これからのサービスデザイナーに求められる役割とは? Service Design Global Conference 2025 参加レポートのメインビジュアル

こんにちは。IDLのデザインリサーチャー 阿部です。
2025年10月に、アメリカのダラスで開催されたサービスデザインのカンファレンス「Service Design Global Conference 2025」に、弊社のデザイナー 山岸と参加してきました。

本レポートでは、現地の様子や講演で語られた内容などのカンファレンスの概要をお届けします。

2026年1月中旬に、弊社京都オフィスでカンファレンスの報告会を実施いたします。
詳細は本記事の末尾をご覧ください。

Service Design Global Conferenceとは?

Service Design Global Conferenceは、サービスデザインの発展と普及を推進する国際的な組織である“Service Design Network”が主催する、サービスデザインの最先端に触れられる世界的なカンファレンスです。

今年はのべ45カ国のサービスデザイナーがカンファレンスに集まりました。オンラインも合わせると、参加人数は1,000名以上だったそうです!

今年のテーマは “ Business Transformation By Design -デザインによるビジネス変革- ”。

AIなどに代表されるテクノロジーの発達や、企業の経営層のデザインに対する考え方の変化などを受け、今後サービスデザイナーはどのように価値を発揮すべきなのか。それらに応答するための様々な示唆が、3日間にわたるワークショップや講演を通じて共有されました。

会場に寄せられた、本年度のテーマに関する様々な意見
本年度のテーマについて、参加者の様々な意見が寄せられていました

世界のデザイナーたちと一緒に最先端のメソッドに触れるワークショップ

カンファレンスの初日は、先進的なサービスデザインメソッドを体験できる様々なワークショップが、会場周辺のオフィスや会議室で行われました。

私はサービスデザインにおけるAIファーストのアプローチ、山岸は複雑な課題に応答するためのシステミックデザインの手法を学ぶワークショップに参加しました。

私が参加した「サービスデザイン×AI」のワークショップでは、サービスデザインにおけるAI活用のフェーズとして、大きく二つの段階が挙げられました。一つは、既存の業務を変えずにAIへ一部作業を任せる効率化フェーズ。もう一つは、業務の進め方を見直し、AIとともに業務を推進するAIファーストフェーズです。今回は、特に後者のフェーズにおけるプロジェクトの進め方を簡易的に体験するワークを行いました。

ワークに取り組む中で、調査にAIを用いるだけでなく、調査項目の設計からAIと進めるプロセスが印象的でした。また、AIが曖昧な与件さえも噛み砕き具体的な提案をしてくれる今、より重要になるのが情報を取捨選択し、方向性を見極めるキュレーター(選定者)としての力。そういったデザイナーの役割の変化を肌で感じる機会となりました。

私自身、これまでワークショップに参加者として参加する機会が限られていたことに加え、社外の方々というだけでなく、海外の参加者も交えた多様なメンバーとの共創です。「果たして無事にやり切れるのだろうか」と、開始前は非常に緊張していました。

しかし、実際のワークでは、ファシリテーターの方がユーモアを交えつつ丁寧にインプットしてくださり、ワーク内容もステップごとに無理のない進行だったため、想定していたよりもずっと楽しく取り組むことができました。

AIワークショップの会場であるSlalom社の外観
AIワークショップが行われたSlalom社へ。アメリカはとにかく広く、移動は基本的にUberを活用しました

これからのサービスデザイナーに求められる「ビジネスリーダー化」

カンファレンスの2・3日目は、世界各国の企業やデザイナーによる、サービスデザインにおける先進的な取り組みを紹介するプレゼンテーションでした。講演のテーマは幅広く様々でしたが、全体を通して「サービスデザイナーが現在立たされている岐路に、いかに向き合うか」という論点に対する、それぞれの視点が共有されました。

この論点の背景として挙げられたのは、以下二つの要因です。

一つ目は、AIに代表される近年のテクノロジーの急速な発達。指数関数的な進化を続けるAIが、ジャーニーマップやペルソナ作成をはじめ、デザイナーが伝統的に担ってきた「考え、つくる」作業を代替できるようになったことから、デザイナーの存在意義や役割の再定義が迫られています。

二つ目は、経営層のデザインに対する疑念の高まり。過去20年間で、組織内におけるデザインの地位は着実に向上しました。しかし、四半期単位で動くビジネス計画に対し、デザインが真価を発揮するにはもう少し長い時間が必要です。この時間軸のズレゆえに「明確で際立った指標」を提示できず、ビジネスにおける貢献度を可視化しづらいという課題が浮き彫りになりました。さらに、企業においてデザインには、「他のチームの仕事を促進し、増幅すること」という触媒のような価値があるものの、その影響力が単独の成果として見えにくく、埋もれてしまいがちであるとも指摘されました。

このような背景の中で、これからのサービスデザイナーに求められる役割として語られたのが、デザイナーとしての自身のアイデンティティに捉われず、組織内での信頼を獲得しながらビジネスインパクトを出す人材になること。すなわち、「デザインリーダー」から「ビジネスリーダー」への変革です。

その上で、ビジネスリーダー的サービスデザイナーとして活躍するための実践例が、AIとの関わり方・組織変革・ビジネスへの影響力拡大などの観点から紹介されました。

今回の講演を通じて、事業推進まで見据えてクライアントを支援することの重要性を、これまで以上に強く意識させられました。一方で、私がこれまで主に携わってきたビジョンデザインやブランディングといった領域における、短期的な定量指標を設定し、成果を測ることの難しさも改めて感じています。講演内でも明確な方法論が示されていたわけではなく、今後その具体的な応答策を模索する必要があります。

こうした内容を受け、私個人としては、小さなステップで日々の取り組みをアップデートし、講演で提示されたテーマへの向き合い方を模索したいと感じました。まずは、特定の部署内だけで完結するアウトプットに留まらず、他部署との連携や活用シーンまで視野を広げ、クライアントの事業推進によりインパクトを与えうるアウトプット設計を意識して取り組みたいと思います。

SDGC25の講演の様子
講演の様子。情報の密度ももちろん、聴講者が飽きずに聞けるよう随所にユーモアを織り交ぜたプレゼンテーションが印象的でした

SDGCは国内外の同士と繋がれるチャンス

DAY3の講演が終わった後は、Closing Eventとして、世界各国のデザイナーと繋がれる立食パーティーが行われました。会場に足を踏み入れると、カンファレンスの参加者だけでなく登壇者の姿もあり、立場の垣根なく、皆がフラットに会話を楽しんでいる様子が印象的でした。

また、この場で国内のデザイン仲間との新たな繋がりも生まれました。海外にいると「日本人であること」をより意識するためか、より打ち解けやすい雰囲気があったように感じました。

海外の空気を楽しみながら、最先端の情報にも触れられ、新しい仲間もできる。まさに一石三鳥のイベントでした。

来年はフランクフルトでの開催! より楽しむための事前準備

初めての海外カンファレンス参加にあたり、特に言葉の面での不安が多くありましたが、結果としては想像以上に楽しむことができました。

最後に、私が事前に準備しておいて良かったことをいくつかご紹介します。

まずは、自動翻訳アプリです。私は、ワークや講演の内容を理解するためにNottaを使用しましたが、全てアプリに頼るというより、要所で内容を確認していました。海外カンファレンスに参加してみたいものの、言語面が不安で踏み出せない方はぜひ活用してみてください。

2つ目は、自分自身の耳を英語に慣らしておくこと。講演だけでなく、街中でのちょっとした会話に耳を傾けたり、現地の方々と交流するなど、現地での楽しさが格段に増すと感じました。オンライン英会話を受講したり、英語のポッドキャストを聴くなど最近は手軽に英語に触れる方法がたくさんあります。私は、過去に弊社の福利厚生の英会話レッスンを受講した経験が大いに役立ちました(ジョニー、ありがとう)。

それでも心配だ!という方は、事前に仲間を作ってから参加されるのも良いかと思います。Service Design Network日本支部の方々が、カンファレンス前にネットワーキングの機会を設けてくださったりするので、そこで知り合いを作っておくと、情報交換やいざという時の助け合いができると思います。

この辺りの準備さえあれば、行った先では意外になんとかなるので、チャンスがある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

来年はフランクフルトで開催されるそうです。ドイツといえば、やはりビールとソーセージでしょうか。お酒が好きな方には堪らない場所だと思うので、お酒好きデザイナーの皆さん! 来年は絶好のチャンスです。私自身も、またカンファレンスに参加するチャンスを得られるよう、日々のデザイン活動に取り組んでいきたいと思います。

ビールとソーセージ

SDGC25 カンファレンス報告会

開催日程

2026年1月中旬

場所

インフォバーンKYOTO Eight

〒604-8101 京都府京都市中京区柳八幡町65 京都朝日ビル 8F

参加費

無料

詳細が決まりましたらメール配信にてお知らせいたします。
ご興味のある方はこちらから登録をお願いいたします。

執筆・撮影|Design Researcher 阿部 俊介
編集|Design Strategist 山下 佳澄

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