プロジェクト概要
日立製作所DesignStudioは、エクスペリエンスデザインの深化と知見の共有を目的に、「伝統文化における革新の本質」を探求するリサーチを実施しました。
インフォバーンは、このリサーチの設計からご支援し、リサーチの過程と発見したエッセンスを「エクスペリエンスデザインのためのリファレンスブック」として編集・制作しました。
- 課題
- ・未来のデジタル体験や社会のトランジションをデザインするための知見を獲得したい
・Design Studioの取り組みや知見を社内外に共有し、理解を広げたい
- 成果
- ・伝統文化の担い手との対話を通じて、エクスペリエンスデザインに対する深い洞察と、新たなアプローチの姿勢を獲得
・エクスペリエンスリサーチおよびリファレンスブック・プロトタイプのアイデアシート制作を通じ、Design Studio内にチームとしての有機的なシナジーを創出
・デジタルデータでのリファレンスブックが高い評価を得たことから、冊子として300部出版し、英語版デジタルデータを制作。冊子は、日立製作所Lumada Innovation Hub Tokyo※にて社外向けに紹介
※顧客、パートナー、日立が協創し、デジタル変革を加速させるためのフラッグシップ拠点
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クライアント
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日立製作所DesignStudio
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担当領域
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デザインリサーチ設計
コンテンツ制作
クリエイティブ制作
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期間
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2024年1月〜2025年3月
伝統文化から社会のトランジションやDXのきざしを捉える。思索を重ねるような探索的なリサーチを、好奇心を駆動力に喜んでご一緒してくださったインフォバーンに感謝しています。ブックレットやプロトタイプによる対話までもデザインしていただき、多くの方々の目に触れ、インスピレーションの源泉になっています。
プロジェクト詳細
未来の価値を創造するエクスペリエンスデザインリサーチ
日立製作所DesignStudioは、デザインを起点に経営課題や社会課題の本質を捉え、新たな価値創出を推進する組織です。多様な専門性を持つメンバーが協創し、未来の社会やユーザー体験を豊かにするデザインソリューションの提供を目的としています。
Design Studioは、未来の社会における体験をデザインするために、エクスペリエンスデザインの視座をアップデートする必要があると考え、伝統文化と現代の感性が融合する新たなきざしを捉えるリサーチの実施をインフォバーンにご相談いただきました。
インフォバーンはリサーチの企画・設計から、リファレンスブック※とプロトタイプ案のアイデアシート制作まで、一貫して支援しました。
※一般的には、特定の情報を調べるために使う、一部分を読むだけで目的を達成できるよう編集された書籍。参考図書
手法と施策
本プロジェクトでインフォバーンは、リサーチの方針策定から成果物の制作まで伴走しました。以下に、具体的なプロセスを段階ごとに記述します。
1. リサーチ準備
リサーチの初期段階では、Design Studioのエクスペリエンスデザインを深化させ、視座を得ることを目的に、リサーチテーマを「京都で芽生える、伝統文化と現代の感性が融合するきざしを探る」と策定。成果物として、リサーチ内容をまとめた「エクスペリエンスデザインのためのリファレンスブック」を制作することを決定しました。
訪問先には、伝統文化を継承する担い手として、西陣織「細尾」、華道「未生流笹岡」、漆「堤淺吉漆店」を選定。訪問前にDesign Studioメンバーと共に質問事項を洗い出し、「非人間との協業視点」、「暗黙知のデジタルによる再解釈」、「ものや素材から始める実践知」など「伝統文化と現代の感性の融合」を軸とした質問案を制作しました。
制作を開始するにあたり、従来のアニュアルレポートを刷新し、読者の「共感・期待」を醸成し、リーグの成長を促すものへと転換する必要がありました。
2. リサーチ
京都での2日間のリサーチでは、伝統文化の担い手への訪問と、訪問先でのインタビューや体験を通じて得た気づきを整理するためのワークショップを実施しました。
リサーチの過程では、心が動いた瞬間の写真と、撮影時に感じた経験価値・気づき・洞察を記載した「エレメントカード」を制作しました。さらにワークショップでエレメントカードを共有し、類型化。伝統文化と現代の感性の融合から、エクスペリエンスデザインにおける新たな経験価値のエッセンスを抽出しました。

3. リファレンスブック制作
リサーチとワークショップで得られた知見は、『TRANS-EXPERIENCE』と題してリファレンスブックとしてデジタルデータ化。後に書籍化と、英語版の制作を行いました。

リファレンスブックは、リサーチのダイヤグラム・訪問先ごとの考察・編集後記などで構成されています。
ダイヤグラムは、リサーチで抽出したキーワードをもとに要素を整理し、付箋のようなビジュアルに落とし込みました。エッセンスを抽出する過程が追える設計にし、エッセンス間の共通項を記載することで、読み手がリサーチ全体を俯瞰しながら考察できる余地を残しています。

訪問先の考察は、リサーチで抽出したエッセンスをもとに構成。参加者のエレメントカードのコメントを挿入し、ライブ感のある体裁にすることで、読者に新たな視点や気づきを提供することを目指しました。

成果と展望
Design Studioは、本リサーチを通じて、伝統文化の担い手との対話から「合理性」だけでなく「美を最も重要な判断軸にすること」や「不確かさや曖昧さを許容する」という、エクスペリエンスデザインに対する新たなアプローチの視点を発見しました。
リサーチで得られた知見をもとに、リファレンスブック『TRANS-EXPERIENCE』を制作し、プロジェクトから展開してプロトタイプのアイデアシートの制作にも取り組んでいます。
リファレンスブックは現在、日立製作所Lumada Innovation Hub Tokyoにて社外向けに紹介されるなど、Design Studioのユニークな活動と価値を伝える重要な役割を果たしています。

制作体制
デザインディレクター|辻村和正
デザインリサーチャー|林佑樹
コンテンツディレクター|平岡さつき
パートナー
デザインリサーチャー|石河泰治朗
アートディレクター|軸屋亮太
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