オウンドメディアで見つめ直す「人」の価値|キヤノンマーケティングジャパン株式会社様 事例記事のメインビジュアル

2023年10月にローンチしたキヤノンマーケティングジャパン様(以下、キヤノンMJグループ)のオウンドメディア『ミライアングル』。インフォバーンは初期のコンセプト設計からコンテンツ制作、アクセス解析まで一貫して支援しています。

今回は、このプロジェクトを担当されているキヤノンMJグループ・ブランド戦略部の梶谷優様とデジタルコミュニケーション企画部の田代瑶子様、そしてインフォバーンのプロジェクトマネージャー・永瀬夏海とコンテンツプランナー・田中圭子に『ミライアングル』誕生の背景や現在の成果、今後の展望などを伺いました。

より多くの人に自社の魅力を届けるためWeb媒体へ挑戦

キヤノンマーケティングジャパン 梶谷優様
キヤノンマーケティングジャパン 梶谷優様

――はじめに、キヤノンMJグループがオウンドメディアを立ち上げるきっかけとなった背景を教えてください。

キヤノンMJグループ 梶谷優様(以下、梶谷):元々、20年以上前からステークホルダーとのコミュニケーション施策の一つとして広報誌『C-magazine(Cマガジン)』を年に4回発行していました。ただ、これは主にお取引先やパートナー企業に対して紙媒体で直接お渡しするものだったので「私たちと接点がない新しい層の方に、キヤノンMJグループの取り組みや理念等をなかなか知っていただけない」「紙媒体なのでしっかりとした効果測定が困難」といった課題がありました。そうした中、コロナ禍となり顧客やパートナー企業先への訪問が制限されたため、『C-magazine』を届けることも出来なくなってしまったのです。そうした背景から、以前より検討されていたオウンドメディアの立ち上げが加速度的に進み始めました。

――同じ頃にパーパスの検討もされていたと伺いました。

梶谷:はい、企業全体としても「これからますます複雑で深刻になる社会課題に対して、私たちの幅広いビジネスの価値をもっとお客様に届けたい。そのためには、社員の想いを一つにし、ステークホルダーの皆さまと共に課題解決に向けた取り組みを行うことが必要だ」と考えていました。そこで改めて「私たちはどういう企業で、これからどんな未来を目指していくのか」という社会的存在意義を社内外に示すパーパスの必要性を感じ、検討を進めていた時期でした。

その中で、改めて「キヤノンMJグループの強みは何か」や「私たちだからこそ提供できる価値とは何か」といった議論を重ねました。パーパスの検討とオウンドメディア立ち上げの検討はそれぞれ別の部署で行われていましたが、上記のことを整理するという意味では共通の目的を持っていたため、具体的な施策段階でこの2つを上手くリンクすることができました。

キヤノンマーケティングジャパン 田代瑶子様
キヤノンマーケティングジャパン 田代瑶子様

キヤノンMJグループ 田代瑶子様(以下、田代):私が主に担当しているコーポレートサイトに関しても、パーパス制定の検討を受けて本格的にリニューアルを進める時期に入っていました。通常企業のWebサイトは、企業視点の会社紹介や製品・サービスの説明といった「機能的価値」をわかりやすく伝えることに重きを置く側面があります。もちろんそういった情報を訴求することも重要ですが、グループ社員が情熱をもって挑戦する姿や取り組みの裏側、そこにかける想いといった「情緒的価値」を伝えることも同じくらい大切です。そのためリニューアルの際には、オウンドメディアをサイトのメインコンテンツに置くことで、これらの課題を解決していきたい、と考えました。

――社内でパーパス、オウンドメディア、そしてコーポレートサイトとそれぞれの検討が進む中で徐々に方向性が一つにまとまっていったのですね。インフォバーン側は提案当時、どのようなことが印象に残っていますか。

永瀬:お話をいただいた時は、確かにサイト内の各々の情報は充実しているのですが、企業全体としての“形”が少し見えづらいな、という印象を持ちました。そこで、キヤノンMJグループ様のさまざまな業種やサービスをつなぐ一つの“軸”、といいますか、その根底に流れる社員の方たちの「想い」を見せていくことが大事なんじゃないか、という点を重視して提案を行いました。

――インフォバーンにご依頼いただいたポイントは何だったのでしょうか。

梶谷:私たちはBtoBからBtoCまで幅広い事業を展開しておりますが、特に業種・業界に特化した事業や、広く世の中へ魅力を伝えづらい専門的な知識が必要なBtoBならではの課題をインフォバーンさんがよくご存じだったことが理由の一つです。また、私たちが悩んでいるところに最後まで伴走してくれそうな印象が最初からありました。

田代:ただサイトをつくるだけではなく、数年後を見据えた提案をいただけたことが印象的でした。立ち上げ時の「きちんと更新頻度を保っていけるのか」という不安についても、制作過程やサポート範囲を丁寧に示しながら「一緒に考えていきましょう」と私たちの気持ちをしっかりと受け止めてくださったので、この方たちと一緒にプロジェクトを進めたいと思いました。

丁寧に深く。議論し合って出したKPI設定のプロセス

『ミライアングル』トップページ

――改めて『ミライアングル』というメディアについて教えてください

梶谷:ローンチ以来、「キヤノンMJグループのいまと未来を、想いとともに伝えるメディア」をコンセプトに、毎月2本のほどの記事を公開しています。社員インタビューから解説記事まで多彩なラインナップと、それぞれ人の「想い」に迫る切り口が特徴です。

田代:先述した通り、企業全体のパーパス制定も同時並行で進んでいたので、それらの要素やメッセージを段階的にサイトのデザインや構成に落とし込み、統一した世界観を作り出していきました。結果的に『ミライアングル』は2023年10月にローンチし、パーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」は2024年1月に社外公表しましたが、パーパス実現に向けた私たちの姿勢を具体的に表現する場所として『ミライアングル』があって、本当に良かったなと思います。

キヤノンMJグループのパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」
「ミライアングル」のロゴの画像。
キヤノンMJグループのパーパス(上)と『ミライアングル』のロゴ。パーパスのシンボルマークのカラフルなデザインがロゴにも反映されている

――いざオウンドメディアを立ち上げる際、特にどのような議論が交わされたのでしょうか。

田代:最初のコンセプト設計と効果測定(KPI)は、本当にたくさん議論した記憶があります。

「ミライアングル」でのKPIとKGIの考え方。サイト上で計測できる数値をKPIとして置き、それらがどのKGIに寄与したかを見ていく。
『ミライアングル』でのKPIとKGIの考え方。サイト上で計測できる数値をKPIとして置き、それらがどのKGIに寄与したかを見ていく

特に効果測定に関しては、数字を追うだけであれば、広告をたくさん出せばアクセス数も伸びていくと思うのですが、今回のメディアはそれでは意味がなくて。業容認知や社名認知、興味関心がKGIとして根幹にあるので、どの数字がどの目的に寄与するのか、ということを一つひとつインフォバーンの皆さんと定義していきました。

そのおかげでアクセス数が伸びたり下がったりしても、一喜一憂せずに評価しやすくなったと思います。それぞれの数字に意味を持たせながらKPIを設定しているケースは他社ではあまり見られないらしく、外部の情報交換会などでは「詳しく教えて」と聞かれることがありますね。

インフォバーン コンテンツプランナー 田中圭子。
インフォバーン 田中圭子

田中:ターゲットの話もかなり議論しましたね。効果測定する際にも「記事をどういった人に読んでもらい、どのようにキヤノンMJグループの印象を変えたいのか」という部分が大事なので、コンセプト設計の早い段階でターゲットを明確にしていきました。

『ミライアングル』のステークホルダーはどこまでを含むか、といった洗い出しから始め、その範囲を広げたり狭めたりしながら、「どういったビジネスパーソンに情報を届けたいのか」を中心に議論を深めていきました。

――『ミライアングル』は、読者ターゲットの「認知」「興味」「信頼」の各フェーズに応じた多岐にわたる記事シリーズの展開が特徴です。どのように設計していったのでしょうか。

キヤノンMJグループへの信頼度・好感度が「低」から「高」へと進むプロセスを示すインフォグラフィック。

このプロセスは「認知」「興味」「信頼」の3つの段階に分かれています。各段階の下には、それぞれに関連するコンテンツのタイトルが配置されています。



認知段階のコンテンツ:

切り拓くミライ

3分でわかる〇〇

・・・「気になる」を訊く?

興味段階のコンテンツ:

こんやところにキヤノンMJ

未来への種

信頼段階のコンテンツ:

情熱の源泉

挑戦を追う

キヤノンMJのいま

私たちの想い
読者のキヤノンMJグループに対する信頼度・好感度の度合いによって設計された記事シリーズ

梶谷:キヤノンMJグループは大企業から個人のお客様まで幅広いステークホルダーに対してさまざまなソリューションや製品・サービスを展開しているので、それらの幅広い情報を網羅するためにも、どんなテーマや社員が出演しても形として見せていくことができる枠組みが必要でした。読者の知りたいと思う情報と、キヤノンMJグループが伝えたい情報のバランスに悩むところもあり、インフォバーンさんには私たちに対する読者の認知や興味、信頼の度合いによって内容を細かく差別化したシリーズをご提案いただきました。

田中:そうですね。キヤノンMJグループ様の社名や、何をしている企業なのかを知らない読者には、識者や著名人のインタビューや、技術トピックといった誰でも読みやすいシリーズ、一方ある程度知っていて、より深く知りたいと興味を持ってくださっている読者に対しては、社会課題やプロフェッショナルな社員の取り組みを紹介するシリーズ、といったように都度、具体的なイメージを交えながら設計していきました。

ローンチから2年。徐々に広がりつつある「熱い想い」

対談をするプロジェクトメンバー4人の写真。

――ローンチから2年たった現在、成果や手ごたえはいかがでしょうか。

梶谷出演してもらった社員には後日アンケートをとっているのですが、「自分の仕事を外部に発信したことで責任感が増した」「いろいろな人に記事を読んでもらえてモチベーションが上がった」といった声をたくさんもらっています。また、出演した本人だけでなく、その記事を読んだ他の社員にも共感が生まれたり、熱い想いが伝播したりしているな、と実感があります。

さらに、記事が商談のきっかけにもなった例もあります。これから取引をさせていただこうとキヤノンMJグループからアプローチしたお客様が、公開された記事を事前に読んでくださっていて、その後の商談がスムーズに進んだこともあったようです。このような事業支援にもつながっていることをうれしく思います。

田代:私自身、自分の担当していない仕事やその担当者について『ミライアングル』の企画を通して知ることができ、多くの気づきがありました。「会社を知る」という意味でもこのメディアが良いきっかけになっていると思います。また「自分たちの取り組みを紹介してほしい」といった相談も社内から出るようになってきています。

ローンチから1年半くらい経ったときに実装した読者アンケートについても、回答率が高く、好意的な回答をいただけています。読者の反応を数値以外で見ることができる貴重な場なので、今後も継続していきたいと思っています。

永瀬:『ミライアングル』という名前も含めてキヤノンMJグループ様の色が本当にそのまま出せているな、と思います。外部発信への意識が高くていらっしゃる足立社長を筆頭に、出演してくださる社員の皆さんがとても協力的なこともあり、現在のような良い循環が生まれているのではないでしょうか。

インフォバーン プロジェクトマネージャー 永瀬夏海。
インフォバーン 永瀬夏海

――一方で、立ち上げ後に見えてきた課題についてはいかがでしょうか。

梶谷:やはり「キヤノンMJグループが発信したい」という事業や人物に対して、果たして本当に読者が興味を持ってくれるのか、といった需要と供給のバランスがとても難しいと感じています。

また「この取り組みや社員を記事化すればきっと面白くなるだろう」と思い、その担当社員にインタビューしても、本人が自分自身の“すごさ”を自覚していないといいますか、言語化できないといいますか。読者目線で見たら参考になるようなすごい努力や工夫を本人は当たり前のこととしてやっているので、簡単にはその魅力を聞き出せないところがもどかしいと感じるときがあります。もちろん、あの手この手で最終的には引き出していきますが(笑)。

田代:逆に、先進的な技術について専門的な内容に入り込む記事では「読者に興味を持っていただけるだろうか」と不安に感じることもありましたが、公開後にお客様に読んでいただくと、意外にもとても良い反応が返ってきました。自分たちの視点や先入観だけで判断してはいけないんだな、と改めて気付かされた経験でした。

――今までの中で思い出深い企画について教えてください。

梶谷:記事の中で「未来をより良くしたい」という想いを抱き、挑戦を続けるプロフェッショナルの方々にお話を伺う「切り拓くミライ」というシリーズがあるのですが、新たにこのシリーズをつくろうと検討を始めた当初は、どういった方に取材するか、判断がとても悩ましくて……。私たちキヤノンMJグループのメンバーは最初、SNSなどでフォロワー数の多い有名人の方にご出演いただければ注目度が高く記事も読んでいただけるだろう、と安易に考えたのですが、インフォバーンさんから「本当にその選び方でよいのか」と指摘され、「そもそも私たちは何のためにこのシリーズを新たにつくろうとしていたのだろう。ただ読んでもらえればよかったのか?」と、ハッと我に返ったんですよね。そのことがとても印象に残っています。

永瀬:「ただ有名な人ではなく、KPIを設計した目的に立ち返って考えてみてはいかがでしょうか」とお伝えしました。ここに正解はないので、本当に難しいところではありますが、やはりキヤノンMJグループ様のパーパスやマインドに沿った方、というところが大事な部分なのではないかと思いました。

田代:これまで『ミライアングル』を通じてさまざまなグループ社員に出会い、取材してきましたが、人柄だったり仕事へ向き合う想いだったりに本当に毎回感銘を受けます。社長の足立もよく言っていますが、私たちの会社は「人」が支えているんだな、と取材を通じて改めて感じることが多いですね。

『ミライアングル』を会社の資産に

――今後、『ミライアングル』をどのようなメディアに育てていきたいですか。

梶谷:やはり会社のブランディングの軸となるような存在にしていきたいですね。現在でも記事が営業ツールの一端を担っていると思いますが、今すぐにビジネスに役に立つだけではなく、中長期的にコンテンツ自体が会社の資産になればいいな、と思っています。また引き続き、出演した社員だけではなく、記事を読んだ別の社員のエンゲージメントも高めていけるような良い循環をつくっていきたいです。

田代:コーポレートサイトを運営している側からみても、企業情報のメインコンテンツにしていきたいという気持ちがあります。情報の網羅性から考えても経営と繋がる部分も非常に多く、今後も自信を持って情報を拡充していく方向で進めていきたいですね。

――最後に、インフォバーンに期待することを教えてください。

梶谷:今までも丁寧にサポートしてくださっていますが、『ミライアングル』はさらに進化していかなければならないと考えています。私たちが思いつかないような新しい考え方や見せ方をどんどん提案していただければ助かります。

田代:私たちも積極的に新しいチャレンジをしていきたいという気持ちがあるので、その際はぜひ背中を押してしていただけたら嬉しいです。


永瀬:キヤノンMJグループ様が目指す「ミライ」の実現に向け、引き続き新しい挑戦をサポートさせていただきます!

対談をするプロジェクトメンバー4人の写真。

撮影|鈴木真弓
取材・執筆|滝口薫(インフォバーン)

PROFILE

梶谷 優様のプロフィール画像。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
ブランドコミュニケーション本部ブランド戦略部
梶谷優

ブランド戦略部門にてコーポレートブランディングを軸としたブランドマネジメントやコンテンツ制作・運用を担当。

田代 瑶子様のプロフィール画像。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
ブランドコミュニケーション本部デジタルコミュニケーション企画部
田代瑶子

Web部門にてコーポレートコミュニケーションを中心に、デジタルコミュニケーション戦略の立案・実行やオウンドメディアの運用を担当。

株式会社インフォバーン
コミュニケーションデザイン事業部
永瀬夏海

エンターテインメント誌の編集、医療メディア、フリーライターを経て、2021年にインフォバーンに入社。現在はプロジェクトマネージャー、コンテンツディレクターとしてコンテンツ制作を手掛ける。

株式会社インフォバーン
コミュニケーションデザイン事業部
田中圭子

Web制作会社でデザイン・ディレクション業務に携わった後、2013年にインフォバーンに入社。現在はBtoBを中心に、コミュニケーション設計、コンテンツ制作を担当する。

制作体制

プロジェクトマネージャー|永瀬夏海
コンテンツプランナー|田中圭子
コンテンツディレクター|青木淳、阿部泉希、今田奈々、滝口薫
Webディレクター|中原清暁、管野さつき
アートディレクター|新谷有加
※2025年11月時点

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