紹介いただきましたが、「なぜ作ったのか」「どういったゴールを設定されているのか」そこについてお話しいただきたいと思います。 福村さんから先にお話いただいてもよろしいでしょうか。

福村: 「フジトラニュース」を立ち上げた背景は、私どものサステナビリティ経営に密接に関係しておりますので、その部分からご紹介をさせていただきます。

2019年に、代表取締役社長として時田(隆仁)が就任して以降、私どもはDX企業として、社会課題の解決を目指すというところを発信しておりまして、2020年に社会における弊社の存在意義(パーパス)というところを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです。」と定めました。

このパーパスを設定して以降、サステナビリティ経営に大きく舵を切ったというところなのですが、このパーパスの実現に向けて、大きくふたつ動きがございました。

ひとつめが経営目標に従来の財務目標だけではなくて、非財務目標を入れたことです。

責任あるグローバル企業として

こちらにございますのは、非財務目標のひとつになります。サステナビリティ経営における重要課題を7つ設定して、それぞれにありたい姿とKPIを定めて、ビジネスの中核に組み込んで活動しています。

ふたつめの動きが、サステナビリティを経営目標だけではなくて、しっかりビジネスに落とし込んで活動していこうということで、昨年「Fujitsu Uvance(フジツウ ユーバンス)」という新しい企業ブランドを立ち上げました。サステナブルな世界の実現を目指して、社会課題解決にフォーカスしたビジネスを推進していこうということで、活動を始めております。

これらの動きが、「フジトラニュース」の立ち上げに繋がっていきます。私どもは、お客さまとともに、社会課題解決を目指していきたいと思っておりますので、私どものことを「持続可能な世界を共に目指すDXパートナー」と認知いただきたいと考えています。

一方で、現実としてはイチIT企業であるとか、パソコンの会社だよね、という企業イメージを、多くの人が持っている状況でございます。

そこで「フジトラニュース」を介して、私どもが社会課題解決に取り組んでいる様子をお伝えすることで、少しでもイメージをDX企業とかSX企業に変革していって、私どもと一緒に社会課題解決に取り組んでいきたいと思ってくださる、パートナーさまを増やすというところを目的に「フジトラニュース」を立ち上げました。

羽村: ありがとうございます。それでは続いて橋本さまもお話いただいてもよろしいでしょうか。

橋本: 私たちもありたい姿というのを描いていまして、私たち味の素グループは今は調味料の会社とか、昔からある伝統的な会社、こういったイメージが残っていますが、これを「食と健康の課題解決企業」というパーセプションに変えていきたいな、と思っています。ここにはギャップがあると感じ、課題と捉えています。

私たち味の素グループは、「食と健康の課題解決企業」を目指していますけれども、そもそも私たちの事業は、安定した食資源とか、それを支える地球環境の上に成り立っています。

温室効果のガスの排出とか、プラスチック廃棄物などの環境負荷の課題、社会の課題、そういったものを​改善していくことが必要であり、サステナビリティの取り組みとして私たちは栄養・健康と環境、 この両立と実現を目指さなくてはいけないというところにあります。

具体的にはASV(Ajinomoto Group Shared Value)という「事業をもとに、その社会価値を生み出して、その結果経済価値を生み出す」そういう活動と社員の取り組み、 これを伝えていくという役割がオウンドメディアの「ストーリー」にあると思っています。

「ストーリー」のそのコンテンツを介して、認知・理解、さらに共感、信頼を獲得することが、「食と健康の課題解決企業」としてのパーセプションを獲得するために必要だと思っております。

サステナビリティにおけるオウンドメディア「ストーリー」の位置付けなのですけれども、私たちの情報発信という観点と、ユーザーからの流入という観点の2種類があると思っています。

ストーリーの位置付け

私たちのサイトには、主に投資家向けのサステナビリティ関連コンテンツがあります。例えば統合報告書とか、サステナビリティデータブックとか、そういうものを始めとしてたくさんあるのですけれども、生活者向けのコンテンツではないので、生活者にとっては親しみにくい部分とか、分かりにくい表現が含まれています。

それを「ストーリー」で生活者向けにリライトをして、SNSとも連携をしながら情報発信・拡散をすることで、「食と健康の課題解決」に近づいていくのではないか、と考えています。

またユーザーからの流入に関しましては、SNSからの流入もあるのですけれども、商品・サービスへの興味、疑問、悩み、社会的な課題、そういったものを持つユーザーが自発的にキーワード検索をしてきて、たまたま私たちの「ストーリー」にたどり着く。こういったユーザーもいらっしゃると思います。ここで「ストーリー」を読んでいただいて、興味や共感を持っていただいたところに、私たちが伝えたいテーマとつなげれば、もっとサイト内の情報を調べたくなる、と。

そういった行動変容を(ユーザーに)起こしていただくことを目指しています。最終的には、ユーザー自身で私たちの取り組みについて発信していただけるといいな、と思っております。

羽村: ありがとうございます。富士通さんの「フジトラニュース」に関しては、まさにこのIT企業からDX企業に目指すべき姿、このギャップをどうやって情報発信で埋めていこうか。

味の素さんの「ストーリー」においては、調味料、僕もそれこそYouTuberのリュウジさんぐらい、うまみ調味料の「味の素」をめちゃめちゃ使う派なんですけれども、調味料だけではなくて、「食と健康の課題解決企業」という認知を取るために、さまざまなサステナブルな活動等も含めて発信されているということがよくわかりました。

効果的な情報発信のための編集方針とは

羽村:こういった目的で発信されている内容をどうやって発信しているのか、その具体的な内容について、もう少し切り込んでいきたいなと思っております。

次のトークテーマですが、オウンドメディアの発信内容や、体制についてと題しました。やはり気になるのが、どうやって記事を作ってるんだろうといったところです。 先ほど橋本さんが「発信する内容がどうしても生活者について対してはわかりづらいので、生活者向けにリライトしている」というお話もありました。

何か編集方針のようなものがあるのであれば、教えていただきたいなと思うんですけれどもいかがでしょうか。

橋本: ユーザー目線で親しみやすく というものを目指してはいるのですけど、けっこう難しいことだと思っています。興味のない話題でも、 いかに興味を持ってもらえるか、自分ごと化してもらえるか、チーム全体で方針としていつも考えています。

いまさら聞けない話題については特に丁寧に説明したりして、共感しやすい話題から、私たちが伝えたいテーマへとつなげていくという方針で進めています。

羽村: ありがとうございます、何か事例とかあれば具体的に教えていただきたいんですけれども。

橋本: そうですね、いくつかご紹介したいと思います。

今映していただいてるのが「CDP「気候変動Aリスト(最高評価)」に選定!味の素グループの取り組みとは?」という記事になります。けれども(これは)企業主体の難しいお題になっています。 このような記事に関しては「気候変動Aリストってなんですか」「気候変動って、そもそもなんですか」。そういった基礎知識から入って学びに繋げつつ、 興味関心を持ってもらって、だんだん理解してもらい能動的な態度(や行動)に繋げていけるような取り組みをしています。そうやって理解や共感を得た上で、私たちの伝えたいことを伝えられるように、工夫しているという形になります。

もう1つ、「サステナビリティってなに?いまさら聞けないサステナビリティ関連用語を学ぼう①」という、一見私たちの取り組みとは離れてる部分はあるのですけれども「いまさら聞けないシリーズ」ということで、そもそもサステナビリティってなんですか?というところから入って、なぜ注目されてるのか、 どうして企業は取り組んでいるのか。サステナビリティとSDGsって何が違うのか、そういったところから、私たち味の素グループは、こういう取り組みをしています、統合報告書があって、そこに詳しく書いてあります、と。

このような流れで(ユーザーの関心から企業理解に)繋げていくという事例になっています。 ひとつひとつ試行錯誤しながら対策を練っている感じです。

羽村: 福村さんにも、具体的な事例をお話いただきたいなと思っておりますがいかがでしょうか。

福村: 私どもも、編集方針としては生活者に共感していただくことを重要視しておりまして、 社会課題解決に向けた弊社の取り組みを生活者に共感していただきやすい形で発信できるかというところに注力しております。

加えて、先ほど大切にする価値観というところで申し上げた、挑戦・信頼・共感という情報につながるかという点にも気を付けて編集しております。

記事例を出して、ご紹介させていただきます。この「デザインとテクノロジーで、誰しもが笑顔になれる世界へ」という記事は、耳の不自由なろう者の方々に、振動と光で音を届けるデバイスを開発した社員のインタビューになります。

この取り組みは、社内スタートアップで始まったという背景がありまして、どんな原体験があって開発に至ったのか、どういう想いで挑戦をし続けてきたかなどを聞いております。また、このデバイスは、ろう学校の子供たちや先生方にたくさんのご協力をいただきながら一緒に作り上げていったものになりますので、 いかに信頼関係を築いていったかという過程もご紹介しています。なお、この活動は、ありがたいことにいろんな企業や団体に共感していただき、イベントやワークショップといったさまざまな形で発展した活動をさせていただいています。そういった形で、活動が共感として広がっていくさまも、ご紹介しております。

この記事は共感が広がっていく姿までご紹介していますが、まずは弊社が挑戦する姿、そしてお客さまから信頼していただいている姿をフジトラニュースでご紹介して、それが共感という形でどんどん世の中に広まっていくと、私たちの目指すパーセプションチェンジっていうところに繋がっていくんではないかなと考えております。

羽村: ありがとうございます。信頼、挑戦、共感この3つ非常にわかりやすいですよね。

弊社もオウンドメディアの運営をお手伝いさせていただくなかで、読後感っていう言葉を使うんですが、「この記事を読んでどんなことを感じましたか」って言った時に、確かに今の記事はその3つが感じられるような記事が作られてるんことが非常によくわかりました。

もうひとつ、お聞きしたいところがございます。記事を作っていく上で今お2人が教えていただいたような記事っていうのは、どうやって企画を立てているのか。 いわゆるネタ探しっていうのは、どういうふうにやってるのか、そこについて教えていただきたいんですけれども、どうでしょうか。

橋本: 先ほども少し触れましたが、私たちは統合報告書とかサステナビリティデータブックとか、投資家向けのコンテンツをけっこう持っています。そういったところを生活者向けに、落とし込んでリライトしていく形でやっていたり、SNS型の社内広報のプラットフォームとして、味の素グループの社内広報が海外含めて広がっていて、そこにたくさんの情報が落ちています。なので、その情報を拾って現地法人とか各グループ会社とコミュニケーションをとって、更なる情報を得ている。そういう形になります。

福村: 私どもはプレスリリースや、社内報の中から先ほど申し上げた編集方針でピックアップして、企画を考えて おります。

あとは事業部門から掲載したいと打診いただくこともあるので、その中からも企画しております。

羽村: ありがとうございます。情報収集という意味でも、部門を横断していくことが必要になってくるのかなと思いますが、よく話を聞くのが大きな組織だと縦割りになっていて(事業部門は)業務がある中で、なかなか協力いただけないっていうことも耳にすること多いんですが、 そういったこととか、悩み、もしくはこういう風にやったらうまくいくよといったアドバイスなど、もしあれば教えてください。

橋本: 私たちは、比較的グループ社内で協力的にしていただいてるかなと思っています。背景説明とともにプロット付きで依頼をすることで、取材や原稿確認してほしい理由はこうで、 何のために私たちはこうやって「ストーリー」で記事を書いてるのか、そういうところを丁寧にお話しすることで、協力的にいただけてるという認識でいます。

福村: 私どもも、みなさま協力的に対応してくださっています。プレスリリースとか社内報を見て、突撃する形で今までかかわりのない部門の方に打診をするのですが、背景とかどういう目的とかどういう想いで運営してるかというところをご説明すると、みなさま自身の取り組みをアピールしたいという想いがありますので、ご協力いただけます。

あとは、一部の営業から、お客さまと弊社が社会課題に取り組んでいるさまを発信することは、お客さまのメリットにも繋がるため、お客さまとのリレーション強化のツールにもなるといった声もいただいたりしております。

羽村: ありがとうございます。これからの広報は、広報だけのお仕事ではなく、それこそ予算編成も横で連合して予算を取りに行ってという話が前のセッションでもありましたが、営業や他の部署の方とも効果が連携していく。そういった社内理解が得られてるっていうのは、非常に良いことだなというふうにお話を聞いて、感じました。

運営していく上で、実際どのくらいの体制で記事を更新しているのか、ここら辺もちょっと気になる方がいらっしゃるのかなと思うんですけれども、そこら辺も教えていただいてよろしいですか。

橋本:私たちの方ですと、社内にはマネージャーの私と実務担当1名が兼任でやっているのですが、 制作会社さんと連携してやっています。プロジェクトを組んで、毎週定例会議をしながら、記事の内容だけではなくてレビューして仮説を検証するとか、そういう形で考えながら試行錯誤してやっているという感じですね。

福村: 「フジトラニュース」は幹部社員1人と担当3人で運営しておりまして、記事と企画・構成は社員が行って、動画撮影や一部コンテンツ制作は、外部のみなさまにご協力いただいています。 現場の声をなるべくそのまま伝えたい想いがあり、極力コンテンツは社内で作成できるように動いておりまして、事業部門が執筆したものを編集部で校正したりですとか、編集部の方で取材執筆したりとか、そういう形で運営しております。

KPIと効果、そして発展のための次なる課題とは

羽村: では、早速次のテーマにまいりましょうか。 「オウンドメディア運営で実感している効果や、抱えている課題について」ということで、今度は定量・定性含めて、お話をお聞きできればと思っております。

両社にとってはさまざまな部門を越えたご理解を得られて情報発信にも協力的でということをお聞きできましたが、場合によっては、この活動(オウンドメディア運営)に対して「どういった効果があるんだ」 「なぜやるのか」(社内に)ご理解いただけてない企業さまも、もしかしたらいらっしゃるのかなと思います。 ですので、まずはおふたりからそれぞれのオウンドメディアにおいてのKPIってどんなものを設定しているのか、それからそのKPIを見ていく上で、KPIの達成だけではなく、活動ってこんな効果があったんだよっていう、気づきがありましたら教えていただきたいと思うんですけれどもいかがでしょうか。

橋本:KPIに関しては、大きく3つに分けています。ユーザーの流入数と、サイト内の回誘率と、記事ごとの読了率ですね。 特に今年度は回遊率と読了率に力を入れていて、ユーザーの満足度の向上、ファン作り、 こういったものを目指しています。なぜかというと、当社の取り組みへの興味関心を高めていく必要性があるので、それに対してのKPIとしては、回遊率と読了率に力を入れる必要があるのかなということでやってみています。で、効果実感的なところで言いますと、 「SDGsってなに?味の素社の考えるSDGs」という記事があるのですけども、これのPV数ですね。ユーザーさんの流入数とその回遊率が非常に高いので、私たちのサステナビティ関連の情報を知りたい人はいるんだなというところは実感できています。

そのSDGs以外にも、DXとかフードテックとか、Z世代とかそういうキーワードに関連する情報のアクセスが多いのと、あとはいまさら聞けない素朴な話題、こういったもののアクセスは多いです。

福村: KPIはPVを設定しております。また効果測定として、「フジトラニュース」に、記事を5点満点で点数をつけられて自由コメント欄に記載できるアンケートを実装しています。

アンケートの自由記載欄には、富士通の企業イメージの変化を感じられるコメントが複数ございましたので、そういった点でも目的のパーセプションチェンジというところに、少しずつ貢献できているのかなと考えています。

 あとは記事にてご紹介した事例が、お客さまからのお問い合わせに発展したというケースもありましたので、そういうところも今後増やしていきたいなと思っております。

羽村: ありがとうございます。直接アンケート機能を設けてるっていうのは、非常にわかりやすくて良いですよね。

福村: そうですね、事業部にアンケート結果を共有すると、声がわかると喜ばれますので、そういうところも活用してみなさまにご協力いただいています。

羽村: ありがとうございます。こういったサステナビリティ関連、SDGs関連、企業のコーポレートコミュニケーションというのは、(記事が一般のユーザーに)見られないんじゃないのかと、昔であれば思われていたのかもしれないところですが、おふたりのお話 お聞きしていると、やはり非常に生活者の方々が注目しているんだなという風に感じました。

例えば統合報告書というキーワードありましたが、統合報告書はいわゆる投資家の方々向けの情報ととらえられる思うんですけれども、そこを飛び越えて、おふたりが情報発信をされて、さまざまな方のアクセスがあるっていうことを見て、ご自身たちの活動というのがより重要になっていくっていうのを実感されていると思います。どんな広がりがあるとより素晴らしくなるのかということを聞きたいなと思ったんですけれどもいかがでしょうか。

福村:広がりというところで申し上げますと、今までのオウンドメディアで発信する内容って、どうしてもその会社のソリューションですとか商品紹介という部分があったのかなと思うのですが、その役割が少しずつ変わってきているのかなと思っています。会社の中にいる人たちがどういう想いで、どんな取り組みをやっていて、何を目指しているのか。そういうところにフォーカスして発信していくことで、共感を広げ、企業のファンを増やしていけるのだと思っております。

橋本:そうですね、オウンドメディアの強みって、社会とのつながりだったりタッチポイントを活用できるとか、そういった点があるんじゃないかなと思っていまして、他の媒体とか。グループ間、企業間連携とかも含めて、我々の取り組みがそのユーザーから発信されるような形というものが、今後発展的に出てくるといいなと、そういうものを目指したいなと思っています。

羽村: オウンドメディアがきっかけとなって、ユーザーが(その内容をうけて自分の言葉で)発信をする。確かにおっしゃる通りだなと今お話をお聞きしてて感じました。 次は意地悪な質問になるんですけれども、良いことばかりではなくて、今現状抱えられている悩み。課題などもお聞きしたいんですけれども、何かございますでしょうか。

橋本: 定性的な効果という点では、悩んでいます。「ストーリー」のリピーターの行動変容はどうなってるのかなとか、パーセプションチェンジは起こってるのかなとか、企業の好感度、好意度、こういったものはどのぐらい上がっているのだろうと、我々のデジタルコミュニケーションはどのぐらい、そういったものに貢献できているのか、どのぐらい、パーパスに近づいているのかなというところは、意外とわからないところがありまして、福村さんのお話とかも聞いていて、我々もちょっとアンケートの実装をやってみようかな、と思いました。

福村: 私どもはふたつ、課題に思っていることがございます。

ひとつめが、具体的な事例のコンテンツがまだまだ不足しているというところです。 オウンドメディアの目的のところでも申し上げた サステナビリティ経営に向けて、私ども変革を始めているところなのですが、やっぱり変革の始めって、ビジョンが先行していくもので、そのビジョンに合わせた具体的な事例を発信していくことで共感しやすいコンテンツになると思っております。そのため、具体的な事例コンテンツを、これからどんどん増やしていきたいなと考えています。

ふたつめは、社内外での「フジトラニュース」の認知度が、まだまだ低いなと感じているところです。その認知度をさらに高めてお客さまやみなさまに読んでいただいて、社会課題解決のためのアイデアとか、評価とかをアンケートなどから積み上げていきたいなと思っております。

羽村: ありがとうございます。よろしければぜひお互いに質問など、何かございますでしょうか。

橋本: 私から福村さんに。アンケートをとられてると思うのですけれども、その数値化して評価されているというところで、好意度や行動変容はどのぐらいまでアンケートで深掘りできるのかという点が気になっています。

福村: 私どもも、もっと深堀りしたいと考えているところです。一方で、アンケートをあんまり細かく設定すると、それこそ答えることが多くなってしまって回答いただけないので、今は簡単な5段階評価と自由コメント欄しか設けられていない状況です。

ただ、そのコメント欄では「社会課題解決に向けて富士通が頑張っていることをすごく応援しているよ」とか「今までとイメージが変わった」というようなコメントをいただけることがございまして、そういうところからイメージの変容を感じております。

橋本: ありがとうございます。

福村: 先ほど、お客さまの方から発信していただけるように…というお話があったと思いますが、どういう工夫をするとお客さまから発信していただけるようになると考えていらっしゃるか、教えていただけると嬉しいです。

橋本: 今、私たちは「ストーリー」だけではなくて、他の媒体との連携もやっています。例えばSNSではツリー投稿をして、そのリンク先に「ストーリー」(の記事)をつけたりしています。SNSでトリガー的に発信をしつつ、詳しくはこちらに書いてありますよ。みたいな感じで「ストーリー」へ誘引すると。(そうするとさらに)「ストーリー」(の記事を)読んでもらった人が、SNSで「こんな記事があった」とか「こんな面白いこと書いてある」とか「こういう取り組みいいよね」とか、そういう発信をしてもらう形を目指して、試しながらやっています。

福村: やっぱり拡散のためにはSNSが大事ですよね。私どももSNSをうまく活用したいなとは思っていますが、どうやったら拡散していくかとか、私どもから手が離れたところで我々の活動をご紹介していただけるかとか、そういうところを今後工夫していきたいなと思っています。

橋本: TwitterとFacebookでも、フォロワー層が違ったりするので工夫しながら、ネタを変えたりとかしても面白いですし、最近だとnoteを始めまして。SNSとオウンドメディアの中間みたいなものです。特に若年層向けにどういう発信ができるかなというのは、トライアンドエラーでやったりしています。それで、UGCをうまく生みだしていけたらと考えています。

福村: もう1点お伺いしてもいいですか。若年層向けってことで、Z世代向けのコンテンツの話があったと思いますが、私どももZ世代に読んでいただきたいなという想いがあり、いろいろ考えているのですが、 つくり手である社員がZ世代じゃないので、Z世代に響くコンテンツを考えるのが難しいなと思っております。そういうところで味の素さんが何か工夫されていることがございましたら、教えていただけると嬉しいです。

橋本: 私たちで今やっているのは、Z世代向けの商品開発や取り組みが、社内で実際にあったりしますので、そういったところは取り上げていくという形を注力してやっています。

福村: ありがとうございます。

羽村: さまざまな企業さまとお話をしていくと、皆さん共通するのが「弊社の活動って、そんなにすごいことやってないんですよ」ですとか「注目されないんです」っていうお話をいただくことがすごい多いんです。おふたりがやられてる活動では、出来上がったものを報告するというよりも、取り組んでいることをつぶさにこう出されています。このセッションのタイトルである「プロセス」っていうものを、弊社は非常に重視しておりまして、 (おふたりの関わられているオウンドメディアのように)このプロセスを開示していくことこそがユーザーの信頼を獲得していき、最終的には信頼が生まれ、ユーザーに自分のストーリーとして語っていただけると。そんな循環になるんじゃないのかなと思っておりました。

今日のセッションの話で「うちはまだまだ活動がしっかりとできていない」「途中で出すのは怖い」というご担当者さまいらっしゃいましたら、何かしらのヒントになれば良いかなと思って、聞いておりました。

終了のお時間がさし迫ってまいりました。 最後におふたりからセッションを通してみて、何か新しく気づいたことや一言、(セッションを)見ている方にお伝えしたいことなどいただきたいなと思うんですけれどもいかがでしょうか。

橋本: 私たちも、オウンドメディアでまだまだ取り組まなければいけないことがありますし、トライアンドエラー、試行錯誤でやっています。

社会とのつながり、タッチポイント活用、そういったところではオウンドメディアの強みがあるなとすごく感じていますので、まだ取り組んでいない企業の方とかいましたら、是非ご検討いただくといいのかなと、担当者をやっている実感としては思います。

福村さんと羽村さんとこのようにお話ができて、私自身も学びが多かったりしますので、こういう積み重ねが大事なのだなと思っています。

福村: そうですね、さきほど羽村さんからお話ありましたように、実は自分の会社の取り組みについて、 そんなにすごくないよと思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、広報の私たち自身が会社のファンとなって、応援団となって、お客さまとの接点を強化するハブになれればいいなと思って活動しております。みなさまもぜひ、そういうところを一緒に頑張っていただけると嬉しいなと思います。私もフジトラニュースをこれからどんどん育てていって、みなさまに楽しんでいただけるコンテンツにしていきたいと思っておりますので、お時間ありましたら、ぜひのぞいてみていただければなと思います。

羽村: ありがとうございます。先ほどセッションでも「自ら動いて、人を動かす広報」というキーワードが出てきておりましたので、 自らが一番のファンになるからこそ、人を動かせるっていうところがおうかがいできたと思いました。 それでは本セッション、以上で終了となります。短い間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。

福村: ありがとうございました。

橋本:ありがとうございました。

※この対談の模様は動画でも公開していますのでぜひご覧ください

このイベントを主催したインフォバーンでは、新しい価値を生み出すための情報発信をご支援しています。「成功するオウンドメディアづくり」を始めとするコミュニケーション施策の事例についてはこちらでご紹介しています。情報発信に関するご相談・お悩みがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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EX Journal編集部

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