
企業のマーケティング・広報担当者が抱える「あるあるなお悩み」に対し、インフォバーンのメンバーが本音で答えるQ&Aシリーズ「教えて、インフォバーン」。
今回のテーマは、オウンドメディアの運営において永遠の課題ともいえる「KPI設計の考え方」です。「ビジネスへの貢献度をどう数値化すればいい?」「数字を追うほど本質からズレていく気がする……」「結局、PV(ページビュー)を目標にしてしまっていいの?」 そんな疑問について、インフォバーンでオウンドメディア戦略の設計を担う3名が、それぞれの知見や経験をもとに解決へのヒントを探ります。
【インフォバーンの総論】
- オウンドメディアのKPIは、AI検索時代において何を重視すればいい?
- これからのオウンドメディアのKPIは、会員登録やメルマガ購読などを通じて、企業と継続的につながるユーザー数、また営業支援やブランディングによるビジネス全体への貢献度を重視すべきです。単なるPV数といった「点」だけを見るのではなく、ユーザーとの関係の深さや、その後の継続的なコミュニケーションを重視した「線」の視点で設計する必要があります。
【プロデューサーの視点】関本美帆の回答
オウンドメディアの役割の再整理が必要

私はプロジェクトがスタートする際、最初のすり合わせで必ず「メディアを運営する目的」を確認するようにしています。最近は業界全体でPVが減少する傾向が見られますが、ここで注意したいのは、PVの獲得はあくまでもひとつの指標にすぎず、目的そのものではないということです。
もしPVを最優先にしてしまうと、目標達成できなかった際は広告を投入して一時的に数字を増やすような、依存性の高い施策を多用しがちです。これではメディア自体の価値向上にはあまり結びつきません。だからこそ、中長期的な視点で「何をもって成功とするか」という本質を定めることが不可欠です。
また、オウンドメディアの役割を「点」で捉えないことも重要です。メディア単独で事業成果を上げるのは難しいものです。他部署の施策も含め、現状を一度棚卸しして、連携や役割分担を明確にすること。その全体設計があって初めて、オウンドメディアが注力すべきポイントが定まります。
目的によって変わる追うべき数字の考え方
たとえば、BtoBマーケティングにおけるリードナーチャリングでは、メディアコンテンツ単体で「契約を決断する最後の一押し」になることは少ないです。そこは営業担当の腕の見せ所であることも多いのではないでしょうか。ではオウンドメディアにできることは何かというと、営業活動を後押しするための「ハブ」となること。特定のホワイトペーパーが決裁の場で役立っているなら、追うべき指標はPVではなく、「当該資料のダウンロード数」「ホワイトペーパーDLページへのクリック数」などに変わるはずです。
BtoCメディアの場合も、PVのみを追うと視野が狭まります。SNS上でのエンゲージメントがブランド理解に繋がっているなら、それも立派な成果です。自社サイトに固執せず、外部プラットフォームも含めた全体のコミュニケーション設計の中で、適切にKPIを設定する視点が欠かせません。
このように目的に合わせた指標作りが重要ですが、そこでよく議論に上がる「回遊率」についても、注意が必要です。ユーザーがサイト内を回遊するケースは、ECサイトなどを除けば、以前からそれほど多くはありません。そのため、今この数値を主要なKPIに据えるのは、実態に合わないリスクがあると感じています。
一方で、サイト内を回遊しない傾向があるということは「ユーザーが一度きりの接触で終わってしまう」ことでもあります。ここは課題として解決したいところです。複数の記事を読んでもらうことが難しい場合には、SNSやメルマガ、会員登録などを通じて、「再び訪れてもらう仕組み」をセットで設計する。この継続的な接点の確保こそが、メディア運営の鍵となります。
【toCコンテンツプランナーの視点】鈴木椋介の回答
「100万PV獲得」と「事業貢献」は似ているようで異なる

クライアント様から「まずは月間100万PVを目指したい」というご要望をいただくことは珍しくありません。もちろん、多くの人に見てもらうことは大切です。しかし、私たちはさらに一歩進んで、このようなご提案をさせていただく場合があります。
「その100万人が記事を読んで、ただ帰ってしまうだけで本当に良いのでしょうか?」
たとえば、メディア運用に年間2,000万円~3,000万円の予算をかけているケースを考えてみましょう。単純にPV数だけを増やしたいのであれば、広告を出したほうが、より安く、しかも短期間で目標を達成できる場合があります。
しかし、オウンドメディアの本当の価値は、記事を読んでもらうことだけではありません。訪れた人に「企業名を覚えてもらう」「好感を持ってもらう」、そして「将来の選択肢に入れてもらう」といった、ブランディングやLTV(顧客生涯価値)の増加への貢献こそが本質的な価値なのではないでしょうか。
ユーザーと深くつながるための仕組みを設計しKPIとすべき
KPIの設計について、私はよく「2階建てのお店」に例えて説明します。
1階は「広い間口」として、まず多くの人に知ってもらう段階です。ここでは従来の検索流入(SEO)やSNS拡散が重要です。しかし、AIによる検索体験の変化により、誰でも簡単に調べられる情報をまとめただけの記事の価値が下がっています。そのため、情報発信側としても安定した流入数を見込むのが難しくなっています。つまり、1階だけで集客し続けるのはリスクがあります。
一方、2階は「コアな常連客向けルーム」です。具体的にはここでは、会員登録、メルマガ登録、LINE公式アカウントへの誘導といった施策を重視します。これらは、企業から直接情報を届けられるプッシュ型の手段であり、Googleのアルゴリズムに左右されず、安定して顧客とつながり続けることができます。
1階(PV)での集客だけに満足するのではなく、2階(会員・ファン)にどれだけ案内できたか。この「縦に深める指標(会員化率や登録数)」こそ、これからのKPIに欠かせない要素といえるでしょう。
「良いメディア」の動線設計とは
インフォバーンが支援した事例として分かりやすいのは、JR東日本びゅうツーリズム&セールス様の『びゅうたび』です。このメディアは、記事の流入(1階)もしっかり確保しつつ、会員登録機能(2階)を持っています。さらに、その先には「旅行商品(ダイナミックレールパック)の購入」というビジネスゴールへの導線も設計されています。
流入(PV) → 会員化(ファン化) → 購買(コンバージョン)
この流れが設計できて初めて、経営層に対して「このメディアには投資する価値がある」と胸を張って言えるようになります。
【toBコンテンツプランナーの視点】佐藤草平の回答
AI最適化が目下の課題

ゼロクリック時代においては、「実際にサイトを訪問した読者」の行動がこれまで以上に重要となります。そのため、近年は記事などの読了率をより細かく確認するようにしています。一般的に読了率30%が「高い」と評価されることが多いため、担当している媒体ではこれを上回ることを目指しています。
ただし、現在はLLMOやGEOと呼ばれるAI検索への最適化が急務です。SEOと比較するとキーワードの選び方も少し異なり、ターゲットとなるユーザーがどのようなプロンプト(AIへの入力内容)を使っているかを把握する必要があります。さらに、AI検索経由で訪れるユーザーはコンバージョン率が高いことも重要なポイントです。
AI検索対応では、SEOとは異なるWebサイト設計や構築も求められます。その点からも、個々のコンテンツだけでなく、デザイナーやエンジニアなどとも密接に連携しながら、デザインやUXも含めた全体としてコンテンツマーケティングを推進していきたいですね。
「オウンドメディア」を再定義し続ける
オウンドメディアは当然、どれだけ事業に貢献したかが重要な指標になります。一方で、中長期的なコーポレートブランディングに主眼を置くと、話は変わってきます。
クライアント企業の経営層や担当外の部署が、目先の売り上げなどを超えて、いかに「オウンドメディア」の有用性を捉えてくれるか。ここが骨太なプロジェクトを推進するカギになります。そのためにも、オウンドメディアの「存在価値」を否応なく感じ取ってもらえるようなコンテンツを作っていかなければなりません。
そうした観点からだと、コクヨの『WORKSIGHT』やオカムラの『WORK MILL』などはすごく面白いですよね。自由度高くコンテンツを発信されていて、紙媒体の方も思わず手に取りたくなるような存在感があります。
その発想の先には、紙媒体だけでなくリアルなイベントを開催する、映像作品を製作するといった他のコンテンツもあるわけです。AIにとどまらない視座も忘れずに、「オウンドメディア」という言葉を再定義し続けてKPIにも向き合っていきたいですね。
まとめ:KPIはビジネス全体を見て設計すべき
今、もっともKPI設計で悩んでいるのは、 これまでPVが順調だったメディアの担当者様ではないでしょうか。 会社からの期待が高い分、前年比で数字が落ちると問題視されやすい。しかし、立ち上げ時から状況が変わり、目指すべきゴールが変化しているケースも多々あります。
オウンドメディアだけに過度な期待を寄せるのではなく、必ず他の手段と組み合わせる。当たり前のようですが、日々の業務に追われる中でこの見直しができているメディアは意外と少ないものです。
だからこそ私たちは、オウンドメディア運営の範囲のみにとらわれず、イベントやクリエイティブ制作など、幅広い選択肢の中から最適な提案を行うことを心がけています。そのため、まずは現状をフラットに見直し、「今、本当に必要な施策は何か」を一緒に整理することから始めたいと考えています。
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回答者プロフィール
関本美帆

株式会社インフォバーン コミュニケーションデザイン事業部
執行役員/プロデューサー
大学卒業後、出版社にて雑誌・カタログの編集、ECサイトの運用担当後、2006年にインフォバーン入社。自社のメディア運用を経て、コミュニケーションデザイン事業を担当。BtoC、BtoB問わず、オウンドメディアを中心とした戦略設計から運用まで手がける。
鈴木椋介

株式会社インフォバーン コミュニケーションデザイン事業部
コンテンツプランナー/ユニットマネージャー
音楽カルチャーメディアの編集を経て、食とヘルスケア領域を強みとするPR会社で戦略立案からメディア掲載獲得までを担当。編集スキルとマーケティング・PR思考を活かして、現在はインフォバーンにてプロジェクトマネージャー、コンテンツプランナー、コンテンツディレクターを務める。
ご支援実績
・ アイエスエイのブランド戦略を策定。グローバル教育の価値を再定義し、伝わるメッセージへ
・ 第一生命「ミラシル」×「アイドルマスター」!ファン熱狂のインタビュー企画でエンゲージメントを創出
・ TANTOフルリニューアル|プロモーション全体支援 / 中野製薬株式会社
佐藤草平

株式会社インフォバーン コミュニケーションデザイン事業部
コンテンツプランナー/ユニットマネージャー
新聞記者、月刊誌編集者、編集コンサルなどを経て、インフォバーンに。「書ける編集者」であることが強み。大手メーカーや外資IT、建築系コンサルなど、BtoBを中心にコンテンツマーケティングを支援。
ご支援実績
・ 三菱電機デジタル基盤「Serendie®」の価値を浸透させる。記事・動画・イベントの企画・制作を担当
・ オフィスマネージャーのためのメディア『Worker’s Resort』のコンテンツを企画・制作
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