
2025年10月、インフォバーンのコーポレートサイトをリニューアルし、無事にローンチしました。構想段階から数えると、約1年を費やしたプロジェクトでした。
私たちインフォバーンは普段、クライアントに対してWebサイト制作やオウンドメディア構築、ブランディング支援など、受託支援を行っています。
ですが、今回のプロジェクトで私は「制作会社の立場」としてではなく、インフォバーンという事業会社の「発注者」(サイトリニューアル担当者)としてプロジェクトを推進しました。
これまで多くのクライアントサイトのリニューアルを担当してきましたが、全社を巻き込んだリニューアルを自分が「発注者」として担当するのは初めてで、多くの気づきがありました。
そこで本記事では、「発注者」として約1年のプロジェクトをどう進め、どんな課題や成功のポイントに直面したかをリアルな学びとともにご紹介します。同じように自社サイトのリニューアルに悩んでいる方の参考になれば幸いです。
なぜリニューアルに踏み切ったのか?インフォバーンは何屋さん?
なぜ1年もかけてサイトをリニューアルしたのか。
それは「デザインが古い」といった見た目だけが理由ではなく、次の3つの課題に直面していたからです。
1. 新規顧客獲得の必要性
リニューアル前のWebサイトは、ビジネスの入り口としての機能を十分に果たせていませんでした。
提供できるサービス領域が広がっているにもかかわらず、サイト上での訴求が追いつかず、新規のお問い合わせ(リード)が伸び悩むという、営業上の大きな課題を抱えていました。
2. 会社の実態とWebサイトのサービス内容がズレている
ソリューションが日々進化する一方で、Webサイトの更新が停滞し、古い情報が放置されているページが散見されました。
その結果、お客様へ最新の価値を提示できないだけでなく、社内でも「今、自社が提供できる正解は何か」という認識のズレが生じる要因となっていました。
3. 「インフォバーンは何屋か?」がわからない!
上記1と2の課題が複雑に絡み合い、「結局インフォバーンは何の会社なのか?」というシンプルな疑問に答えにくい状態でした。
かつての「メディアの会社」や「コンテンツ制作の会社」といったイメージと、現在展開している多角的な事業の実態が混ざってしまい、外部の方からは「結局、何が得意な会社なのか」がわかりづらくなっていたのです。この問題は、顧客獲得に影響するだけでなく、採用候補者とのミスマッチを生み出す要因にもなり、ブランドコミュニケーション全体を妨げていました。
ちょうどそういった課題に悩まされていた時期に、インフォバーンが属するTNLメディアジーングループのNASDAQへの上場という大きな節目を迎えました。会社の“顔”であるサイトを再構築する絶好の機会だと考え、リニューアルを決めました。
リニューアルの3つのゴール
これらの課題をふまえ、「リニューアルで何を達成するのか」というゴールを定義しました。
ただし挙げた課題は、Webサイトだけで全て解決できるものではありません。そこで、サイトが担う役割に優先順位をつける必要がありました。
設定したゴールは、以下の3つです。
ゴール①:ケイパビリティとサービス価値を、魅力的かつ分かりやすく伝えるサイトへ
ゴール②:BtoBマーケティングを、より強力に推進できるサイトへ
ゴール③:社員と求職者が、インフォバーンの価値を感じ、ワクワクできるサイトへ
つまり、「現在の価値を伝える」「BtoBのマーケティング基盤として機能する」「社員・求職者にも事業の魅力を伝える」サイトを目指したのです。
あえて自社対応ではなく外部パートナーに依頼した理由
ゴールが決まり、次に考えたのは「誰が作るのか」でした。
インフォバーンにはWebディレクター、デザイナー、編集者などのスタッフが揃っており、自社でWebサイトの制作が可能です。しかし、あえて予算をかけて外部パートナーに依頼する決断をしました。
その理由は主に3つです。
① 外部からの客観的な声を取り入れるため
自社のことになると、「これも言いたい」「この表現は外せない」と自分たちの視点に偏ってしまいがちです。
実際に、強みだと思っていたことが外から見るとそうではなかったり、自分たちでは気づかない価値が埋もれていたりします。第三者の客観的な視点で、しっかり指摘や意見をもらいたいと考えました。
② 社内のしがらみを取り除くため
プロジェクト担当者なら「あるある」だと思いますが、社内の人間がプロジェクトマネージャーを務めると、どうしても「あの部署に配慮しないと」「この役員の顔が浮かぶ」といった、調整業務や忖度が発生します。
その忖度を極力なくし、ユーザー視点を最優先するためにも、社外の力が必要でした。
③ 「社内リソースの優先順位」で頓挫するリスク
インフォバーンのメンバーはみな、クライアントワークが優先です。
いくら「自社のプロジェクトも重要だ」と号令をかけても、目の前のクライアントワークの納期が迫れば、そちらを優先してしまう力学が働くことは目に見えていました(恥ずかしながら、これまでその要因で頓挫したプロジェクトをいくつも見てきました)。
だからこそ、プロジェクトをやり切るために外部の専門家のリードが必要だったのです。
プロジェクトを終えてみると、この「外部パートナーに依頼する」という判断は正解だったと思います。一番懸念していた社内調整のストレスから解放され、「その判断は本当にゴールに合っているのか?」という本質的な議論ができるようになりました。
また、パートナーの専門性や推進力は想像以上でした。課題設定や情報設計、デザイン提案など、どれをとってもクオリティに妥協がなく、普段クライアントに提供している価値を、今回は「発注者」として体感できてとても良い経験になりました。
ご協力いただいたクオートワークスさんには心から感謝しています。
リニューアルで「変えた」5つのポイント
ここからは、Webサイトを具体的にどう変えたのか、5つのポイントに絞って紹介します。
ポイント①:サービス体系の再整理
ポイント②:思想を体現する「言葉のデザイン」の徹底
ポイント③:約1,450ページに及ぶ、既存資産(コンテンツ)の再定義と情報設計
ポイント④:AI(Gemini)を活用した「20万字を超える原稿」の執筆体制
ポイント⑤:BtoBマーケティング基盤としての「HubSpot」への移行
① サービス体系の再整理
リニューアル最大の難関が、この「サービスメニューの再整理」でした。
社内の資料はたくさんありましたが、全体を俯瞰した整理ができておらずバラバラで、どうWebサイトに落とし込むか悩みました。
さらに過去のサービス体系は、会社の「事業部」ごとにサービスが紐づいていたのですが、名称や扱う顧客課題の粒度も不揃いでした。
そのため、今回のリニューアルを機に、顧客視点から再整理。「4つの事業領域・15のサービスメニュー」へとゼロから再構築を行いました。


② 思想を体現する「言葉のデザイン」
今回のサイトのデザインはクオートワークスさんにご提案をいただきました。
単にきれいな見た目にするのではなく、インフォバーンの理念や価値観を言語化していただきました。
例えば、ファーストビューの「CONTENT AS DESIGN」というキーフレーズは、サービス整理で突き詰めた核を見事に表現したものです。
また、理念として大切にしている「対話を生み、価値を創る」という思想も、サイト全体のトーン&マナーに反映されています。
今回のリニューアルは単なるサイト更新にとどまらず、リブランディングに近い体験になったと感じます。
③ 既存1,450ページの「仕分け」と情報設計
リニューアルで直面する壁の一つが、既存コンテンツの扱いです。
旧サイトには約1,450ページが残されており、すべてを精査した上で「移行する」「削除する」「リライトする」の3つに分けて仕分ける必要がありました。作業量も膨大で大きな決断が求められました。
正直、すべてを完璧に移行するのは現実的ではありません。
そこで私たちは「割り切り」を決めました。新サイトの骨格を強固にすることを最優先し、一部のコンテンツは「フェーズ2(ローンチ後)」での対応と判断。
まずは「核」となる情報の移行と設計に集中しました。この「完璧を目指さない」という割り切りが、プロジェクトを停滞させないために非常に重要でした。
④ AIを活用した20万字を超える原稿執筆
今回のリニューアルを機にサービス体系を再整理したため、そのサービスごとの原稿を新規で書き下ろす必要がありました。
最終的に数えてみると、実に20万字を超える原稿になり、書いている途中は「このまま手を抜いて短くしちゃおうか……」という悪魔のささやきが何度も聞こえてきました。ライティング担当の4名は全員クライアント案件との兼務で、とても時間が足りません。
そこで、ライティングの叩き台となる初稿は、生成AI(Gemini)に任せることにしました。Geminiに過去に作成したサービス資料を読み込ませ、今回のWebサイト用にプロンプトを用意。AIが生成した叩き台を、今度は人間の編集者がブラッシュアップする。
この作業によって、なんとか原稿を揃えることができました。正直、生成AIがなかったら途中で挫折していたかもしれません。


⑤ 全フォームに「HubSpot」フォーム導入
今回のゴールの一つとして掲げた「BtoBマーケティングを、より強力に推進できるサイトへ」という目的を実現するためには、フォームからの問い合わせや資料ダウンロードをスムーズに営業活動へ繋げることが重要でした。
そこで、すべてのフォームにはSFA(営業支援システム)として利用していた「HubSpot」を入れています。具体的には、サイト上のすべてのフォーム(お問い合わせ、資料ダウンロードなど)をHubSpotに移行・統一。
これにより、フォームから入力された顧客情報や行動履歴がシームレスに蓄積され、営業やマーケティング活動に活用できる状態を整えました。
サイトの「発注者」としてこだわった6つのポイント
最後に、このプロジェクトを発注者として推進する上で、重要だったと感じる6つのポイントを紹介します。
ポイント①:RFPを書く過程で社内の目線合わせを行う
ポイント②:社内アンケートは情報の宝庫
ポイント③:社内情報を徹底的に集める
ポイント④:ステークホルダーを巻き込む。求められていなくても報・連・相
ポイント⑤:議論すべきは「意図」
ポイント⑥:「完璧を目指さない」割り切り
① RFPを書く過程で社内の目線合わせを行う
サイト発注に必要なのが「RFP(提案依頼書)」の作成です。
本来はパートナーに良い提案をしてもらうための書類ですが、その作成過程が「社内の認識合わせ」として非常に効果的でした。
「なぜリニューアルするのか」「現状の課題は何か」「何をゴールとするのか」などを議論したことで、経営層や部署間での認識のギャップを埋めることができ、プロジェクトの立ち上げもスムーズでした。

② 社内アンケートは情報の宝庫
リニューアルのヒントは、意外と足元に眠っているものです。
私たちは全社員を対象に、単なる機能要望ではなく会社の「らしさ」や「価値」に関するアンケートを実施しました。
・これまでのインフォバーンでの仕事で、クライアントから褒められたこと、喜ばれたことはありましたか? ある方は、どのような点が褒められた(喜ばれた)と思うかを教えてください。
・クライアントの問題解決に最も貢献していると思うインフォバーンの取り組みは何ですか? 理由とともに教えてください。
・インフォバーンを人にたとえるとすると、どのような人でしょうか? 特徴をお答えいただくか、有名人や偉人などに置き換えてお答えください。
・Webサイトリニューアルプロジェクトチームに伝えたいこと・期待したいことがあれば、教えてください。
特に「人にたとえる」質問などは、社員が抱く会社のキャラクターを言語化するのに非常に役立ちました。
集まった回答には、リニューアル担当メンバーだけでは気づけなかった具体的な成功エピソードや、現場ならではの熱い想いが詰まっており、まさに情報の宝庫でした。
これらが、後のコンセプト策定やデザインの方向性を決める際の重要な「判断軸」となりました。
埋もれている自社の価値を発見するために、社内アンケートは非常にオススメの手法です。


③ 社内情報を徹底的に集める
コーポレートサイト制作には、会社情報、採用情報、各事業部のサービス内容、画像素材など多くの情報の収集・整理が不可欠です。
初期段階で会社の資料や古い事例集、企画書などをとにかく集めました。会社のオンラインストレージを色んなワードで検索し、各所へヒアリング。参考になるかどうかわからないものまで、とにかく片っ端から集めてきました。
この徹底した情報収集により、「どの情報を元に作業を進めればよいか」が明確になり、後の作業がスムーズになりました。

④ ステークホルダーを巻き込む。求められていなくても報・連・相
関係者が多いプロジェクトでは、終盤になってから、どこからともなくやってきた「偉い人」にひっくり返されるなんて事態が起こりがちです。
そこで、プロジェクトチームでは、最初のキックオフで「ステークホルダーマップ」を作り、誰に報告・相談・合意が必要かを明確にしました。進行にあわせて報告を重ね、なるべく「それ、知らなかった」を撲滅するよう心がけました。

⑤ 議論すべきは「意図」
デザインやテキストなど、アウトプットに違和感を覚えることは、プロジェクト中に必ず発生します。その時、「ここの色を変えてほしい」といった表面的な指摘に終始してはいけません。
徹底したのは、「なぜこのデザインになったのか?」というように「意図」をまず理解することです。(前提)→(デザイン意図)→(アウトプット)という流れをパートナーと確認し、もし「意図」がゴールとズレているなら、そこを議論する。
この「意図を戦わせる」姿勢が、建設的なコミュニケーションを作り、最終的なアウトプットのクオリティを高める上で非常に大切でした。
⑥ 「完璧を目指さない」割り切り
最後はマインドの話です。
私たちのように他業務と兼任するタスクフォース型のチームでは、「100点満点」を目指すのが難しいことも多いです。
「CMSの細かな表示崩れは一定ラインで妥協」「作成が間に合わない原稿はローンチ後に回す」など、優先順位をつけて、時には「やらないこと」も決める必要があります。この割り切りが、限られたリソースでプロジェクトをやりきるポイントになりました。
さいごに
1年間にわたって続いたリニューアルプロジェクトは、「発注者」として多くの新しい学びを得る機会でした。
この煩雑なプロジェクトを、圧倒的な推進力と深い知見、何より私たちの思想への深い理解で並走してくださったクオートワークス様、Re:Design様はじめパートナー企業の皆さまには心より感謝しています。
この記事が、自社Webサイトリニューアルという大きなチャレンジに向き合う方の助けとなれば幸いです。
また、約1年にわたるプロジェクトの裏側や、具体的なプロセスについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせいただいた方には、ご要望があれば「RFP(提案依頼書)」のサンプルを差し上げます。
サイトリニューアルをしたいけれど、「何から手をつければいいかわからない」「社内の調整がうまくいかない」といったお悩みから、ぜひお聞かせください。
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